電子版「世界をアップデートする方法」発刊

お待たせしました!最新刊「世界をアップデートする方法 哲学・思想の学び方」の電子版が出ます!明日からのはずですが、アマゾンのキンドル版はもう表示されているようです。
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哲学や思想と聞いたら毛嫌いしてきた人にぜひお読みいただきたいです。もちろん、これまでも学んできた、という人にとっても、それぞれの哲学思想が現代に生きる我々にどんな影響を及ぼしたのかを描き出しているので、参考にしていただけると思います。

この本は、ツイッターでつぶやいた「哲学・思想の学び方」がきっかけになっています。この文章は当時、若手官僚が主宰していた官民協働メーリングリストCrossover21にも投稿し、そこでも話題になりました。
https://togetter.com/li/396497

哲学や思想にまるで興味が持てない人が多い。小難しい理屈を聞いても何を言っているのか分からないし、そもそも何の役に立つのかも分からない。だが、歴史に名を残す哲学者や思想家は、当時の常識、固定観念を破..

そのCrossover21のイベントで、同席した現役東大生から感謝されました。「これまでも一応哲学や思想の本は読んでいたけれど、読んどかなきゃ恥ずかしいというくらいの動機でしか読んでおらず、なぜこんなのを学ばなきゃいけないのかと思っていた。篠原さんの文章で初めて腹落ちした」と。

哲学・思想を、「教養」として読んどかなきゃね、という意識で読んではいても、それが何の役に立つかわからない、せいぜい「自分は読んでいるよ」という自慢というか自己防衛的な理由でしか読めていなかった、とその現役東大生は打ち明けてくれました。東大生でそれなら、これは本にする価値あるかも。

私が子どもの頃、大人たちが「○○はこう言った」などと、哲学者や思想家の名前と言葉を紹介して学のあるところを自慢している様子を見ていました。正直、知識をひけらかしているところが「いやらしい」と感じることが多かったです。哲学・思想は、いやらしい飾りになりかけていた面があります。

また他方、哲学・思想について、「役に立つとか考えちゃダメ」と考える人も少なくありません。哲学・思想は利害とかを超越した高尚なものなのだから、役立つかどうかなんていう価値判断で考えちゃダメなものなのだ、という人に、つい最近でも出会ったことがあります。

でもそれでは、「ラピュタ人」になってしまうのではないでしょうか。ガリバー旅行記で出てくるラピュタ人は、みんな高度なことを考える哲学者なのですけど、あまりに高尚なことばかり考えているので、おつきの人に目を開けてもらわないと「天空の城」から落下して死んでしまったり。

哲学・思想はこの世と関わりのないことを考えるものではなく、まさにこの世界のありとあらゆることを知ろうとする学問なのだと思います。哲学は「フィロソフィー(知を愛する)」ということなのですから、この世に関心がないのでれば、それはすでに哲学ではないようにも思います。

私の考えでは、哲学・思想は、その時代の常識を打ち破り、新たな常識を創造してきたもの。私はそう捉えています。今も語り継がれる哲学者や思想家は、常識をアップデートしてきたからこそ重要視されているのだと思います。だからこそ、哲学・思想は重要なのだと考えています。

物事を突き詰めて考える哲学や思想は、今のままの常識だと社会が、世界が行き詰まってしまうとき、新たな常識を創り出すのに重要な働きをします。それこそが、哲学や思想の出番なのではないでしょうか。今の哲学者は、象牙の塔にこもり過ぎの印象を受けます。

哲学・思想とは、社会を動かすOSをデザインする仕事、と言ってよいでしょう。パソコンでもスマホでも、プログラムやアプリはOSの上で動きます。いろんなアプリを問題なく動かせるのは、OSが優れているからです。しかし現代社会のOSは、本当に今のままでよいのでしょうか。

日本の食料は「石油でできている」といって過言ではありません。おコメ1kcalを作るのに2.6kcalの石油を燃やしている。こんなやり方を、未来永劫続けることはできません。日本に限らず、世界の食料生産は、石油などの化石燃料に頼り切っています。

厄介なことに、石油が採れづらくなっています。昔は1kcalの労力をかければ、200kcalの石油が採れました。エネルギーの効率は200倍。しかしシェールオイルのように、地層から絞り出すようにして採掘する石油は、効率が10倍を切り始めています。

採掘時のエネルギー効率が3倍を切ると、石油はエネルギーとしての意味をなさなくなります。ガソリンなどに加工するエネルギーも必要だからです。世界の油田は、この「3倍」の数字に近づいています。やがて、石油はエネルギーとして使用できない時代が来るでしょう。なのに。

いまだに、自動車や飛行機、船などの輸送手段は、ほぼ99%石油で動いています。天然ガスでも石炭でもなく、石油で。石油がエネルギーとして採れなくなった時、果たして私たちは自動車を乗り回し、飛行機で海外に行き、船で魚を取ることができるのでしょうか?

石油に代わる優秀なエネルギーはまだ開発できていません。電気自動車が普及しつつありますが、莫大な電力が必要で、ドライヤーを24時間つけっぱなしの電力で30~40kmを走れる程度。電気で自動車を動かすのは大変。飛行機や船は、大型だと電気で動かすメドが立っていません。

石油という、極めて優れていたエネルギーをふんだんに使えることで私たちの社会は成り立っています。石油が社会のOSでした。ありとあらゆることがそのOSの上で動いています。しかし、そう遠くない未来で、このOSは機能停止することが予想されます。私たちは新しいOSに乗り換える必要があります。

そのOSをどうデザインするのか?が、現代に生きる私たちに課された使命です。これまで膨張一本やりだった人類が、縮小するという全く新しい課題に挑戦することになります。私たちは、新しい時代のためのOSを構築する必要に迫られています。

過去にない、まったく新しい試みが求められているわけですが、だからといって過去が参考にならないわけではありません。当時の哲学者や思想家も、未来が全く読めない中で新しいOSをデザインしてきました。どうやって、まだ見ぬ未来のためにOSをデザインできたのか。その姿勢が参考になります。

拙著は、多くの人に「新しいOSをデザインする」という重要な作業に参加して頂くために書きました。専門家に任せず、自分たち自身でも考え、気づきを口に出してみる。それが社会全体にさざ波のように伝わると、社会全体を変えるきっかけになるかもしれません。

「未来のためのOSデザイン」の作法を学ぶために、冒頭の本を書きました。どうか、多くの人にこの作業に参画して頂きたいです。私たちに残されている時間は、そう長いものではないようですから。

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