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744日後に出版社に内定する文系2留大学生|光文社新入社員の就活カレンダー

出版就活は「競争率がとても高い」というイメージがあると思います。たしかに企業数がそもそも少なく、内定を獲る難易度が高い業界であることは間違いないと思います……。

そうだとしても「本や雑誌が大好きで編集者になりたい」という人や、「どうしても出版社に入りたい」という気持ちがある人は、絶対に諦めないほうがいいです!

出版の世界に潜り込む方法は、いろいろあるんです(じつは)。

自分は大学を2年留年して、出版社に入社。周りよりもたくさんの時間がかかってしまいました。内定がもらえず落ち込んでいる人や、出版社を諦めたくないという人に向けて書きます。

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「子どもの頃から本が好きです」

2018年7月17日。大学生活ではサークル活動に没頭。就活のことはほとんど意識しないまま、4年生の春を迎えました。

3月から説明会にやっと通い始める。ぼんやりとメディアに入りたいなーという漠然とした想いが芽生えました。いま思うと、すべてが遅すぎで、何も考えてなさすぎでした。

「子どものころが本が好きで、文学部でも勉強していたので、出版社に入りたい」

出版志望の学生だったら誰でも浮かぶ言葉。そんなフワッとした志望動機を、ESに書いて、面接でも口にしていました。

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小説、漫画、ラノベ、ノンフィクション。なんでも読む雑食系です!

やりたい企画の‟具体性”がなかった。作りたいと思っている本を、自分が作らなければならない‟必然性”がなかった。これまでの人生と出版社が、本当の意味で結びついていなかった。

応募した出版社からひとつも内定をもらえなかったのは、当然のことだったと思います。

5月末、憧れの文芸出版社から不採用通知。このときがいちばんショックでした。かなり落ち込みました……。このまま出版社は諦めるしかない。でもやりたい他の仕事も浮かばない。

そんなときにたまたまTwitterを見ていると、好きで読んでいた雑誌がアルバイトを募集していることを発見! 面白そうじゃん! 咄嗟に履歴書を送ったのは言うまでもありません。

面接に呼ばれると、その会社はめっちゃ中小出版社。

「本気で編集者の仕事をやってみたいんだったら、この会社は向いています。他の出版社だったら、自分で1冊の本を作るまでにすごく時間がかかったりする。やりたいことを最も早く実現できると思うよ」

とりあえず1年間やってみよう。好きな雑誌で働けるなんてチャンスはそうそう巡ってこないから。そう思って、この面接を機に、就活浪人することを決めました。

そして、7月17日にアルバイト初日を迎えました。

内定まであと744日。

穴の空いた船上で

2018年12月21日。憧れの雑誌、憧れの編集者生活。噂に聞いていた通りに、そして思っていた以上に、忙しいものでした。やっぱり小さい出版社だったのも、忙しさの原因として大きかったと思います。

とにかく人手が足りてない。なんでもない雑用から、クリエイティブな作業まで、すべてをやらなきゃいけない。また、人員不足は、編集部だけではなかったので、新しい宣伝手段や営業戦略も、自分たちで考える。

底に穴が空いた船の上で、必死に水を掻き出しながら、前進しなければならない。常にそのような感覚がありました。

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締め切りの峠を越えた、深夜の帰り道。なぜか近所の自販機をスマホで撮ってました。疲れてたんだと思います。

毎月毎月、雑誌を出せるかどうかのギリギリの勝負。より売れる本を作るためには、表紙のキャスティング交渉を粘ったり、時間と労力をかけた特集を届けるしかないのです。

そんな出版社の事情は、入る前に分かりようもありませんでした。でも、逆に言えば、いろんなことを経験できる環境。出版にかかわることは、編集だけでなく、営業も、流通も、宣伝も。たくさんのことを経験できたのは、武器になったかなと思います。

幸運なことに、雑誌の連載企画を担当させてもらえることになりました。立ち上げから、全部自分でやる。入社して3カ月。普通の会社ではなかなかないスピード感。

はじめた連載は、とあるアーティストのエッセイ企画でした。少し変わった形式で、会社のホールでトークイベントをやって、それを一冊にまとめるというスタイル。ほぼ経験のない若手アルバイトにチャンスを与えてくれるのは、中小企業ならではでした!  俺、その辺の留年しそうな大学生ですよ……?

