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#クリストファーノーラン
「為すすべのなさ」を抱えて──クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』
先月末にようやく日本公開された、クリストファー・ノーランの新作映画『オッペンハイマー』を観て、しばらく茫然としていた。あまりの凄みに圧倒されて茫然としていながら、日常の音に劇中の音を想起するほど作品に頭が浸されてそれについて考えずにはいられず、しかしやはり思索はまとまらないという状態になってしまっていた。それでも考え続けているうちに、この茫然とするほかない感覚、言い換えれば「為すすべのなさ」のよ
もっとみる芸術は「現実を忘れさせる」ものか?
ずっと夢の中にいられたら、ずっと眠りから覚めないでいられたら、と思うことがある。ただでさえ、人生は辛いことの方が多いのに、昨今のように次から次へと大きな問題が社会に、一個人に襲い掛かってくる状況下に生きていると、よりその思いが強くなる。人間の心は、現代を生きるにはあまりに脆弱なのかもしれない。
芸術に触れたいと思うことは、この「ずっと夢の中にいられたら」という願望に似ている。フランスの現代小説