見出し画像

【詩】杪夏(びょうか)

点滅している青信号に
想いを置いていこうか
二十一時の信号機のひかりは綺麗
滲んで見えているから、余計

ゆびの背で目許をおさえる
仕草さえ思い出に変わる

揺れながら確信した
砂のうえ
失くしたビーチサンダルのように
戻らない背中の輪郭をえがく
吐息さえ
まぶたが覚えているというのに

あなたがいない

現実を
どうか乗り越えられますように

たたまれるのを待っている
海の売店の柱のひとつにも
ひと夏の物語が刻まれている

ありのままに過ぎていく
時間を残酷だと捉えていい
今はまだ
そんな気分だ

夜風が少しだけ冷気を含む


………………………………………………………………………………

      モモトモヨさま。  
   イラストお借りいたしました。
     
………………………………………………………………………………

(ちょっとだけ解説)

 杪夏は夏の終わりのことです。ここ何年も
夏から秋に移ろっていく瞬間をえがきたい。
線香花火が燃え尽きるときのような、独特の
もの悲しさとでも言うのでしょうか。小さな
海辺の町は、海水浴シーズンが過ぎると急速
に熱を失います。賑やかだった浜に風が通る
夏の終わりを、何となくさびしく感じてしま
うのは、私だけではないと思います。
 夏でもない、秋にも満たない一瞬を書こう
と生まれた詩ですが、少しは目を通していた
だけるだけの作品を書くことができたでしょ
うか。そのあたりの判断は、読んでください
ました方にお任せしたいと思います。


   (記念すべき50回目の note 掲載に)

#忘れられない恋物語


この記事が参加している募集

忘れられない恋物語

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?