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共感と同情の違い

コミュニケーションにおいて、相手に共感し理解することが大切であることは既知のとおりです。
 
しかしながら、その共感が容易くないこともまた実際のところです。
共感の技術を身につけるためにときにはトレーニングも必要なことが。
 
共感の難しさの一因は、共感とは何かがわかりにくいところにもあると思うのです。
「共感」をわからなくさせている要因として、似ている概念の「同情」があります。
 
「同情」とは何なのか、改めて理解することで「共感」を理解することができると思うのです。
 
今回は、「共感」と「同情」の違いを説明します。



同情が起きているのは、自分が過去に経験した、似たような感情を追体験しているときです。
同情とは、自分の体験からつくられた枠組みで、相手の気持ちや考えを理解しようとするものです。
 
「相手はこのような思いをしているだろう」
と自分のフィルターで推測しているのです。
 
同情は、自分の過去の体験を相手に投影しているにすぎません。
そのため、相手との感情のズレが生じやすくなります。
 
 
いじめを受けている生徒が教師に相談しているとします。
教師自身も学生の頃にいじめ被害者であり、いじめ問題に取り組みたい気持ちもあり教師をしています。
 
教師自身がいじめを受けていた過去のつらい感情を追体験し、目の前の生徒に投影します。
生徒の気持ちはわかる、自分も過去に同じ辛い体験をしたから。
そう思って、自分の感情を生徒に重ねて理解しようとし、過去の自分にするように生徒にアドバイスをします。
 
しかしながら、教師と生徒は異なる存在ですから、感じ方が異なれば、いじめの状況も異なるのです。
もしかすると、相談するという行為にも自尊心が傷つくくらいの心の状態かもしれません。
 
このようなときに教師の生徒への同情が生じているかもしれません。
 
 
一方共感とは何か。
相手の枠組みで相手の気持ちや考えを理解する試みです。
 
自分の体験したことや考えは、一旦脇に置きます。
そして、相手の枠組みから、今どのような気持ちでどのような考えでいるのかを理解するのです。
 
 
同情との違いを知ることで共感とは何かを理解しやすくなります。
今自分は共感しているだろうか、それとも同情をしているのだろうかと。
 
 
同情のとの関連で、「子離れしない親」の心理を説明してみたいと思います。
 
子どもが大人に近づくにつれて、親は子離れをしていかなくてはいけません。
子どもの自立のためです。
 
それなのに子離れできない親がいます。
親からすると、子どもは未熟であり親が離れると困ると思っています。
親が離れると「この子は寂しい思いをする」からと。
 
ところが、子どもが寂しい思いをするというのは、実のところ親自身が感じている寂しさの投影ではないでしょうか。
親の枠組みで想像している子どもの寂しさ。
 
このような親子間で往々にしてあるのは、いつもべったりなのにもかかわらず、子ども側は「親は自分のことをわかってくれない」と思っていることです。
親は子どものことを見ているのではなく、親自身の心を見ているのだから。
 
子どものことをいつも思っている親側としてはつらいですよね。
 
同情ではなく共感を。
子どもの枠組みで気持ちや考えを理解しようとする試みが必要なのです。
 
 
 
今回は、「共感」をより理解するために、あえて似て非なる「同情」について説明しました。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。


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小林いさむ|公認心理師

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