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鋸山に行って来たよ-12

これまでのお話

カップルに夜狭い階段での写真撮影が終わり、今度は私たちが下る番。
下っていると目の前に4人以上の団体が現れた。

待ってくれていると思うと焦っちゃう。

だけどここは岩のはざまに出来た滑りやすくて足場が悪い階段。いそいそと降りて最後の段で足を滑らせてしまった。

ポールに掴まって難を逃れた。

と思いきや、足はそのまま滑り、ポールから滑べった手が支柱にぶつかり激痛が走る。それでも掴まろうとするから手だけが残り“囚われた宇宙人”状態。

「ゆっくり」

目の前のおじさんが言ってくれたけど、時すでに遅し。

恥ずかしいわ。

カップルのように待たせたくないという思い、そして配慮に欠けた「まだ足りないんじゃないですか」と彼に投げかけた言葉がカルマとして戻ってきたのかもしれない。

反省。

階段をどんどん下ると大きな地図と共に標識が見えてきた。そこには分岐Cと書かれている。地図で確認してたまげる。

「この道、私たちが明日登ろうとしていた道じゃん」

それは関東ふれあいの道だった。

「騙されたっ!」

つい叫んじゃったけど一体誰にだろうか。

お寺の方は丁寧に道を教えてくれただけなのに。

自分勝手にイラつく、小さな心の器しかもたない私のことはさておき、下った道を明日また登るっていうのもなんだかなぁ~。

余計な損得勘定が働き始め、頭がなにやらカチカチと動き出す。

「明日、ロープウェイで直接日本寺に行こうか」

「OK」

今を生きるたぁは予定変更に柔軟である。いつも助かります。

関東ふれあいの道、なだらかな土道で歩きやすい。

私の好きな道だわ💛

両脇を柵で守られた道からは久々に見える海景色。

濁った私の心を澄ませてくれそう。

「臭い」

後ろを歩くたぁが言う。

「おならしたでしょ」

「してないよ」

「いやっ、したよ」

いやっ、本当に私してないんですけど。

「奥さんにそんなこと言ったら失礼でしょ」

「さっきのピザカップルに行った言葉とどっちが失礼?」

「たぁの言葉に決まっているでしょ。だって私してないし、本当にちょっと登っただけじゃピサ消化できないじゃん」

他人が聞けばくだらない・・・・・・だけど当の本人たちはめちゃくちゃ笑いながら自然に囲まれた山道を行く。

自然って聞き上手だから、なんでも引き出してくれちゃうわ。

あっ、嫌な痛み。

階段を下る際に左ひざに痛みを感じた。
これは登山帰り、たまに電車で座った後に階段を下ると急に起こる激痛に似ている。

平坦な場所を見つけて軽くストレッチしながら今日の道を振り返る。険しい道と階段が続いて姿勢が崩れながら歩いたことが原因かもしれない。

ハイキングは明日が本番、今からこんなんじゃ心配だよ。とりあえず姿勢に気を付けながらゆっくり歩くか。

先は片面が急勾配になり、オレンジのロープで守られた道を行く。尾根道のように両サイドが開けた細い道で他に誰と出会うわけでもなく気持ちが良い。ちょっと難を付ければ道がぬかるんでいたり石段が丸くて滑りやすいけど、ずっと人に囲まれながら歩いてきたからのんびり自分たちのスペースがあることが嬉しい。

前から子連れの家族がやって来た。お父さんは小さな子を抱えている。後ろを歩くママはふわふわロングスカートにバレーシューズのような靴でぬかるみを気を付けながら進んでいる。

「軽装だったね」

「本当に」

たぁも驚いた様子。

港に遊びにきたついでに立ち寄ったのかな。

彼女の綺麗なスカートが汚れませんように。

再びオレンジのロープが出てきた。

その先を見てみれば岩だけが残り木々が見事に投げ倒されている。

台風の痕が嫌というほど目に入ってくる。倒された木々の根は表に出ている。土の中で絡み合う木の根、一つが倒れたら鎖のように繋がる隣の木の根も倒れ、ドミノ倒し。それが地滑りを生む。

「この木、しがみついているよね」

たぁが指差す方を見ると、ロープのように長細い蔓が隣の木に絡みついている。

「本当だ。地崩れの時に『あぁ』って手を伸ばして、それがそのまま残っているみたい」

「そうそう」

それはうまく命だけは繋げたのか、それとも助けを求める手だけを伸ばしお空へと旅立ったのか。注意を払って周りをいればそこには小さなストーリーは存在するものだ。

前後には木々が成長しているのにここだけ枯れて倒れた木だらけ。

片づけを済ませ、道を作ってくれた管理の方に頭が下がる思いでいっぱい。

ハイキングを安全に楽しめるようにいつもありがとうございます。

感謝が心に宿ったら歩こう、歩こう、私はげんきぃ~。


【無空真実よりお知らせ】

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

この度Amazon Kindleより電子書籍を出版いたしました。

私のんとたぁが彼の母国であるニュージーランでハイキングやキャンピングカー旅を楽しんだ旅行記です。

日本とは異なる環境下で旅する二人。
今回も自然に触れながらゆっくりとした時間を過ごしていくことで頭の中のモヤモヤを解放へと導くことが出来ました。

夫婦喧嘩やとんだすったもんだ、瞑想での気づき、そして自然が与えてくれる豊かな時間まで、模索して生きる二人の旅をどうぞお楽しみください。

また出版を記念してニュージーランド旅の数カ月に旅したスペイン南方旅、「アンダルシアを駆け巡れ」を11月22日17時から11月26日16時59分まで無料でお読みいただけます。どうぞこの機会にご覧ください。


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