文絵のために

【右脳めし】物語とシステムのマッチングが秀逸|文絵のために(アナログゲーム)

『文絵のために』はボードゲームデザイナーのカナイセイジさんが手がけたアナログカードゲームです。

その特徴は4つ。

・物語は「ループもの」
・マルチエンディング
・遊びながらカードの効果が判明する
・シナリオを3本収録している

ゲームのプロローグとなるストーリー

主人公は高校2年生の「武雄」と、彼に想いを寄せている幼馴染の「文絵」。
物語は文絵が亡くなってから数日後に始まります。

その日、武雄は、文絵の母親からラッピングされた腕時計を渡されました。
武雄への誕生プレゼントとして、文絵が生前に用意していたものです。

自宅に帰り、腕時計の時刻を合わせようとした武雄は、突然、意識を失います。
目覚めると、文絵が亡くなる数日前に遡っていました。

武雄はこれを好機と捉え、文絵の運命を変えようとします。

遊び方

ゲームは武雄役と文絵役の2名でプレイします。
使うのは、角の青い武雄用カード12枚と、角の赤い文絵用カード12枚。
各カードには、主人公、先生、友達、腕時計などのアイテムが描かれています。

また、カードは片面が透明で片面が黒色のスリーブに入っており、カードの裏側(カードの効果が書かれている)が見えないようになっています。

2人のプレイヤーは、相手にカードの内容を見せないようにしながら互いのカードを引き合い、引いたカードの効果を使ってゲームを進めます。

カードの効果は、「手持ちのカードの1枚を相手に見せる」とか「手持ちのカードの使用順序を変える」など。
危険なカードを見せれば、相手はそのカードを引かないよう注意できます。
使用順序を変えれば、引いて欲しいカードを真っ先に引かせることができます。

こうした効果を駆使して、引くべきカードを相手が引けるように、引いてはいけないカードを相手が引かないように誘導します。

こうして武雄役と文絵役の2名のプレイヤーは、互いに協力しながら、文絵の運命を変えようとするわけです。

ただし、プレイ中にエンド条件を満たすと、物語はエンディングを迎えます。
エンド条件とは「効果使用後に捨て山に置いた"ある"カードが2枚になる」とか「どちらかのプレイヤーが、手持ちのカードも山札のカードも無くなる」など。

どのエンド条件が、どんなエンディングになるのかは「エンディングブック」で確認します(下図は3シナリオ分のエンディングブック)

メインストーリーとなる「文絵のために」編の場合、エンド条件によって分岐するエンディングの数は7種類。
プレイヤーは様々なバッドエンドを経験しながら、バッドエンドに至るエンド条件を知ります。
その経験を生かして、プレイヤーは協力してバッドエンド条件を回避しつつ、たった1つのグッドエンディングを目指す。それが、このゲームの遊び方です。
(上手く伝わらなかったらゴメン!)

ココが秀逸!

バッドエンド後に再度プレイする行為は、武雄が再び、文絵の亡くなる数日前にタイムリープすることを意味します。

プレイ回数を重ねながら、カードの適切な使用方法を探り、グッドエンドを目指す行為は、武雄がタイムリープを繰り返しながら、友達や先生とどう接すれば文絵の運命を変えられるのか、試行錯誤することを意味します。

これが、このゲームの物語を「ループもの」として成立させています。
物語とシステムの一体感が秀逸です。

デジタルなゲームだから作りやすいマルチエンディングを、カードゲームというアナログフォーマットで成立させてたところも秀逸です。

また、カードをシャッフルしたり相手プレイヤーを変えれば、グッドエンドに至るカードの扱い方が変わります。これは、エンド条件が同じでも遊ぶ度に攻略方法が変化する、ということです。
普通、物語が主軸のゲームは、一度読んだらお終いです。そうならないところが秀逸です。

いやあ、参った。素晴らしい。
デジタルゲームのクリエイターとして、目が覚めるような思いを味合わせてくれたアナログゲームでした。

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