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劇セマ!ハードウェア系スタートアップの初期ターゲットはニッチで良い訳(事例付き)
こんにちは。
普段大手ITで新規事業担当をしている私のnoteでは、アイドルやニュースを見ていて気が付いたビジネス理論の応用や、リサーチしている内容を簡単にまとめたものを発信しています。
今回はアイドル関係ではなく、スタートアップについての記事となっています。ご了承ください。
今回は、訳あってIoTハードウェアがどうやって普及するかを調べる中で、なるほどなと感じたものがあったのでnoteにまとめています。
結論、超初期は「え!?」と思うくらい狭いユーザーに売っていくのが良い
ということが分かりました。
ソフトウェア系Web系と同じく、コアユーザーをしっかりと捕まえてPMFを目指すのが良さげです。
最初に調べる際に頭に浮かべていたイノベーター理論に軽く触れて、「Apple watch」「Peloton」「GoPro」の事例を見ていきます。
先ずは「新しいもの好き」「メリット訴求が効く人」を狙う(イノベーター理論)
秋元運輸倉庫株式会社様の画像を引用
知っている方も多いですかね。
商品の普及を語るときに、市場には5種類の人がいると想定して考えます。
ざっくり説明すると
イノベーター(2.5%):「新しさ」「新規性」で購買行動する
アーリーアダプター(13.5%):「自分へのメリット」があれば購買行動する
アーリーマジョリティ(34%):「メリット」「買う人が増えてきていてリスクなし」が明らかになってから購買行動する
レイトマジョリティ(34%):「みんな持っているから」で購買行動する
ラガード(16%):「もう新しい物しか売ってない」で購買行動する
といった感じです。
「リスクが無いこと」「周りにも使っている人がいること」を重視するアーリーマジョリティ以降へ普及することが製品の一般化に必要となりますが、それが難しく、アーリーアダプターまで受け入れられて死んでいく製品が多いので、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間をキャズム(死の谷)と呼びます。
とは言え、全く売れずに死んでいく製品の方が世の中には多いので、キャズム云々を考える前に先ずはアーリーアダプターまで確実に取っていく(=ユーザーペインに的確に対応し購買メリットのあるもの)を作ることに専念したら?というのが私の考えです。
そこで、今回は3つの成功事例でどのようにアーリーアダプターまでを獲得していったか見ていきます。
事例①:Apple watch
Appleだったら製品出せば売れるでしょ?
と思いますが、そんなこと無かったよ、というのがApple watchです。販売から2年をかけて、ようやくアーリーマジョリティを取ることができました。
初期、Apple信者が勝ってくれるだろうと思ったが売れず(!)、ウェアラブルの開発をしている研究者にフォーカスしました。これがApple watchで言うイノベーターです。
当時のイベント映像を見ていただくと、スペックと未来感を打ち出し、とてもではないですがマスに向けた売り方ではありませんでしたよね。
このままではマズイ。
そんななか、より大きなターゲットユーザーを探す中で目を付けたのが、腕時計マウントに疲れたビジネスパーソンでした。
とあるタイミングでプロモーションがスポーツ推しと、高級ブランドとのタイアップによるラグジュアリー推しへと変化しました。
米国のジム利用率は日本の5倍程度と、運動大国です。
特にビジネスパーソンは、朝ランニングしたり土日でフィットネスに励む人が多い傾向にあり、運動推しはビジネスパーソンへの訴求になりえます。
そして大事なのがラグジュアリー推しです。
この訴求をすることで、Apple watchは手に取ったことのない「スマートウォッチ」ではなく、値段が高めの時計の買い替え品として、高級時計の代替物になりました。
ビジネスパーソンならきっと経験があると思いますが、時計マウントめんどくさいですよね。無駄に高いし、興味もないのに出費がかさむ。
そんな気持ちを捉えたのがラグジュアリー推しに転換したApple watchでした。
まとめ
・イノベーターとアーリーアダプターに連続性は必要ない
・アーリーアダプターには「メリット」訴求なので、既に支出があるもののリプレイスを狙う
事例②:Peloton
Pelotonは米国で流行っているエアロバイク+フィットネス版のNetflixです。上場もしています。
