世界平均の生活(エネルギー、食糧)

豊かな国である日本は、当然ながら石油や天然ガスを大量に消費している。省エネを進めるには、せめて世界平均くらいまでエネルギー消費を落としたい。では、どのくらい消費しているか。日本人は、1人当たり年間で1.6トンの石油。世界平均は0.5トンだから、世界平均の3倍エネルギーを消費している。

天然ガスは世界平均の2倍消費している。だから、日本人が世界平均のエネルギー消費になろうとしたら、石油消費を3分の1、天然ガス消費を半分にする必要がある。それを実行しようとしたら、かなり厳しいことが分かる。

日本は非常に豊かな食生活を送っている。他方、アフリカなどでは満足に食事をとれない人たちもいる。では、世界的に食料は足りないのだろうか?
世界の穀物生産量を調べると、年間8.99×10^15 kcalとなる。これは、世界中の人々に公平に毎日一人当たり3697kcalの穀物を配れる計算。

成人男性は1人当たり2500kcal食べれば十分と言われる。それよりも1200kcal近くあるのだから、穀物は、世界中の人々が腹いっぱい食べても余るほどあると言える。しかし現実には、十分に食べることができていない飢餓線上の人は8億人いると言われている。なぜこんなことが起きるのだろう?

それは、日本のような先進国の人間が穀物を大量に消費しているからだ。日本人の穀物消費量は、毎日1人当たり5400kcalにもなる。世界平均の1.5倍。成人男性に十分なカロリーとされる2500kcalの倍以上も消費している。ご飯で言うと24杯分。とても食べきれる量ではない。

もちろん、日本人はそんなに穀物を直接は食べていない。なのにどうしてそんなに穀物を消費しているのだろう?それは、肉を食べているから。牛肉1kgを育てるのに穀物11kg、豚だと7kg、鶏だと4kg必要とされる。肉を食べると、大量の穀物を消費することになる。

日本人も世界に迷惑をかけないよう、世界平均の食生活にしたとしよう。世界平均でも、穀物だけならご飯16杯分を毎日食べられる。しかし肉のようなおかずは一切なし。もし鶏肉200g(焼き鳥3本分)を毎日つけると、ご飯4杯分を毎日食べられる。豚肉154gの生姜焼きを食べたら、その日ご飯はなし。

牛肉97g(ミートボール7.5個分)を食べた場合は、やはりその日はご飯は一切なし。それだけが1日の食事。これが世界平均メニュー。もしこうした食生活をすれば、日本人は世界平均の穀物消費になる。

もし、日本人が現在の穀物消費量(毎日一人当たり5400kcal)を続けるなら、世界のどこかの、6千万人分の「穀物消費権」を奪っていることになる。つまり、日本人のせいで、6000万人が餓死しても不思議ではない計算。

日本は、豊かであることで、それだけ大量の穀物を消費している。しかしこの豊かさは持続可能なのだろうか?そんな大量の穀物を生産できるのは、石油などの化石燃料がたくさんあり、化学肥料を大量に使うことができ、トラクターなどの動力を動かせるからだ。しかし。

石油や天然ガスが思うように採れなくなってきている。EROIという指標がある。採掘に要したエネルギーの何倍、エネルギーが得られるか、という数字。昔の油田では、噴水のように自発的に吹き出していたので、EROIは200もあったという。1kcalの労働をすれば200kcalの石油が得られた計算。

しかし、シェールガスやシェールオイルは、EROIが7から10程度。こんなに効率の悪いエネルギーが採算合うようになったということは、サウジアラビアなどでの産油国でも、EROIが同様に悪化していることが推測できる。

なお、EROIが3.3以下になると、エネルギーとしては意味がなくなる。石油はそのままではエネルギーとして使えず、蒸留してガソリンや軽油などに分離する必要があり、そのためのエネルギー消費を考えると、EROIが3.3ないとエネルギー的に黒字にならないためだ。

カナダのオイルサンドは、EROIが4を切っており、エネルギーとしての魅力がほぼない。これが採算とれるようになったときは、もはやエネルギーとして石油が用をなさなくなってきているとき。そして、量も採れなくなっていることを意味する。

石油や天然ガスが採りづらくなっていく中で、果たしてこれまで通り大量の穀物を生産し続けることができるのか。代替策をできるだけ早く準備しなければならない。そのための時間は、あまり残されていないと考えるべきだろう。

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