見出し画像

noteやTwitterでノウハウ的な情報を発信しない理由

私は、乳幼児の発達支援に力を入れている臨床心理士・公認心理師ですが、noteやTwitterで「こういう子どもにはこう対応する」「〇〇障害にはこの方法」というような「ノウハウ」「解決策」や「マニュアル」的な情報は発信していません。というか、私には発信することができません。

こういった情報を、専門家が断言するとウケがいいのは知っていますし、そういった方法の数々を知らない訳でもありません。でも、発信はしません。なぜなら、子どもの育ちは一人ひとり違うので、ある子どもに有効なことも、別の子どもには効果がないだけでなく、発達段階に合っていない対応を続けるとかえって発達を遅らせたり、発達を混乱させてしまうなど「有害になることもある」からです。

そして、子どもは日々成長していきます。発達に凸凹がある場合は特に、その時その時の発達に合わせた”オーダーメイド”の支援、関りをしてこそ、初めて意味があるものになっていきます。幼稚園や保育園に通う年齢であれば、成長も早いのでなおさらです。

先ほど、あえて「有害」という強い言葉を使ったのは、巷で言われる様々な見解に疑問を感じることが多いからです。恐らく、最初に言われていたことを部分的に切り取って言ったり書いたりされているので「合ってはいるけど、部分的」であったり合ってはいるけど、全ての子に当てはまるわけではない」ものが少なくありません。
例えば、

● 「凸凹がある子は、凸を伸ばしてあげれば良い」
→ 凸を伸ばしてあげるは、合っています。でも凹も放置してはいけません。特に乳幼児期は、凹も伸ばしてあげられる時期や関わり方、機会も多いのに凹のまま放っておくなんてもったいない、としか言いようがありません。乳幼児期の子どもにとっては、その子の成長を妨げる可能性すらある、無責任な発信です。

● 「凸を伸ばすことで、凹も伸びていく」
→ 凸と凹が連動するような性質のようなものである場合は、合っています。しかし一概に言えることではありませんし、何よりもその子の様子を知らない人が断言していいことではありません。

● 「凸に特化した療育等に通うことで、得意なことをもっと得意にして自己肯定感を上げる」
→ 後半は合っています。しかし前半の「凸に特化した療育等」の部分は、凸が伸びたがゆえにかえって凸凹が激しくなってしまい、日常生活や集団生活に支障がでてきてしまうことがあります。となると、最終的に自己肯定感は上がるのか?疑問です。療育等で「その子が得意な類の課題だけを延々と取り組ませる」方針のところには、疑問を感じます(運営側は楽かもしれません)。

ところで、私は2年前、開業12年目にしてようやくホームページを開設しました。正直、情報発信は苦手でプライベートなブログも長続きしない自信しかないので、初めから手を付けないタイプです。それでもホームページを作ったのは「保健師さんや幼稚園や保育園の先生、小児科のお医者さん以外にも、子どもの発達のことを相談できる専門家はいるよ」「心理士の中に、発達を専門とする人もいるんだよ」ということを広く知ってほしかったからです。

相談して下さる多くの保護者は、保健所など地元の子育て相談、発達相談を受けながらも「本当にこの方向性でいいのでしょうか?」「他の専門家の意見も聞きたい」「他にもできることはないでしょうか?」と意見を求めてこられます。中には、発達の専門医に通院していても「数分の診察だけでは補えない部分があると感じている」と相談に繋がる方もいらっしゃいます。

今は皆さん、本やネットで勉強されているのもあって、あふれかえる情報の中から「この子」に合うのはどの方法なのかと試行錯誤しながら正解を求めておられるように見えます。
しかし、このように子どもの発達に真剣に向き合おうとされる保護者が個人的に相談できる場所は、実際にはまだまだ少ないのが現状です。

「大切なわが子の成長のことで疑問を持ったり、悩んだりした時、相談ができるこんな場所があるよ」
心理士側が発信しなかったら誰にも伝わらないけれど、たまたま必要としている人に、偶然にでもホームページやnoteやTwitterを見つけてもらえたら、相談先の選択肢が、一つ増えるかもしれない。そんな思いで発信しています。

以下の記事のタイトルは、「カウンセラーの探し方」となっていますが、子育て相談や発達が専門のカウンセラーも、この記事のリンク先「臨床心理士に出会うには」から探せます。ご活用下さい。

必要な情報が、必要としている人に届きますように。


〇 宣伝 〇
「こんな仕事もしています」ということで、幼稚園版スクールカウンセラーともいえる「キンダーカウンセラー」の仕事について詳しく解説している本を出版しました。スクールカウンセラーの導入を検討されている幼稚園や保育園、また現場の先生方、乳幼児の支援に関心がある心理・専門職、そして保護者の方にも参考にしていただける一冊です📖

いつもありがとうございます。 いただいたサポートは、書籍の購入や学会等の参加費に活用し、皆さんのお気持ちを社会に還元できるよう、これからの発信に繋げていきます。