東大(国立大)が学費を上げずに済む方法

天下の東大が赤字、だから学費を上げたい、と。私は正直、反対。すでにこれまでに論じたように、東大が学費を上げれば全国の国立大に波及し、やがては慶応大塾長が述べたように年150万円に値上げする道が開かれるかも。それは日本の破滅を意味する。
https://note.com/shinshinohara/n/nfcc1f3643cb4
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では赤字問題をどうするのだ、という点も見逃せない。天下の東大でさえ赤字ならば、他の国立大も推して知るべし。この問題はどうにかせねばならない。私が提案したいのは、「競争的資金」を減らし、その分、交付金を増やすというもの。

大学の資金の入手ルートは二つある。交付金という、確実にもらえるお金と、競争的資金という、申請書を提出して審査を通ったらはじめてもらえるお金。前者の交付金は年々減らされ、競争的資金は年々増やされてきた。しかし、競争的資金は使いづらいし、来年もらえるかどうかも保証がない。

このため、給料は交付金から支払わねばならないが、これが年々減らされるので大学の教員を雇えなくなり、博士課程を卒業した学生は、研究者になりたくても大学に就職口がない、という悲惨な状態を生んだ。

私は、競争的資金をたとえば半減させてでも、交付金を充実させたほうがよいように思う。競争的資金は残念ながら、研究を活性化するどころか不活性化する方向に働くことが、ここ20年程の「実験」ですっかり明らかになったように思う。

交付金を増額することで教員のポストを確保し、一定額の研究費も安定的に支給できるようにする。こうすることで、競争的資金を得るために膨大な申請書を書き、多くの研究者が空振りに終わる無駄な労力を省き、研究に専念することができる。

私が新人の時には、年70万の交付金が研究費として支給されていた。これだけあれば、結構な実験をすることができた。しかし今は競争的資金を得るために膨大な申請書を書き、空振りに終わり、上手く獲得できても、しょっちゅう報告書を求められ、書類書きに忙殺され、研究に割く時間がとれない。

交付金を減らし、競争的資金を増やしたのは、研究を活性化するどころか、研究の邪魔をする効果が大きかったように思う。ならば、競争的資金を減らし、その分を交付金に回す方がよほど生産的であり、研究を活性化させるように思う。

天下の東大が「競争的資金を減らし、交付金を増やせ」と主張すれば、政府も動く可能性がある。東大は、こうした動きを主導すべき立場のように思う。それをせずして学費を上げようというのは怠慢だし、日本の学問を崩壊させる非常に問題ある行動になると私は考える。

他方、私立大学の問題がある。少子化が進行しているのに大学が多すぎる問題。私は、国立大と私立大を分けて考えるべきだと思う。慶応大塾長は、国立大と私立大の学費を同等にして同じ土俵にしろと言ったが、私立大は自分の理念で設立しているのだから、国立大に文句を言うのは筋違いもいいところ。

私立大が多すぎる問題は、統合などの整理をする必要が今後出てくるだろう。しかしそれに国立大がお付き合いする必要を私は感じない。国立大は、日本の有為な若者が低額で学べる場所として、今後も確保すべきだと考える。

一所懸命に学びさえすれば、多少経済的に貧困であろうとも大学に進学できる。そうした社会システムを維持する必要がある。そうでなければ日本の学力を維持することも難しかろう。慶応大塾長の発言は一蹴すべきもののように思う。

慶応大塾長の発言は、事実上、国立大をこの世から消し、全部私立大学にしてしまうようなものだ。塾長は「競争」と言ったが、それなら塾長はぜひ自分の子や孫を、何の保護もなく野原に放置するがいい。それができないのに何を競争と発言するのか。あまりに粗暴に過ぎる意見ではないか。

人間は、一定の保護をもって育てられることを要する生き物。その保護を取り払えとは何事か!ならば慶応大塾長は、自らの資産も何もかも子供や孫のために使わず、彼ら自身の素っ裸の力で頑張らせるがいい。それができな癖に、なぜ貧困層を苦しめる提案をするのか!

日本は急速に少子化が加速している。三重県津市のある小学校では、1年生の大半が外国から来た子どもたちとなっている。事実上、移民は増えている。統合や廃止が必要となる私立大学は、外国人留学生や移民を意識して経営改善に取り組んだ方がよいかもしれない。

まとめると、
①競争的資金に回していた分を交付金に回すことで国立大の経営を安定化させる
②私立大学の統廃合の仕組みを作る
③人口減を外国人の受け入れで埋める
この3つの政策を進めることが、必要になってくるだろう。

こうした提案を東大がすれば、日本の中枢を担っているのが(まだ)東大卒の人間ばかりなのだから、実現可能性は高いはずだ。東大は本気で、日本の教育を守る先導役を果たしていただきたい。日本の若者が、安価に大学に進学できる道を絶やしてはならない。私はそう思う。

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