12月21日、トークイベントの第1回目。段取りが上手くいかない部分もありながら、無事終えることができました。もっとこの空間と時間をブラッシュアップさせたい。とにかく目の前のことに熱中する日々でした。

内定まであと587日。

2019年9月25日。アルバイトを続けて1年。どうしても企画を1冊の本にして世に出したいという気持ちが、頭のなかを支配するようになりました。せっかく自分が立ち上げた企画。他の人には任せたくない。この連載を本にするまでは、どうしても辞めたくない。そんなことばかり考えていました。

大学5年生の4月には、ここでもう一度就職活動をすることが頭をよぎりました。でも、目の前のことに集中したくて、断念しました……。1冊本を作ったら、いつかの転職にも役立つだろう。どうしても新卒でなければという考えも自分のなかでは、薄まっていた時期でもあります。

そして、9月25日。念願の1冊が完成。発売日にTwitterのタイムラインに読者の感想が溢れた嬉しさを忘れません。同時に、この会社でやりたいと思えることは、やり切ってしまったというような吹っ切れた感覚もありました。(あれ、大学卒業できるんだっけ…?)

内定まであと309日。

「もう少ししたら、きっと君は後悔する」

2020年2月16日。正直、悩んでいました。大学を気付けばさらに1年留年して、大学6年生。崖っぷちの6年生。今年就職活動にチャレンジするかどうかは、踏ん切りがつかずにいました。

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なんとなく綺麗な崖の写真を貼ります。

いまの会社では、やりたいことは実現させられる。毎日が楽しくて充実している。そう思う一方で、やれることの限界も感じる。

それに自分はアルバイト。いつになったら正社員になれるんだろう?

そんな宙ぶらりんの時期に、知り合いの編集者にこう言われました。

「まだ若いからアルバイトも楽しいと思う。やりたいことを思いっきりやれる時間は人生で少ないから。でももう少ししたら、30代が見えてきたら、後悔するかもしれない。

私も君と同じで、正規雇用じゃない形でキャリアをスタートさせた。それは間違いじゃなかった。でも、あのとき就活頑張って正社員になれてたらなって、たまに思うんだよね」

自分が歩もうとしている、その先の未来を経験している人の言葉が、胸に響きました。もう一度就職活動をやろう。どの出版社もエントリーが始まっていた頃だったと思います。まだ間に合うのかな?という不安でいっぱいでした。

内定まであと165日。

2020年6月25日。正直に言うと、就活の記憶はほとんど残ってないです。働きながら、新卒採用を受けるのは、本当に辛かった。

深夜に入稿作業をしながら、明け方までにエントリーシートを書く。そして、11時に出社。面接がある日は、午前中にしてもらって、出社前に済ませる。

ほぼ出版だけに絞って10社ほど受けましたが、めまぐるしい毎日が続きました。その分、目の前の面接官としっかり話して、自分のやってきたこと、これからやりたいことを伝えようって思いました。

出版社の多くは、新卒採用ではなく、年齢を広げた定期採用として募集をおこなっています。いわゆる”ストレート”じゃなくてもハンデを感じる必要はまったくないんです!

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先輩社員KBさんも転職組。この記事はめっちゃ参考になりますよ!上の画像タップで記事読めます!

別の仕事から転職を考えている人も、これまでの実績をかなり評価してくれます。面接官にどれだけ自分の経験を伝えられるかが大事なのだと思います。

夏の盛りの6月25日、光文社の2次面接で面接官の方に「グラビアやってるんだ。好きなカメラマンは?」と聞かれ、一緒に仕事をしたことのある人の名前を挙げました。そんな話を面接官とできたのは、しんどかった日々の唯一楽しい記憶です。

内定まであと35日。

絶対に諦めないほうがいい。

2020年7月30日。光文社の最終面接。この日もあっと言うまで、ほとんど記憶がありません。笑顔で、目を見て、自分らしく話す。それ以外のことはあまり意識せずに臨みました。

就活で何も話すことがなかった1回目、就活を諦めてしまった2回目、ようやくちゃんと話すことができた3回目。

744日前の自分が諦めなくて、本当に良かった。

あの日、自分が話した「子どもの頃から本が好きです」。

その言葉はたぶん間違いじゃなくて、その続きをどう語るのか? それは、時間をかけなければ、見つからないんだって思います。

逆に、時間をかければ誰でも可能性があるんです!

長い文章となってしまいましたが、いちばん言いたいのは、チャンスは無数にあるということです。

出版社のアルバイトやインターン記事作成の仕事は、意外と世の中転がってます! やってみたほうがいいと思います。競争率の高さを理由に諦めるのはもったいないって、心から思います。最初はどんな形であれ、絶対に次に繋がるから!

内定まであと0日。

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