子ども食堂で子どもにしかコメを食べさせたらアカン問題

辻由起子さんから、政府備蓄米を子ども食堂で振る舞おうとしたら「18歳以下の子供にしか食べさせたらアカン」と農水省からクギをさされたという。しかし幼い子どもが親同伴なしに食べに来るのは難しいし、親がその場で食べないのも不自然。実態に合わない。 https://www.yomiuri.co.jp/national/20240830-OYT1T50179/?fbclid=IwY2xjawFCfDFleHRuA2FlbQIxMQABHWvfp5N8-dWJaK3qCr10J5CJkzHzF-XpBr4uFmjCCSrN6vQ2RfNebnXv-Q_aem_FvtlhLGxhS6E6XCzXwhEiw

そもそも、コロナ禍で仕事を失い、蓄えを使い果たし、社会福祉協議会から借金して急場をしのいだものの返済が始まり、親御さん自身が食うや食わずのシングルマザーが少なくないと聞く。なのにそんな母親に食べさせることも許されないというのは、実態に合わない。なぜ農水省はそんなに頑ななのか?

恐らく、大人にも振る舞ってよい、などと言質を与えてしまうと、「子どもだから政府備蓄米を特別に支給する」というルールに風穴があいて、その風穴を利用して利益をむさぼる人間が現れるのを警戒しているのだろう。公務員は良くも悪くもルールを体現しなければならない存在。わからなくはない。

しかし、子どもにしか食べさせない、というのは、子ども食堂のどうにも実態に合わない。大人に食べさせるご飯だけ別の炊飯器で炊く、なんてことは現場の運用上ムリ。かといって頑なに子どもにしか食べさせない、というのでは、そもそも子ども食堂に幼い子どもが来なくなる。それでは意味がない。

そこで私からの試案なのだけれど、「食育を目的として、子ども+親(保護者)1人同伴で食事することを容認する」という付帯条項をつけるのはどうだろう。幼い子どもが親の同伴なしに子ども食堂に行くことは難しい。また、食事を子ども一人で行うのも、幼い子には無理がある。

そこで、「食育を目的として、子ども+親(保護者)1人同伴で食事することを容認する」という付帯条項をつける。支給するコメの量は、「食べ盛りなのだから」という理由で、子ども一人当たり支給する量を多めにする。こうすることで、子ども食堂での親同伴の食事を可能にしてはどうだろう。

ほんのちょっとの国語の問題なんだけれど、子どもを親の付帯物のような文章を書くと、「コメは子どもに支給する」という大目的と、大人は矛盾した存在に見えてしまう。農水省が警戒するのも、そうした矛盾した存在を容認することで風穴があき、ルールの底が抜けることなのだろう。

だから、逆に大人を子どもの付帯物として記述する。「子ども1人につき+親(保護者)1人を容認」というように、子どもを主、親を従として記載する。こうすると、「コメは子どもに」という大目的とも矛盾せず、ルールに一定の縛りを設けられ、ルールに風穴があくことも防止できる。

子ども食堂の実態を考えれば、「18歳以下の子ども以外にコメを支給してはいけない」というルールはまったく不適合。しかし、農水省の公務員がルールに風穴があくのを恐れているのも分かる。そこで落としどころとして、あくまで子どもを主役として「子ども+親(保護者)1人」を容認するのはいかが。

この件に関しては、政治家も頑張って動いているらしい。農水省の官僚も、どうやらかなり頭を悩ましているらしい。こういう場合、だいたい「国語の問題」で解決することが多い。現場にも適合し、ルールの番人である公務員も従いやすいルールの明文化が重要。政治家の方、少し頑張ってほしい。

前にも紹介したけど、私の体験を少し。阪神大震災の時、避難所に神戸市職員が一人配属になった。その人がまあ、ボランティア相手にもめる、もめる。私が行くと、公務員とボランティアたちが口論していた。「何ケンカしてんの?」と訊くと、

「インスタント麺の味噌ラーメンと塩ラーメンを合算すれば被災者全員に配れるから配ろう、とボランティアは言っているのに、あの公務員は「味噌ラーメンがいい市民に塩ラーメンが渡されたらもめる、味噌も塩も全員に公平に配れないなら配ってはダメ」と言ってきかない」と言って憤慨していた。

私に任せてほしい、と言って、その公務員の方と話すことに。「お勤めご苦労様です。ところで、問題のラーメン、どこから来たのかご存じですか?」と訊くと、神戸市から支給されたものだ、という答え。私は首を振り、「いいえ、インスタント麺はすべて私たちボランティアがかき集めたものです」。

「毎日支給されるお弁当(おにぎり2個、菓子パン1個、牛乳パック1個)だけが神戸市から支給されていますが、そのほかの物資はすべてボランティアがかき集めてきたものです。私たちが集めてきたものですから、どう配るかも私たちに任せてください。それとは別に、お願いがあります」

「今申し上げたように、神戸市からはろくに支給がありません。インスタント麺も配ってしまえばなくなり、次をかき集められるか、私たちも必ずできるとは言えません。ですので神戸市職員の立場を大いに利用して、救援物資の確保に努めてもらえませんか。配るのは私たちに任せてください」

で、被災者に物質を配る際のトラブルもボランティアが引き受けることにし、神戸市職員にはもっぱら物資確保に努めてもらう、という役割分担をこちらから提案することで、すんなりおさまった。神戸市職員も、「公平に分配」という役割から降りられて、ホッとした面があったらしい。

公務員は、良くも悪くもルールを体現することを求められる存在。それ以外のことをすることを許されていない。それをしたらクビ。職権乱用とみなされる。だから、ルールを柔軟に運用する、なんて権限は公務員には許されていない。だから、公務員に柔軟な対応を求めるのは無理筋。

だから、公務員も従いやすいルールを提示することが重要。現場にも適合でき、ルールに風穴を開けるようなこともせずに済む、ルールの言語化が必要。そのための国語力が求められる。

たぶん、農水省の人も困っているんだと思う。公務員が困らずに済むよう、公務員も従いやすく、子ども食堂の実態にも即したルールに変えた方がよいと思う。私は、「子ども+親(保護者)1人同伴を容認」という付帯条項が最も容易なのではないかと思う。乞う、ご検討。

※速報!辻由起子さんからご連絡ありまして、9月4日現在、ルールを改善する通知が出るとのことです!

担当者の方々、関係者の皆様、迅速なご対応ありがとうございました!

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