伊豆天城山でハイキング-37
海沿いの道をまっすぐ車で一分、歩いても数分の場所にある広場に到着。中央には墳泉塔があり、その周りにお湯が流れて足を浸かれるようになっている。
ここは熱川ほっとぱーく、混んではいないものの既に数人の人が楽しんでいる。
「あっ、タオル持ってくるの忘れた」
ホテル預けたばかりのバックの中に入っている。
「これ使っていいよ」
ささは手拭いを一枚貸してくれた。
ありがとう、これで安心して浸かれます。
お湯は適温。浸かったときは多少の熱さを感じるものの、次第に慣れてくる。
見上げればちょっぴり雲をまとった空、前を向けば波がちょっと強めな海が見られる。こんな環境で足湯を楽しめるのも伊豆ならではこのことだろう。
ゆとりをもって交互に座り、のんびりとした時間を過ごし、しばらくすると体がポッポしてきた。
広場には足つぼ用の石が敷き詰められていて、ささがその上を歩く。
「大きい石のほうが痛い」
ちょっぴり汗をかいてきた私も試しにとばかり歩いていると本当だ。
小さい石のほうが鋭く痛いかと思いきや、ぎっしりと並んでいるだけに体重を分散して支えてくれる。だけど大きい石は重さにまかせてずっしりと足に入り込むから痛さが増す。だいたい痛いのは足の中央と下部。改めて消化器系が弱いことを知る。
足を拭き終わると、ささがそれをもらおうとした。
「後で洗って返すよ」
今年の夏、仲良くしてもらっているマンションの管理スタッフさんが尋ねてきた。
「レディーガガ好き?」
なんて、質問だ。
それを聞いたたぁは嬉しそうに私の方を見る。
「好きですよ。カラオケで歌うくらい」
最近の歌はあまりよく知らないけど、昔はよく彼女の曲を耳にして、部屋で踊ってはたぁに観客になってもらっていた。
「よかった。9月に彼女のコンサートがあるんだけどチケット二枚買ってもらえないかな」
聞けば、当たらないと思って二日連続で申し込んだら両方とも当たってしまったらしい。
チケットは一枚18,000円、決して安くない。だけど彼は私たちが渡航中、急に帰れなくなった時などいろんな場面で助けてくれる。少しでもお役に立てれば(それがレディーガガのコンサートならば)と譲ってもらうことにした。
その話を初日のささ家の車の中で話すとささが言う。
「ららもお願いがあるんだよね」
うんっ?
「あのぉ、私もチケット買いすぎちゃって」
聞けばツーチェロズ(2CELLOS)のチケットを家族全員で申し込んだところ、こちらもまた全部当たってしまったらしい。決済方法によってはキャンセルができたのに、ららが誤った決済方法を選んでしまい、キャンセルができなくなってしまったらしい。
大事な家族のお願い事だ。
「(もちろん)いいよ」
「チェロを弾くなら、座って見られるかな」
レディーガガのコンサートでも踊り狂う私の横で、踊ることなく手を挙げることなくじっとただステージを見ていたたぁは言う。
「うん、座って見られるよ」
「なら、いいね」
私たちはコンサートにはいかないけど、格闘技を観戦しに行く。その時、興奮してしまえばつい立ち上がることもあるけど、座ってみるのが基本であり、暗黙のルールだ。彼はその状態でエンターテインメントを楽しみたいらしい。
コンサート当日は11月22日、いい夫婦の日であり、ささとれんの結婚記念日でもある。この日に会うことが決まっていたからこそ「洗ってお返しする」という言葉出てきた。
「じゃぁ、そうして」
あぁ、あいよ。
マッサージ同様、忘れているよね。
ららがハイキング用のパンツを持ってくるのを忘れて私のを貸して、泥まみれのそれはそのまま返ってきたことなど。
「いいよ。別にそのまま返してくれれば」
その言葉をちょっと期待したけど、自ら「洗って返す」といった身、その言葉を取り消す術を私は知らない。
11時15分、予約したお食事所「錦」へと向かう。お店は駅から海へと下る道の途中にあった。既に数組が並んでいる。
「夏はもっと混んでいるんだよ」
らしい。
隣には大きな墳泉塔があり、ボーボーと白い煙を上げている。塔の下には黄色い硫黄の塊と独特の匂い。
温泉地だねぇ~。
隣に弁財天さんがおられらので、私としては太っ腹の100円を賽銭箱に入れる。
「楽しい旅をありがとうございました。後一泊どうぞよろしくお願いします」
よしっ、これで最後の最後まで楽しめるね。
〈余談〉 ららから譲り受けたツーチェロズのコンサート。彼らを知っている方はご存じだろうが、チェロといってもクラブミュージックが弾かれ、それはそれはみんな踊りまくり、私ももちろん踊り狂い、たぁはこぶしを握ったまま一人席に座って、見えないステージへと目を向けて前席の人の背中を眺め続けていた。
主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう
これまでのお話
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