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閉ざされた図書館

割引あり

登場人物紹介
主人公・高橋悠人:地方の大学に通う大学生。図書館でアルバイトをしている。

図書館員・佐藤美紀: 悠人がアルバイトをする図書館の常勤司書。
図書館に秘められた過去を知る唯一の人物。

謎の声の主:図書館内で悠人に囁きかける、正体不明の存在。

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・あらすじ
深夜、アルバイトとして図書館を閉館作業中の大学生・悠人は、本が勝手に落ちたり、囁くような声を聞いたりと不可解な現象に遭遇する。恐怖に怯えながらも、彼は図書館に隠された秘密と、そこにまつわる悲しい物語を解き明かしていく。

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・目次・
序章: 深夜の図書館
第一章: 不可解な現象
第二章: 囁く声の正体
第三章: 秘密の扉
第四章: 真実への道
結末: 閉ざされた図書館の秘密

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序章: 深夜の図書館

深夜、ほとんどの学生が帰宅し、校舎が静寂に包まれる時間。地方の大学に通う大学生・高橋悠人は、図書館の閉館作業を一人でおこなっていた。図書館は古く、木製の棚や古い書籍が並ぶ、どこか懐かしさを感じさせる場所だ。悠人はアルバイトとしてこの図書館で働き始めて数ヶ月が経つが、深夜のシフトはこれが初めてだった。「こんな時間まで開けてる図書館も珍しいよな…」悠人がぼんやりと考えながら、貸し出しカウンターの電源を落とす。

その時、彼の足元でガタっと音がした。驚いて振り返ると、一冊の本が棚から落ちていた。「風かな…?」しかし、窓はすべて閉じられ、館内に風が吹き込む余地はない。悠人は落ちた本を拾い上げ、元の場所に戻した。その本は古い装丁で、タイトルは「図書館の秘密」。何となく不気味さを感じながらも、悠人は作業を続けた。

数分後、今度は耳元でささやくような声が聞こえた。「どこにいるの…?」声ははっきりと聞こえたが、周りには誰もいない。悠人の心臓が高鳴る。これまで超自然的なものなど信じたことがなかったが、この図書館で起きていることは説明がつかない。不安を抱えつつ、悠人は閉館作業を急ぎ終えようとする。しかし、そこから先は彼の想像を超えた出来事が待ち受けていた。見えない何かの足音が近づいてくる。鈍く重い、一歩一歩がはっきりと耳に響く。恐怖で固まる悠人。しかし、その足音は突如として止み、館内に再び静寂が戻った。悠人はこの夜、何度も振り返りながら、なんとか閉館作業を終え、図書館を後にした。

外に出ると、深夜の冷たい空気が彼の緊張を和らげる。しかし、彼の心には消えない疑問が残った。今夜の出来事は一体なんだったのか?そして、その声の主は誰だったのか?悠人は知らず知らずのうちに、図書館に隠された秘密を解き明かす旅の第一歩を踏み出していた。

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第一章: 不可解な現象

翌日、悠人は深夜の出来事を誰かに話そうか迷ったが、結局、誰にも口外することなく図書館に向かった。不安を感じながらも、彼には強い好奇心があった。昨夜の声の主は何者だったのか、そしてなぜ自分に助けを求めたのか。その答えを探すためにも、再び深夜のシフトに立つことを決意する。

その日も閉館時間が近づくと、図書館は静かになり、悠人は一人で作業を開始した。昨夜の恐怖が頭をよぎる中、彼はあえて同じ場所、同じ時間に立ってみた。そして、またしても本が棚から落ち、囁く声が聞こえてきた。「ここから出して…」。

悠人は恐怖を押し込め、声の方向に歩み寄る。声は図書館の奥、古い文献が保管されているセクションから聞こえていた。彼がその場所に近づくと、今度ははっきりとした足音が自分のものではないことに気づく。足音は彼をある棚の前へと導いた。その棚には「図書館の秘密」と題された本が並んでおり、一冊がわずかに引き出された状態であった。

悠人は本を手に取り、ページをめくる。中には図書館とその歴史に関する記述があり、特に一人の図書館員の話が目立っていた。それは数十年前にこの図書館で働いていた女性についてのもので、彼女は突然姿を消したという。その女性は図書館を深く愛し、特に夜間は常に図書館のことを考えていたという。

読み進めるうちに、悠人はその女性図書館員が抱えていた深い悲しみに気づく。彼女は自分の人生と図書館を深く結びつけ、それが彼女の運命を決定づけたのだ。その瞬間、再び囁く声が聞こえ、「私の話を聞いて…」と訴えかける。

悠人はこの図書館に隠された悲しい物語を解明することが、声の主を安らぎへと導く鍵であることを直感する。彼は図書館員の佐藤美紀に相談を持ちかけることにした。美紀はこの図書館の長い歴史を知る数少ない人物の一人であり、彼女なら何か手がかりを持っているかもしれないと思ったのだ。

この時点で、悠人はただのアルバイト学生から、図書館に秘められた謎を解き明かす探偵へと変わり始めていた。しかし、彼がまだ知らない真実が、図書館の暗がりの中で待ち受けている。

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