対話したいなら「訊く」

大学では流行とか遊びとか上っ面の話ばかり、もっと腹を割った話ができる場や仲間がほしい、という若者の声をよく聞く。私も若い頃、同じ悩みや抱えていたから、とても共感する。他方、大人でも、話すに足る仲間や場が見つからん、と嘆く声も聞く。もっと本音で話せる仲間や場がほしい、と。

とても簡単な方法が。
自分が話すのではなく、相手の話を訊くこと。否定せずに関心をもって傾聴し、問いを発して会話の展開を促す。すると、普段話さないような話題も飛び出す。そして話をひとしきり訊くと、今度はこちらの話に耳を傾けてくれる。深い対話が成立する。

いわゆる、世間的にはごく普通の市井の人でも、こちらが否定せず、関心をもって訊くと、非常に含蓄のある、経験を踏まえた味わい深い話を聞くことができる。本音の話を聞くことができる。不思議なことに、こちらが「訊く」を徹底すると、こちらの本音も否定せず聞いてくれる。訊くから聞いてくれる。

本音トークが成立しにくい原因は、自分が話したいと思いすぎだからではないかと思う。本音で話し合いたいなら、まず相手の話を徹底的に訊くことだと思う。否定せずに。興味をもって。すると、こんなに自分の話を真剣に聞いてくれる人の話を聞いてみたい、と人間はなる。だから対話になる。

相手の話の腰を折ったり、相手の話を否定したりしたら、話してくれなくなる。恐いから。警戒するから。そうならずに済む、自分が傷つかずに済む、あたりさわりのない話題でやり過ごそうとしてしまう。
本音で語り合うには、まず相手の話を一切否定せず、関心をもって訊くこと。これが大原則。

「訊く」と書いたのは、ただ聞くだけでは相手は話してくれないから。問いを発しながら聞く、というのを「訊く」としている。ただし、相手を問い詰める口調にならないように。「これについての考えを聞かせて下さい」と訊いて、後は「ほう」と、感心しながら聞くと、相手はどんどん話してくれる。

相手の話を必ずしも肯定しなくてよい。「ほう」「へえ!」と、軽い驚きの声を相づちのように上げるだけで、相手の口はなめらかになる。この人はこんな風に考えているのかあ、と、自分とは全然違う考え方の持ち主であることを発見して「おお!」と驚く。それで構わない。

相手への敬意を失わず、たとえ考え方が違っても、軽い驚きの声を発し、「なるほど、私とは考え方が違いますが面白い」と、面白がれば、相手は、たとえ考え方が違ったとしても理解してくれた、と感じてくれる。すると、こちらの考え方も聞きたがる。そして、違っていても不思議と否定してこない。

対話の場を作ること、仲間を得るコツは、
・自分が話さず、相手の話を訊くこと
・問いを発し、発話を促すこと
・否定しないこと
・相手の話を面白がること
・自分が興味を持てる分野の問いを発すること
これで結構、対話が弾む。対話は、訊く人がいると非常に弾む。

対話は、ついつい話す側に注目が集まりがちだが、実は対話を成立させるカギは「訊く」にある。水を汲むには、内側が空洞の器が必要。平らな机に水を注いでも水は飲めずに流れるだけ。実は、対話の主人公は「訊く」にある。器がなきゃ話にならない。

本音で話せる仲間がほしいなら、まずは自分が、相手の本音を訊くこと。時折驚きの声を上げ、面白がること。自分がたのしめるよう、関心のある話題を問うこと。すると、本音で話し合える仲間ができる。試してみて頂きたい。

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