約20万円のモニター付きエアロバイクを買い、有料のフィットネスプログラムを購入して利用します。特徴は、同じプログラムの仲間とビデオチャットしながらワークアウトできて、自宅でもエクササイズのプログラムに参加しているような感覚になれる点にあります。
「ジム通いよりコスパが良い」というメリット訴求でアーリーアダプターの獲得は見えているものの、そのまま売り出すとイノベーター(最初のユーザー層)獲得に難を抱えているのが目に見えている商材ですよね。
Pelotonはこのハードルをファンコミュニティの活用で乗り越えました。
Peloton初期のコマーシャル動画です。
こういった半分タレントのような、熱狂的なファンが既についているインストラクターを主軸としてプログラムを組み立てていくことで、ファンコミュニティを丸っとユーザー化することに成功しました。
デジタルコンテンツの販売では典型的な手法ではありますが、ハードウェアの文脈でファンコミュニティを活用した集客を行った点が勝因です。
体験している動画がこちらになりますが、確かに臨場感があって楽しそうですよね。フィットネス版のコンテンツSaaSでもマネタイズしているのですが、解約率も非常に低い水準だそう。
一回登録した後に離脱しにくいプロダクトをしっかり作ったうえで、ファンコミュニティという飛び道具を使って初期集客したのですね。
なので、インフルエンサーコラボすればいいんだ!という単純な話ではないです。
まとめ
・熱量の高いコミュニティはイノベーターとして初期集客に使える
・ただし、アーリーアダプター集客の明確な戦略と、リテンションし切れるプロダクトの作成が必須
事例③:GoPro
偶然の産物とは言え、本当にうまいなと思うのがGoProでした。
GoProはアクションカメラと呼ばれるカテゴリーのカメラで、小型・軽量であることからスポーツをしながらその様子を撮影したり、動きの激しい動画を取ることに適しているカメラです。
ふわっとしたニーズは有りそうだけど、流行らせるのが難しそうなこの商材ですが、GoProは熱量の高い課題を抱えている小さなターゲットにフォーカスすることで、この課題を乗り越えています。
まずはこちらをご覧ください。
GoProが最初に攻略したのはサーファー達でした。
創業者の趣味がサーフィンで、
・自分で工夫して道具を作って動画を取ろうとしているサーファー
・自分自身、上手くパフォーマンスを取れないことに対するいら立ち
を昇華し、インスタントカメラを腕に装着できるバンドから始まったのが、GoProです。
サーフショップから販売が始まりますが、サーファーたちのコミュニティで動画を見せ合う文化があったことで、リファラルで広がっていきました。
つまり、一見ふわっとした課題であっても、コミュニティによっては非常に熱量が高い課題だったりするわけです。
GoProは、その熱量の高いポイントを見つけて、ユーザーに寄り添って改善を進めていきました。
そして、この方程式は他のスポーツでも成り立ちます。
こちらをご覧ください。
こんな形で、GoProで撮った動画が各スポーツのコミュニティでサーフィンと同じように広まっていきました。
言葉で「迫力のある動画が撮れます」と言っても響きませんが、自分が大好きなスポーツで、自分と同じアマチュアが素晴らしい動画を撮っていると分かれば買いたくなっちゃいますよね。
この広がり方がハードウェアなのにWebっぽい方法で、実にきれいだなと思います。これは、もっともっとマネされて良いですよね。
その後、GoProはこの仕組みでアーリーアダプターまで取り終わってから、TV通販を活用してアーリーマジョリティへとユーザーを広げていきました。
まとめ
・イノベーターとして、課題解決への熱量の高いコミュニティを捕まえる
・課題解決をリファラルしてくれるような仕掛けをプロダクトに内包する
デカい市場を語る前に、熱量の高い市場を捕捉せよ
3つの事例を見ての示唆は、
・熱量の高い狭いコミュニティを最初に捉える
・必ずしもイノベーターとアーリーアダプターに連続性は無くて良い
・でも、自然にリファラルする仕組みがあれば最強
の3点ではないでしょうか。
ハードウェア系スタートアップというと、初期投資が大きくなりがちなので「市場規模が・・・」「アップサイドが大きいところじゃないと・・・」とか考えがちですが、そんなこと考える前に熱量高い市場に入り込めって話ですね。
以上、まとめレポートでした。
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