「一票の格差是正」が脅かす食料安全保障

私は新聞を読むのが遅くて、昨年2月の新聞を読んでる。
昨年は衆議院議員を、都会は16人増やし、田舎を16人減らしたらしい。
「一票の格差」を是正するにはやむを得ないのだが、一方で別のことも気になる。これをずっと続けたら、地方は人がいなくなってしまうかもしれない。

議員が増えた都会はますます配慮されるようになる。他方、田舎は国会議員をほとんどの人送り込めなくなり、少数派となる。田舎を振興する政策は後回しになり、都会ばかりが振興策まつりになるだろう。すると、政策支援が充実してる都会にどんどん人が集まり、田舎からは人がいなくなる傾向が強まる。

これでは都会ばかり発展することになる。それでもやってけるならよいが、特に農業は田舎でしかできない。都会でもできる農業は野菜などに限られ、コメを育てるのは困難。食料安全保障を考えると、田舎のインフラ整備は重要なのに、田舎の国会議員の声は届かなくなる恐れが出てきた。

田舎にも人が住まないと、農家はやっていけなくなる。農地まで車を走らせるのは農家だけ、となったとき、道路整備に果たして誰が予算確保してくれるのか?農家は今や152万人しかいない。非農家は1億2400万人。今はまだ田舎に非農家も住んでるから声が届くが、もしその人たちもいなくなったら?

道路が崩れて通れない、倒木があって走れないとなっても、工事してくれる人も住まなくなったりしたら、果たして農業は維持できるだろうか?もしかしたら、「田舎がこんなに荒廃しては農業も無理だ」となるかも。その人たちも農業をやめて都会に出てくるかも。

国の方針を決める国会議員が、都会のことしか考えなくなったとき、日本の農業が危機に陥るかもしれない。農業は農家だけでは維持できない。生産物を運ぶ道路も整備しなきゃいけない。トラクターの燃料を供給してくれるガソリンスタンドも必要。病院も学校もスーパーも必要。

しかし田舎が国会議員の意識から消え、都会の選挙民のことしか考えなくなったら、田舎は忘れ去られる恐れがある。すると、田舎に住む様々な非農業の人々の営みによって支えられている農業も立ち行かなくなる恐れがある。非農業が健全に機能しないと農業も維持できないからだ。

都会に人が集まるからと言って国会議員は都会からしか選出しない、となったとき、忘れてはならないものを忘れ、国家として機能できなくなる危機を招くかもしれない。

ただ一票の格差を是正するというだけで発想を止めず、国土のあまりな不均衡さを是正する何らかの装置を作っておかないと、日本の食料安全保障は危機に陥るかもしれない。「一票の格差是正」が招く食料安全保障の危機、なんてことが起きかねないことに、目を向けた方がよいだろう。

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