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NiziUと欅坂46/櫻坂46の決定的な差とは(アイドルの民主化とオワコン化の狭間で)

こんにちは。
私は普段、大手IT企業で新規事業立ち上げの責任者をしている櫻坂46ファンです。私のノートは、事業の構造やマーケティング戦略に着目して、日々気が付いたことを発信していくコンテンツ多めでお送りしています。

今回は、23日夜にNiziUさんが出演したしゃべくり007を拝見して、make senseだなーと思うNiziUと欅坂46/櫻坂46との結果の差を生む決定的な構造上の差を思いついたので記事にしてみます。

端的には、
・欅坂46は、Web活用で既存のアイドルファンの囲い込みを効率化した
・NiziUは、動画サブスクと短尺SNS活用でアイドルを民主化した
・それゆえ、瞬間的な拡散力では圧倒的にNiziUが優秀
・一方で、NiziUは持続的な成長に必ず難が生じる
という内容となっています。

以下、詳しく記載していきますので、是非ご覧ください。

欅坂46はYoutubeを巧みに乗りこなした

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こちらの図は、以前作成した欅坂46のファン獲得ファネルを分析した際のものです。

欅坂46は、中高生へスマホが普及しYoutube視聴が一般化した波に乗ったグループで、Youtubeのアルゴリズムを理解し、一度コンテンツに接触したユーザーがファン化するよう、非常に巧みなファネルを組み立てました。

ターゲット像を明確にした歌詞・MVと、ストーリーの連続性がある楽曲構成をすることで、当時はホワイトスペースになっていた「陽が当たらない生活をしていた中高生」にフォーカスして高効率にファンを獲得していったことが推察されます。

NiziUは動画サブスク活用でアイドルを民主化した

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まずざっくりとプロモーションの経緯を整理していくと

・1年間の期間をかけたアイドルグループ・オーディション番組として、動画サブスクサービスhuluをプラットフォームにNiziProjectを配信開始
・huluでの配信開始数か月後、Youtubeと地上波深夜帯に「虹のかけ橋」を後追いで配信開始
・番組が後半に差し掛かると、朝の情報番組「スッキリ」で特集を組まれる頻度アップ

となります。

何といっても、極楽とんぼの加藤浩次さんがキャスター、近藤春菜さんがコメンテーターを務めている情報番組「スッキリ」で知名度を一気に向上できたことが勝因となっている印象です。
huluは米国発サービスですが、日本事業は日テレとの共同で進んでいます。そのため、デビュー前から先行投資的に地上波を活用できたという背景です。

ただ、地上波でゴリ押ししたから売れたんでしょ?というのは分析として浅すぎだと思います。NiziUは、huluをはじめとした動画サブスクサービスの特徴に合わせてアイドルを再定義しました。

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一気見(binge watching)は動画サブスクサービスの特徴的なユーザー行動の一つです。地上波では一話を週1回のペースで消費していきますが、動画サブスクでは人気上位のコンテンツの、ある程度の話数を一気に見て消費するという行動がユーザーの常です。

したがって、一度人気に火が付くと爆発的な人気につながります。これが、コンマリメソッドや愛の不時着ブームをもたらしている動画サブスクの特色です。

さて、アイドルの魅力は「未熟なアイドルの成長」と言われています。
まだ若い「推し」メンバーがキャパオーバーの状況に直面し時には泣きながら、アイドルとして成長して有名になっていく姿を見て、オタクたちは熱狂するのです。

before動画サブスクではアイドルが成長する過程はゆっくりなので、ある程度の「オタク」気質が無ければ応援し続けることは難しく熱狂できません。

分かりましたね?動画サブスクの世界では、この「アイドルの成長」が短時間で経験できます。

一気見するコンテンツの中で、NiziProjectに出演するアイドルたちは早送りで成長していきます。成長する過程が一気見できるので「オタク気質」が必要となりません

ある種、NiziUはWebを活用してアイドル業を民主化したと言えるでしょう。もうオタクでなくとも、アイドルを全力で好きになれる時代です。

一定のコアファンを作れた後の拡散でも、NiziUは革新的です。それはTikTokをはじめとした短尺動画SNSへの適応でした。

Instagram/TikTokがYoutubeと決定的に違う点

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欅坂46がYoutubeを巧みに使いこなしたのは前述の通りです。
一方で、NiziUはtiktok上でのプロモーションを積極的に行っている様子がうかがえます。グループからのコンテンツ提供はもちろんですが、ユーザー自身がNiziUの楽曲に合わせて「縄跳びダンス」を踊る動画が多く投稿されています。

同じSNSでも、この主戦場の違いはどういった違いを生み出すのでしょうか。まずはSNSの特色から見ていきます。

InstagramやTikTokで驚くのは、リアクションの数の異次元な多さです。例えば先ほどのTikTokの動画には47万いいねがついています。いいね数/再生回数が30%としても156万回の再生をされている計算になります。
またInstagramも、よく仕事の付き合いでなんちゃってインフルエンサーに出会うと「私、Instagramでフォロワーが20万人いるんです♡」という謎のマウントを取られることがあるのですが、まさにそれです。

