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デザインは説明ありき。デザイナーが説明を求められる理由とは

デザイナーには説明する責任があります。

「大事」ではなく「責任」という言葉をあえて使っています。「あったほうがいい」ではなく「なくてはいけないもの」というメッセージを伝えたいからです。

経験のあるデザイナーなら、もう知っているし、当たり前って思っているかもしれません。

でももしあなたが、「このデザインを説明して」と言われて困ったり、何となく説明しなくちゃいけないって思うけど、いまいちピンときていないとしたら、読んでよかったと思ってもらえると思います!

何を隠そう駆け出しの頃の私自身が、「デザインは見た目のかっこよさが大事だから、説明なんてなくていいのでは?」と思っていました。うまく説明できなくてよく叱られてましたので、上司やディレクターに説明を求められるのが嫌いでしたし、また説明しろって言われるんじゃないかとびくびくしてました。

しかし、デザイナーとして仕事を続けているうちに、なんとなく説明することって重要なことかも?と思うようになりました。

これに気が付き、少しずつ意識し始めて。そして「なぜ説明が必要か」が自分の中で完全に腹落ちした瞬間から、仕事の質がグンと向上したように感じました。

具体的にいうと

・クライアントが求めるものに対する提出物の精度があがり、指名をされるようになった。
・デザイン制作のスピードが格段に速くなった。
・関わる人とのコミュニケーションが円滑になった。

など、明らからにデザイナーとして「オレ、成長したなぁ」と自分で思ってしまうくらいです。

こんなに変われるほど重要なことって?

今回はデザイナーはなぜ説明責任があるかをお伝えするとともに、私の経験から理解すると仕事にどう役立つのかをお話してみたいと思います!

まずはデザインの概念から

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デザインには目的があります。
とくに商業デザインには、課題解決という明確な目的があります。

すべてが「自由」のアート作品をつくるアーティストとは違い、デザイナーはこの目的をどう達成するか、課題をどのように解決するか、それらをデザインでどう表現するかを考えなくてはいけません。

この「考える」部分が「制作意図」と呼ばれるもので、本テーマで重要と言っている「デザインの説明」の内容になります。

つまり

「デザインの説明」がないということは、「制作意図」がないということ。「制作意図」がないというのは、「目的とか課題解決とかは全然考えていません」と高らかに宣言してしまっているようなものなのです。

意図がないデザインは、デザインにあらず。

仕事になっていないと言ってもいいくらい。要件を満たしていないとかそういうレベルではない話なのです。

ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、わかりやすくいうと。

「カレーを作って」と言われているのに、「カレーのルゥないから、入れませんでした」って言ってるようなもの。それはもう絶対にカレーじゃない、肉と野菜を水で煮た「何か」です。あなたがカレーを頼んだ人だとして、そのただの「具の水煮」が、『はい、カレーできました!』って出てきたらどう思いますか?

「ルゥはどうしたんだ!?」と叫びたくなりませんか?

そのくらいデザインに「制作意図」は必要なもの、なくてはならないものなのです。イメージできましたでしょうか。

どのように説明したらいいか

目的達成のための意図を持って制作していたら、それほど悩むことはないはずです。作る際に考えた「意図」をそのまま伝えるだけでいいからです。

逆にいえば、意図があるからデザインができる。デザインができたら意図を説明する。これが一番スマートな制作フローだと思います。

大事なのは意図を持って制作するというプロセスそのもの

そして、説明を一番求めている人に対して説明できるかを考えられると、尚よいです!その人を納得させることができればある意味、依頼に対する仕事の完了を意味するからです。この人物とは誰でしょうか、

それは発注者です。

発注者から提示される要件を満たしているか、これに集中して意図を考えていくことが精度の高いデザインを作るコツです。

デザイン要素を一つ一つ考えるとき、要件に対して「後出しジャンケンで勝っていく」ようなイメージで決めていきます。

・子供向け→ポップな感じ・イラストを入れる
・一流のサービス→高級感・洗練された感じ
・高齢者向け→落ち着いた雰囲気、わかりやすさ重視

ここでできあがった理論は、発注者の要望を叶えられる「制作意図」になります。この意図を元にして出来上がったデザインが「発注者の要望通りのデザイン」となるわけです。

とはいえ

デザインは伝わり方が人それぞれだし、正解もありません。そもそも本当に効果があるかないかは世間に出してみないとわからないのは事実です。

ですが、それを大前提とした上で、発注者はデザイナーの経験や知識で、課題解決に最適な案を提案してくれることを求めているのです。

説明責任について、腹落ちしたあとの私

発注者の要件に対して、後出しジャンケンでデザインを組んでいくということができるようになりました。

デザインの方向性や、色やあしらい、トンマナを合わせる、一つ一つ目的達成を軸に決めていく。このように考えていくと自然と情報が整理されて、ごちゃごちゃと悩むことがなくなりました。そして悩むことがなくなった分、作業が格段に速くなりました。周りからも「あなたは仕事が速くて助かる」「もうできたんですか?」と言われるようになりました。

一番重要な課題解決が常に頭にあるので、クライアントや上司と話をしていても、認識違いが起こらず、コミュニケーションが円滑になりました。コミュニケーションがスムーズだと自分も心地いいですが、相手にとっても心地いいものです。この人はわかってくれているという感覚が信頼関係に繋がっていくんだろうなと感じました。

「意図」が明確なことで、もう一ついいことがあります。

フィードバックされるときにも、方向性が間違っているのか、意図とデザインがあっていないのか、好みの問題なのか等、どこがエラーになっているかがわかりやすいということです。修正内容も具体的になり、修正を繰り返すたびにクオリティが上がっていく、デザイン制作にとっては非常に良い循環が生まれやすいと感じています。

逆にクライアントからの「何か違うんだよなぁ」という、一番辛い脱出できない迷路のような戻しも、それからはほとんどなくなった気がしました。


まとめ

・デザインには目的があり、デザイナーはその目的を達成するためにどんな表現がいいか考えなくてはいけない。説明がないのは、制作意図が無いと同じ。なので説明責任がある。
・制作意図は発注者の要件に対して、後出しジャンケンするイメージで考えていく。
・制作意図で要件を満たせれば、デザインの精度も高くなる。意図をはじめに考えることで、作業中の迷いがなくなり作業が速くなったり、関係者とのコミュニケーションが円滑になったりと信頼されやすくなる。


長文読んでいただき、ありがとうございました!

今までで一番時間がかかった記事になりました。自分にとってすごく大事なことを、大事なこととして誰かに伝えるって難しいいですね。

読んで何か一つでも読んでよかったと思うポイントがあったらなら、こんなに嬉しいことはないです!また書きますので、引き続きよろしくお願いいたします。


この記事を書きながら、昔を思い出しました。

上司は決して私へ嫌がらせするために、繰り返し説明するように言っていた訳ではなかったんだなぁと。私が何度も懲りもせずにルゥなしのカレーを出していたので「ルゥはどうしたんだ?」と、諦めずに何度も聞いてくれていたんだなと。。感謝。


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