新著に込めた思い、背景

私の新著を読んだらしい方から、友達申請が来た。「自分も生き残る3000万人の中に入りたい」というメッセージ付きで。私の本を読んでその感想になるというのが意外だったが、これは一考に値すると思ったので、ちょっと言語化してみる。

新著では、もし海外からエネルギーや食糧の輸入を一切止めれば、日本の国土は3000万人分が持続可能な食糧生産量だろう、と述べた。しかし、もし急にそんな事態になり、それが何年も続くようなら、3000万人どころか1000万人も生きられるか、疑わしい。自分だけが生き残ろうとすれば争いになるからだ。

私は、日本に住むすべての人たちを生かそうとすることで初めて、日本に住む人を養うことができる、と考えている。身勝手な考え方をする人が増えれば、そうした考え方をする人から、まず排斥されてしまうだろう。何としても多くの人を救おう、と心に決める人だけが生き残れると考えている。

日本に全くエネルギー(石油、天然ガス、石炭、その他)が手に入らない場合、3000万人分の食料を作るのに日本の国土は精一杯だろうが、もしエネルギーを確保できるなら、それで化学肥料を作り、トラクターを動かすことができるので、もっとたくさんの食料を作ることができる。

また、海外から食料を輸入することができれば、全国民を養うことが可能。それを実現するためには、エネルギーと食料を輸入できるだけの経済力を、日本が持つ必要がある。そのためには、海外の人々にとって魅力的な商品をできるだけ数多く作り出すことが大切になる。

国内の農業は農業で、できるかぎりたくさんの食料を、省エネルギーで生産できるようにし、非農業が海外から稼がねばならない負担をなるべく軽減する必要がある。農業は食糧を作り、非農業は海外から食料とエネルギーを輸入するために海外から稼ぐ。こうした協業が大切。

だから、農業は国民になるべくたくさんの食料を提供する使命を帯び、非農業は不足する食料とエネルギーを輸入するための資金作り、つまり海外との貿易などでなるべく稼ぐ使命を帯びることになる。こうしたことは、全国民的にそれぞれが努力する必要がある。

日本はこれからますます少子化が進む。海外との貿易で稼ぐには、若手をある程度非農業分野に配分し、なるべく海外とのやり取りで努力してもらう必要がある。他方、農業も高齢化し、若手に頑張ってもらう必要がある。しかし若者は少ない。人的資源に限りがある。

だから、高齢者も、動ける間は動いて、若者たちの負担をなるべく軽減する必要がある。健康をできる範囲で維持し、できることをやってみる。そうすることで、若者が活躍する場をなるべく広げるように協力する。世代を超えた協力体制も重要。

分断なんかやっている暇はない。各自ができることを「分担」し、自分の持ち場で精一杯のことをする。ただし、疲れ切らないように。体の健康、心の健康を維持できるよう、休むことも大切。リフレッシュするため、遊ぶことも大切。

人間は、5つのことを心掛ける必要があるように思う。1つは、働くこと。2つ目は、休むこと。3番目は、遊ぶこと。4番目は、人と付き合うこと。5番目は、いたわり合うこと。

人間は、誰かの役に立ちたい、それによって、自分はこの世に生きていていいんだ、と自分を肯定したい生き物。だから働く。働くにしても、誰かのお役に立っている、という実感を得たい。そうした職場になるよう、人の上に立つ人は配慮することが重要。

人間は働くばかりでは疲れてしまう。だから休む必要がある。休みなく働けば潰れてしまう。だから、どれだけ忙しくても、休むことをこじ開けなければならない。休もうとしない人には、周囲が休ませるように手配する必要がある。休むことはとても重要で、必須なこと。

そして、遊ぶことは心の健康を保つためにとても大切。笑顔で働き、笑顔で人と接し、楽しむことができるようにするには、遊ぶことがとても重要。遊んでいない人がいれば、その人が遊べるように、周囲が配慮することがとても大切。

また、人は孤独だと非常につらい。あまり干渉されすぎるのもつらいが、完全無視は絶望に変わる。ほどよく距離を保ちつつも、孤独を感じずに済む心地よい関係性を、誰もが持てるような社会を目指す必要がある。

そして、そうしたことを実現するためには、互いにいたわり合うこと、極力、リスペクト(敬意)を失わないこと。「ねばならない」「べきだ」で覆われると、人間は窒息する。「頑張りすぎないで、無理をしないで」といたわりあえる関係性を大切にしたい。

こうした5つの要素を大切にしたうえで、できる範囲で、笑顔で、楽しみながら、面白がりながら、それぞれの人が、いたわり合いながら、できることを考え、試してみる、試行錯誤を繰り返して、打開策を見出す。そんな日本社会であってほしい、と願っている。

私には理想郷というのがよくわからない。人間というのは、そんなに立派な生き物ではないから、理想郷だと息が詰まってしまうのではないか、と思う。けれど、人間という生き物の限界、欠点、そうしたものも愛おしみ、「ま、やれる範囲でやろうや、楽しみながら」でよいのではないだろうか。

そうした社会は、結構幸せで楽しい社会になるように思う。もしそんな社会を実現できたら、日本はどんな南極でも笑顔で乗り切れるように思う。いや、日本だけでなく、世界も。人間というのは、そういう生き物なのではないか、と思う。あくまで私の仮説にすぎないが。

未来に生きる子どもたちが、できるだけ住みよい社会でありますように。未来は、私たちが生きた社会と違って、エネルギーは乏しく、資源も貧しく、地球環境の悪化はなかなか止まらず、食料も思うようには作れない時代になるかもしれない。しかし。

そんな社会の中でも、いたわり合い、励まし合い、時には一緒に笑いさざめき、できる範囲で働き、疲れれば休む。それさえできたら、私は大概の難局は克服できるのではないか、と考えている。甘いかもしれない。しかし、そんな社会は、工夫も素晴らしいものが現れるだろう。

できるだけ多くの人が笑顔でいられる社会を。そんな願いをこめて、新著を書いた。一人一人は無力に見える。でも、あなたがほんの少し笑顔で動けば、社会はさざ波を受けたように全体に波及する。あなたは決して無力ではない。あなたも世界を構成する、大切な一員。

私一人では大したことは何もできない。でももし、同じように考え、動いてみようという人が増えれば、世界は少しずつ変わる。どうかみなさん、自分が人間であることを許し、周囲も人間であることを許し、互いに人間であることを楽しまれますように。そこがスタートになるように思う。


追記

日本に住む人々を、そして可能であれば世界に生きる人々を飢えさせないためには?そのことを必死に考えてみました。理解しやすいよう、日本を事例として。

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