一方で、Youtubeで156万再生を取ろうとすると、かなり大変ですよね。
有名youtuberや芸能人の超人気chでようやく300万再生/動画で、期待できるリアクションの多さではYoutubeはTikTok・Instagramに後塵を拝す形です。

この決定的な違いは、①InstagramとTikTokは言語依存していない
②InstagramとTikTokは検索ネイティブではなくレコメンドネイティブ
の2つの要因で起きている
と思います。

①InstagramとTikTokは言語依存していない
多くの説明を必要としないと思います。Youtubeは何らかの形で言語で情報が伝えられることが主だと思いますが、InstagramとTikTokは投稿にテキスト0でも成立するSNSです。それゆえ、言語の壁を越えてコンテンツが見られるので、視聴者の量が文字通りけた違いになります。結果、リアクションも従前の言語に依存するメディアと比較してけた違いになります。

②InstagramとTikTokは検索ネイティブではなくレコメンドネイティブ
Youtubeも関連動画での視聴が多いのですが、あくまで視聴者が選択しないとコンテンツにはたどり着けない仕組みです。一方で、InstagramとTikTokは勝手にレコメンドし画面へ動画・画像を表示してくれます。
つまり、きっとファンになってくれる人へのリーチ力が、YoutubeとInstagramとTikTokとでけた違いになります。

したがって、InstagramとTikTokをファンの獲得チャネルとして活用できるか否かは、ファン獲得のスピードに致命的な差を生みます。

じゃあ、櫻坂46もInstagramとTikTokをやればいいんじゃないか?と思いますが、コンテンツの作り方の違いから難易度が高いと思うのです。

では、櫻坂46はNiziUのマネをできるのか?

私が一番好きな楽曲、「不協和音」のMVです。例えば、この楽曲のプロモーションにInstagramとTikTokは使えそうでしょうか?

そのままでは相当難易度高いですよね。

では、NiziUの「Make you happy」のMVはいかがでしょう。

いけそうですよね?

何が違うかと言えば、
・楽曲の一部を切り取った時に意味が通じるNiziUと、全体を通じて強烈なメッセージを伝えようとする欅坂46
・1人1人のリップシーンが多いNiziUと、引きで全体を映すシーンが多い欅坂46
で、欅坂46は切り売りしにくいコンテンツになっています。

Twiceもそうですが、韓国発アイドルは切り取りやすさを楽曲設計の際の一つの指標にしている感があります。キャッチーな動きや、ソロの多さです。
つまり、切り売りを前提にコンテンツを作っているからこそInstagramとTikTokの活用が奏功するのであって、純粋にマーケティングのチャネルを増やせばよいということではないのです。

では、櫻坂46がそういう楽曲の作り方をするかと言えば、限りなく可能性は低いでしょう。「全員で作り上げる楽曲」がマーケティング戦略の肝であり、楽曲の良さでもあるからです。

なぜ「全員で」が大事かは以下の記事で考察しています

それでは、いいこと尽くしに見えるNiziUの戦略ですが、デメリットや課題はないのでしょうか?当然そんなことは無いです。

NiziUの課題はファンをストックする仕組み作り

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NiziUは動画サブスクの「一気見」という特性を活用してアイドルを民主化し、InstagramとTikTokでもプロモーションが可能なコンテンツを制作し段違いの拡散力を手にしました。

一方で、これらは諸刃の剣です。

「一気見」はコンテンツ消費のスピード向上をもたらし、オワコン化のスピードまで早めています
上の画像は動画サブスクサービス・ネットフリックスの「こんまりメソッド」で米国にて爆発的なヒットを果たし、一時は時の人であったこんまりさんです。
(大変無礼な物言いではありますが)この方を覚えている人、まだ動画を見続けたいと思う人って少ないのではないでしょうか。

同様に、InstagramとTikTokは好みに合わせて常に新しいクリエイターのコンテンツがレコメンドされます。つまり、こちらもコンテンツが古くなっていくスピードが速いという特性を持っています。

つまり、拡散力に振り切った戦略を取っているために、ファンを貯める仕組みは弱いように見えます。

この結果何が起きるか。

それは、メンバーへの極端な過負荷と急激なオワコン化です。
現に、NiziUは既に1名のメンバーが体調不良で休業を表明、1名が一部ロケをお休みしています。

このスピードが続いてしまうと、他にも体調不良メンバーが増え、それをきっかけにオワコン化が始まってしまうでしょう。登っていくときには有利に働いていた仕組みが猛烈に逆回転を始めます。

それを防ぐためには、ファンをストックする仕組みが早期に必要です。

このストックの仕組みで本当に優れているのが欅坂46/櫻坂46です。
メッセージアプリの活用で、高いリテンションと既存ユーザーのアップセルを両立しています。詳しくは下記記事をご覧ください。

ちなみにNiziUミイヒちゃんは超好き

とまあ、色々書いてきましたが、NiziUのミイヒちゃんは本当にすごいです。是非一度この動画を見てください。惹きこまれます。

どうか、長くヘルシーに成功していってほしいものですね。

では、ご覧いただいてありがとうございました。

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