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鋸山に行って来たよ-34(やっと?最終回)

これまでのお話

9時20分、時間通りに電車がホームへとやってきた。その写真を撮りたかったのに、たぁとくだらない会話で盛り上がってしまい、シャッターチャンスを逃してしまった。

電車から降りてくる人は少なかったので、自分でドア開閉ボタンを押してドアを開く。中に入るとほとんどの席が埋まっていて優先席だけ空いていた。
私は座ろうとするものの、たぁはいつもこの席に座るのを嫌がる。

「じゃぁ、どうするの」

そう言うと座った。必要な人が来た時にどけばいいのさ。

強風のせいで花粉などが飛び散っているのか、アレルギー性鼻炎の私は鼻水が出っぱなし。マスクの内側を誰にも見られないことをいいことに、両方の鼻の穴にティッシュを詰めている。
マスクをつけた顔はすましているけど話せば鼻声。こんなことして電車乗っている自分が滑稽に思えて、人が見ていない隙を狙ってマスクを取って両鼻穴ティッシュでたぁとツーショット。彼は呆れながらも笑って写真に写ってくれた。

いくつか駅を過ぎるとおじさん、おばさんが乗ってきた。本を読んでいて気づかなかった私はたぁに肩を叩かれ、急いで席を立つ。

「悪いからいい、いい」

「座ってください」

それだけ言い残して、隣の車両へ移動した。近くに立つと座ってもらえない可能性があるし、変な空気が流れるのは避けたい。譲り合い精神を受け入れてもらうためにもちょっとした気遣いは発生する。

窓から流れる景色を見ながら今回の旅を振り返えろうとした時、頭の中に声が聞こえてきた。

「これで終わり。辛いことは全て終わる」

たぁと私の生活は180度変わった。その予兆を含めるとそれから約9年もの月日が流れた。その間、私の心はその変化を、状態を受け入れることがうまく出来ずに一人でたくさん悩んだ。悩まなくていいこともいっぱいいっぱい悩んで考えて「幸せ」を見失っていたらここ数年で急にそれらを受け入れることが出来るようになった。

次のステップへと進む時が近くなっていることを、私を見守るエネルギーが教えてくれているんだろう。

今回の旅ではたくさんの変更と後の祭り的な気づきがあった。

歩いている途中に思ってたのとは違う道を進んでいることに気づいて、来た道を引き返した。

ロープウエイに乗ろうと思ったら、日本寺に利用料を支払う必要があることがわかり教えてもらった下山道を歩いている途中でその道が明日登りたかったルートだと気づいた。

翌日、ロープウエイで山頂まで行ったのに大仏様を見ようと階段をどんどん下っていったら、麓近くの入り口近くまで来てしまい、ハイキングを続けるために今度は歩いて山頂まで登り、自らの情報収集不足を悔やんでいたらたぁが励ましてくれた。

のんびりマイペースに歩いたおかげで目的の電車は15分前に行ってしまい、次の電車が来るまで35分間待った。

たくさん遠回りしたけど、やりたいを全部出来た私。

いつも予定通りに行かないのが私たちの旅。だけどまた私たちは旅に出る。

そう思ったら、心に熱いものがこみ上げてきた。

これで全部終わり。辛いことは全部終わってあとの人生、幸せしかないんだね。

嬉しい、嬉しくてたまらない。

それが本当かどうかは分からないけど、なぜだか私はそれを強く信じることが出来た。


帰りは電車を三回乗り継ぎ、行きよりも時間がかかることが分かっていたので、本だけでは足りないと思って事前にル・ポールのドラァグレースをダウンロードしていた。
折角、準備したのに見ないのはもったいないとイヤホンを耳にさして動画を見ていると、隣に座った男性が本を読み始めたので邪魔にならないようにと画面をたぁのほうに傾けながら見ていたら、カラフルな映像が気になるのかチラリズムを隣から感じる。そして私も何を読んでいるのかと気になり覗いてみると、どうやら漢文らしきものが開かれていた。
勉強のために難しい本読んでいるのに、隣でお気楽リアリティTVを見られたら気を取られてしまうのも分からなくもないよ。

iPadを膝の上に乗せて見ていたせいで画面と目の距離が近く、しばらくすると目に疲労を感じたので閉じると、ドアが開くたび冷たい風が流れ込んできたことに意識が働き、寒さを覚えて二人とも一枚羽織ることにした。


長い電車の旅を終え、最寄り駅に到着し電車を降りるとその寒さにびっくり。
同じ関東でも南北でこんなにも温度はあるもんなんだね。春を感じられた昨日までの天気に感謝だ。


14時頃、ひょんなことから路線情報アプリを開いて帰ってきたルートを調べると、現在、強風のため内房線全車両が運航中止と表示された。

えっ!?

最初の予定では浜金谷の港でランチを食べてから午後、電車に乗って帰るつもりだった。だけど朝、宿でお湯に浸かりながらいろいろ考えていたら急に帰りたくなって予定を変更した。そのお陰で正午には家に戻って来れた。もし、最初の予定通り行動していたら、私たちは今、どうしていたんだろうか。

私の気が変わったんじゃない。教えてもらっていたんだ。

私を守ってくれる、私の世界を作り上げてくれているすべての意識が私の予定を変えてくれたんだ。

そして旅中はずっと快晴に恵まれてロープウエイにも何の心配もなく乗せてもらえた。

「これで終わり。辛いことは全て終わる」

今回だけじゃない、私はいつだって守られてきていた。
そのことにずっと気づいていたけど、自分の頑固な思いから願いを叶えようと必死になって自然やガーディアンが導く世界を拒否しようと試みたことがある。まるで自分の思い通りに世界を変えることが出来るようにと。だけどその度に苦しかった。苦しくて、どうして実現できないのかと悩んだこともあった。だけど今、私は与えられている状態を受け入れること、そして未来は100%決められないことを理解出来るようになった。導いてもらえる世界を生きられるなら、辛いことは終わるんだ。

残りの人生、幸せしかない。

この先もずっとそれを完全に信じ込めるほど私の心は強くないけどその事実があることだけは胸に刻んでおこう。

日本寺のお御籤からたくさんの勇気をもらった。教え通り西へと絶対に旅しよう。

これから春はどんどん深まり、各地で花の見ごろもやって来るだろう。

山に登ろう。

旅をしよう。

そして今を生きていこう。


半年以上に渡って鋸山の旅にお付き合いいただきありがとうございました。その後に向かった西の旅について今年中の出版を目指して現在、執筆中です。完成した際はまたご報告させてください。



無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。




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