「頑張る」よりも「笑顔でいられる余裕の確保」

育児中のお母さん方、みなさんとても頑張っていらっしゃる。子育ても家事も手を抜かないで頑張ろうとしている方がほとんど。ネグレクト(無視)になってしまっている場合も、頑張りすぎて燃え尽きたケースが多いように思う。特に、授乳期の睡眠欠乏は我慢できるものではなく、燃え尽きやすい。
赤ちゃんが生まれると、3時間ごとの授乳が求められる。私も産前教室で聞かされていたけれど、当時、睡眠欠乏のことは聞かされていなかった。私もYouMeさんも睡眠大好き。なのに睡眠がとれない。ミルクの準備だ、ゲップだオムツだなんてやっていると、1時間もなかなかまともにとれない。
もし眠っている間に赤ちゃんの息が止まっていたらどうしよう?と思うと、おちおち寝ていられない。赤ちゃんが起きていたら起きていたで早く寝てくれよ、と思うし、寝たら寝たで「息してる?」と、寝息を何度も確認せずにいられない。その結果、極端な睡眠欠乏に陥る。「欠如」と言ってよいくらい。
眠れないと、人間は疲労困憊する。授乳期に何の助けもなしにワンオペで家事もやれ、なんて、拷問よりきつい。拷問の中でも、もっとも耐え難いと言われるのが眠らせないことと言われる。授乳期のワンオペは、最高級の拷問の刑に処しているようなもの。この時期、どうしても助けが必要。
離婚の原因が、この授乳期での夫からの言葉であることが多い様子。「1日寝てばかりで、家事くらいしろよ」。無理。最高級の拷問を受けている最中に、家事をしろなんていうの、無理中の無理無理。しかしこの手の発言をしてしまう男性は多く、生涯許せない恨みを買うことが多い。
それでも少なからずの女性が、それでも頑張ろうとしてしまう。よき母であり、よき妻であろうとする。しかし不眠という拷問を受けている最中にそれは無理。女性が出産を境に疾患を抱えることが少なくないのは、この授乳期の不眠にかなりの原因があるのでは、と私は仮説を持っている。
赤ちゃんが生まれ、育児がスタートするとき、努力の方向をそれまでとは全く逆転させる必要がある。「頑張ってはいけない」ということ、「笑顔を失ってはいけない」ということ。笑顔を失わないために、いかに頑張らないか。頑張らずに済ませるために、どれだけ人の力を借りるか。手を抜くか。
子どもが生まれる前は、努力する方向は、頑張ること、無理をしてでもやり切ること、手を抜かないこと。しかし、子どもが生まれて以降の努力の方向は、「笑顔でいられる余裕を確保すること」が最優先。それを確保するために、抜ける手は全部抜く。そうした努力に変える必要がある。
料理は手作りにこだわらなくてよい。手抜き料理でも構わないし、レトルトでも結構。お総菜を買ってきてもよい。栄養のバランスだけ取れたら十分。
掃除も、体がつらいなら無理をしない。少々散らかっていてもその状況を容認する。自分を許す。
江戸時代末期の「柏崎日記」には、武士の夫婦に子どもが生まれた様子が描かれている。役所に出る前に掃除と食事の用意をする夫。妻は授乳だけでグッタリ、動けない。家事はすべて夫がやっている様子が描かれている。授乳期には母親に「水に触れさせない」ことを、男性も守っていた。
現代は洗濯機や食器洗い機、ロボット掃除機など便利な道具はあるが、そうはいっても家事はなかなかゼロにはならない。手を抜くと言っても限界がある。授乳による不眠でグッタリしている母親のために、パートナーである夫や家族が手助けすることが必要。
また、体質にもよるけれど、完全母乳へのこだわりを捨てるのも一つ。授乳をすべて母親が担当することになると、なかなか睡眠の確保が難しい。たとえ授乳しかしないことにしても、眠れないからきつい。ミルク併用にすることで、授乳を男性が肩代わりし、少しでも睡眠を確保したい。
「私が頑張って育児も家事もこなせばよいのに、それができない、私はなんてダメなんだ」と自分を責めている母親は大変多い。でも、そもそもそれは自分への要求水準が高すぎ。無理。眠らないで動けるものではない。改善を図っても睡眠は不十分なのだから、抜ける手は全部抜く必要がある。
そして、自分を許すこと、自分に優しくすること。赤ちゃんに接するときに大切なのは、母親の笑顔。母親が笑顔でいられる環境が整わなければ、それもかなわない。だから、パートナーである父親の理解と行動も大切。また、親だけでなく、親戚やご近所、行政の力を借りることも大切。
人間が笑顔でいられるには、睡眠が必要。休養も必要。そして、気晴らしも必要。それらがなければ、人は簡単に笑顔を失ってしまう。「自分はやるべきことをやっていない、そんな人間が休んでよいはずがない」と自分を責める母親が多いけれど、努力の方向を逆転させる。笑顔!頑張りよりも笑顔!
笑顔は疲労のバロメーター。笑顔を失うとき、人は何かで無理をしている。無理はしちゃいけない。無理が生じているなら、頑張っちゃいけない。頑張る代わりに手を抜き、手を抜く代わりに、知恵を使う必要がある。しかし知恵は余裕がないと動かない。だから、余裕を確保する必要がある。
一人で抱え込まない、一人で頑張ってしまわない。笑顔をバロメーターにして、余裕を確保する。こじ開ける。余裕と笑顔を最優先にして、頑張ることは二の次にする。笑顔で育児することこそが大切。いかに育児で笑顔でいられるか、が、とても大切。
これまでの社会、慣習は、母親一人にすべてを背負わせようとしてきた。それがあたかも常識であるかのように語られてきたことで、母親たちは苦しめられてきた。でも、その常識は非常識。人間が耐えられる条件を超えている。そんな常識、ポポイのポイ。いらん。捨てちゃえ!
母親が笑顔で育児できる環境を、夫が、親類が、ご近所が、行政が、赤の他人の第三者が、どうやって提供できるか。それをもう一度、しっかり考え、改善を図っていく必要があるように思う。

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