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【考察日誌】商売の歴史から考える!売れるビジネス、長続きするビジネスの秘訣とは?vol.2

こんばんは、芝本です。

今回は、以前書いた記事「【考察日誌】商売の歴史から考える!売れるビジネス、長続きするビジネスの秘訣とは?」の続きから書いていきます。

前回の記事では、このような流れで考察を書きました。

-流行り病の影響で、営業先への訪問NGや、在宅での業務など働き方が変わった。
-知人の会社では、新規営業の成績は落ちたが既存顧客の売り上げは落ちなかった。
-状況環境に左右されやすい商売と、左右されにくい商売(長続きする商売)の差を考えるため、商売の歴史に目を向けた。
-物々交換や物品交換、貨幣制度まで振り返った。

前回の記事は、紀元前や710年の平城京あたりまでの時代背景を考えながら、当時の商売の形を考えました。食べ物や住む場所など、「生きるためのものの取引」から、装飾や労働力のような「社会的な地位を示すためのものや、目に見えないものの取引」等、マズローの5段階の欲求がしっくりくるような流れだったので面白いなと感じました。

今回の記事はその続きの時代になります。
戦国時代から江戸時代後期にかけての内容なので、前回の記事よりも馴染みのある内容が出ているかもしれません。

では早速、戦国時代の商売の話から長続きする商売の特徴を探っていきましょう。

商売人コミュニティ「座」

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「座」という言葉は、織田信長の楽市楽座等で知られる商売人の集まりです。織田信長の政策は、「座」の許可が無くても自由に商売できるよという内容でした。まずは、前回の貨幣制度の終わりから時代の流れを追いつつ、商売人コミュニティ「座」について考察していきます。

前回の記事で考察した貨幣制度は、その後10世紀半ばあたりから衰退して、お米や絹、麻などがその役割を担ってきました。戦国大名も石高(お米の収穫量)でその力を数値化されていましたもんね。「加賀百万石の大名」なんて言葉を大河ドラマで聞いた気がします。

貨幣制度が衰退してお米が通貨の代わりだったと聞くと、一見原始的な文化に戻った気がしてしまいます。しかし、商売の発展から見ると、この時期の変化はとても大きいものです。

先ほど紹介した「座」と呼ばれる商売人のコミュニティが、平安時代から鎌倉時代にかけて発達し、商売人の力が大きくなっていったのです。ちなみに「座」という言葉には「同業者による集まりの場」という意味も含まれており、東京の地名「銀座」の由来にもなっているそうです。

この「座」というコミュニティは、朝廷や貴族、寺社等にお金を払う代わりに品物の独占権を握っていました。「毎月10万円払うから、塩の商売を自分たち以外が扱えないようにしてくれ」みたいなイメージでしょうか。

なぜこんな関係性が出来たのか。
どうやら、朝廷が資金不足になったため、商売人からお金をもらう仕組みを考えたのがきっかけのようです。いつの世も、政治というのはお金の工面が難しいみたいです。

「座」の由来とメリットとは?

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「座」の由来は儀式での座る位置
元を辿ると、「座」とは朝廷・権門寺社の儀式や祭礼の際に、特定の座席を占めた奉仕者の集団から発生したそうです。「座」は朝廷や貴族、寺社等からお金をもらって、商品や労働を提供していました。

「いつも商品を納めてくれてありがとう」の位置に座っていたから「座」なんですね。

依頼側は、定期的に必要になる商品や役割(神輿を担ぐ等)を安定して確保出来ますし、同じ業者に依頼し続ける分、ノウハウも蓄積されていきますよね。依頼を受ける側も、安定した収入を確保出来るほか、朝廷に商品を納めている店という信用を得ることが出来ます。担当営業マンと得意客のような関係ですね。

「座」のメリットは商売の独占
そんな、商人や奉仕人と公的な組織の結びつきから、依頼側の財政状況が変化するのに合わせて両者の関係性は形を変えていきます。

これまでとは逆に、座から朝廷側へお金を納める仕組みに変わったのです。

その代わり、「座」に対して品物の占有権を認め、占有権を持つ「座」に所属していない商人がその品物を扱えないようにしました。現代に置き換えると「商標登録」みたいなイメージですね。

形が変わった後の「座」を作るメリット”品物の独占”は、商人にとってお金を払ってでも得たいものでした。なんといっても、コミュニティ外の商人がその商品を扱えなくなるのですから、値段は自分たちで好きに設定することが出来ます。

競合が発生しないので、あちらのお店の商品の方がおいしいだとか性能が良いなんてことも起こりません。今のままの商売を続けていれば必ず売れ続ける仕組みという事です。

「座」が衰退したのは一部の人しか儲からなかったから
しかし、逆に言うと「座」は、経済や発明の発展を邪魔してしまう制度でもありました。織田信長が楽市・楽座政策で城下町を賑わせた話は社会の授業で習いましたよね。現状儲かっているから制度を変えたくない座商人に対して、新しく商売を始めたい商人が「座に所属しなくても商売が出来る町」に集まったという話です。
織田信長のような為政者から見ても、座制度でお金を納品させるより、多くの商人が集まってくる仕組みを作って、少額を多くの商人から納めさせる方が儲かったんですね。

座制度は豊臣秀吉の時代に解体され、その後も名前や寄合としての機能だけが残っていきましたが、品物の独占という仕組みは無くなりました。

「座」から得た学びはコミュニティの力と利益を独占しないこと
ここから学んだ事は、二つあります。

人が集まると朝廷と専属契約を結べるような大きな力を持つこと。
一部の人間が利益を守る事は社会の発展と相反する場合があり、そのような利益は長くは続かないこと。
コミュニティは大きな価値を持っているけれど、公益性を持っていなければ長続きしないよってことですね。今の世の中でも独占禁止法なんてものがありますが、歴史から学ぶことは多いです。

数(コミュニティ)の力を活用する。社会的利益も併せ持つ。財閥やグループ会社が繁栄していたり、法人税率の調整なんかは経済界の偉い方と政治家の話し合いの場が設けられますよね。これも現代で大切にされている商売の大事なポイントです。

御用商人

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座制度が衰退して次に出てきたのが御用商人の存在です。コミュニティ単位でのお付き合いが制限されると、商店単位でのお付き合いを始めたのです。

「越後屋、おぬしも悪よのぅ」なんてセリフもこの御用商人という立ち位置で、商魂たくましいとはよく言ったものですね。状況環境が変わっても、だからどうするのか、自分たちがより発展していくために次の行動に移る様は学ぶべきポイントだなと思います。

御用商人のメリットは安定した収入と商人としての信用
御用商人のメリットは次の二つです。一つ目が安定した収入です。
御用商人とは、その土地の大名や幕府から「物入りの時はあなたから買います」という約束の代わりに、領地内の商人のとりまとめをするという関係だったようです。
定期的に幕府や大名から発注がかかるため、小さくない金額の取引が継続して発生します。その分、時期や原料の価格変動、流行り廃りに左右されずに一定の売り上げが見込まれますね。

二つ目が商人としての信用です。
幕府や名家の御用商人であれば、商品の質も良い物を提供していそうですし、お金の支払いも安心出来ますよね。取引相手から見ても、御用商人との取引なら安心と選んでもらいやすくなりますし、知名度が上がれば相手から取引の話が集まってきます。

このメリットは、初期の座制度にも見られたものです。現代のように情報を流しやすい時代でもなかったでしょうから、大名や幕府の名前を使う事で効果的に自分の店を宣伝出来たのかなと推測します。また、安定についても商人の課題だったようですね。天保の大飢饉等、四大飢饉と呼ばれるような凶作が、度々食料事情を直撃していた時代です。安定を求めるのも無理のないことだなと思います。

新しい商人が増えたので自分の商売をブランディングする必要があった
江戸時代は参勤交代や武家諸法度、一国一城令等の政治戦略が制定された時代です。平安時代に続いて日本で二番目に長い時代区分を築き上げたのも、政治戦略に対して積極的だったからでしょうか。そんな長く平和な世の中だったためか、商売のバリエーションも豊かになった江戸時代。調べてみると様々な珍商売が行われていました。

歌舞伎や浮世絵、川柳等の日本文化が醸成されたのもこの時期です。戦がなくなり、武士の権威が徐々に落ちて借金をするようになり、借金元の商人が権力を握り始めたこの時代。商人になりたいと思う人が増えたのも納得の時代背景です。

江戸時代は、これまでの時代背景に比べて、平和で新規事業参入が盛んだったという点が現代に似ています。ただ、先ほどのURL内で紹介されていたユニークな商売は現代では見かけませんよね。一方で、老舗と呼ばれる商店でこの時代から残っているものも存在します。

長続きする秘訣は日用品と新規参入に負けないブランド力
こうしてみると、製薬関係や食べ物関係の商売が長く繁栄しているように思われます。物々交換の時代も交換されていたのは道具や食料品で、生活に根ざしたものでした。特に、薬と食べ物は、今後流行が移り変わったとしても恐らく不要になることはなさそうです。

お酒のメーカーが長続きしているのは調べてみて面白いなと思った部分です。慶弔時に必ず登場する文化的な象徴である点が長続きの理由かなと思います。製造方法も蔵独自の物がありそうで、参入障壁も高めなイメージですよね。良く見てみると、仏具や和楽器等の伝統工芸品もちらほら見受けられます。こちらも老舗である事が強力なブランディングだと思います。今から拡大していく市場でもなさそうなので、新規参入してくるライバルは少なそうですね。お菓子関連の老舗企業も多いですが、どの企業も看板商品を持っています。「この地域といえばこれが定番」と言われるぐらい、商品のブランディングが成功した例ですね。赤福や八つ橋、おこし等の製造メーカーが江戸時代から続く老舗だそうです。

この時代からも、流行に左右されない商売が長続きするという事。新規参入が少ないか、参入されても問題ない程のブランド力を持っている事が、長続きする商売の要素だと学び取れます。

まとめ

今回は、長続きする商売について平安時代~江戸時代の商売から考察しました。これまでの時代から、一気に”自らの利益を追求する商人”のイメージに近づいたなって印象を持ちました。

「座」というコミュニティは戦国時代に解体されてしまいました。しかし、後の時代に続く御用商人も安定性やブランディングといった同じメリットを得る仕組でしたよね。「座」が公益性を損なっていなければ、もしかするとその後も長く続いた制度なのかもしれません。

僕の記事で何度か出てくる言葉ですが、「目の前の相手のありがとうを生み出す」という考え方はとてもシンプルな商売の真理かもしれませんね。

本日はここまで。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

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