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才能のなさに気づき、描くことへの決心がついた
今日は作品のはなしを。
![](https://assets.st-note.com/img/1686315137889-86WfqecfrB.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1686318087207-K2Un7uopFS.jpg?width=800)
この作品は
【光の標本】
というシリーズで
ガラスやアクリルの表面に
透明なメディウムで筆跡を施す
方法で作られている。
透明なこの作品たちは
置かれる場所によって表情を変える。
天候や、
時間帯によって
![](https://assets.st-note.com/img/1686315675855-46RSYp6qUJ.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1686315652511-FgVJqtzZkH.jpg?width=800)
その場その場に存在している「光」を
観賞するために、生まれた表現だ。
今のかたちに至ったのには
僕なりのまわり道があった。
_”上手い”だけではいけないと言われ
個性が欲しい。
美大に入った頃の僕は
毎日そう思っていた。
絵が得意で、
描くことがすきだという理由で
美大に入ったものの
そこでは”絵が上手い”なんてものは
個性でもなんでもなく
「自分にしかできない表現」こそが
求められる場所だった。
これまでがむしゃらに描いていた自分は
その当たり前すぎる事実に
気が付かなかったのだ。
「あなたにしかできないことは何なの?」
そう聞かれた時に
僕はあまりに平凡で、
周りを見れば個性的な作り手ばかり。
考えれば考えるほど
逆立ちしても彼らのような輝くものは
自分からは出てこないのがわかり
みじめで恥ずかしく、情けない気持ちだった。
そうして在学時にすっかり打ちのめされてしまった僕は
大学を卒業してからは自分で描くことはやめた。
それでも、アートから離れることができず
カフェギャラリーで働くことになるのだけれど…
↓
_転機となった作品との出会い
僕が再び
ものを作りたいと思えたきっかけは
ジェームズ・タレルの作品だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1686318349037-gaqwJBNB07.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1686318360279-F7eGcT7CMA.png?width=800)
巨大な構造物で空を切り取ったこの作品は
ただただ大きな、色が浮かんでいるように見える
初めてこの作品を見た時、
一体どれくらい長い時間
この大きな四角を見上げていただろうか。
しばらくぼぅっと空を眺めていて、
ふと視線をずらすと
四角い青の中に
なにやら小さな点が動いている。
鳥だ。
ハッとして
自分が空を見ていたんだ、
ということを思い出す。
…そして静かに驚く。
こんなふうに
思考を手放し、
ぼーっとすることに
身体をゆだねることができたのは
こんなふうに
空を見上げたのは
いつぶりだろうか…としんみり感じる。
また、
壁面に目をやると
細かな傷やよごれが見えたりして
空を眺めているときには
気づかなかったものが
順にどんどん見えてくる。
全体をぼんやり見渡すことでわかるもの
細部を細かく見すぎてしまうと見逃してしまうもの
とても示唆的だ。
______
その時の自分に足りなかったものを
感覚的に知ることができた。
僕は、気づかないうちに
ぼーーっとする時間を
なくしていたのだ。
色んな壁にぶちあたり
自分の力でどうにもできず
頭で考えるあまり心身がパンクしてしまった
そんな時期に、タレルの作品に出会った。
美大時代の自分は
ただの空を見上げて
感動するなんてことはなかったと思う。
優れたアートには
見る者が勝手に自分の人生に重ねて
作品の向こうに何かを見つけてしまう
力があるのかもしれない。
その経験のあと、僕は
こう考えるようになった
内側から湧き出るものはなくても
” 自分の外側にあるものなら表現できる "。
![](https://assets.st-note.com/img/1686317131811-g7YfIOmnt5.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1686317141071-nFNsaxmvWc.jpg?width=800)
"そこにもともと存在しているけれど
多くの人が見過ごしているもの"
そうしたものに目を向ける
きっかけになるようなアート
それこそが僕のやりたい
表現だったのだと気がついた
そしてそれは
観光業の仕事にもつながっていく。
![](https://assets.st-note.com/img/1686317151172-NVbvpnkdPy.jpg?width=800)
今の時代、周りを見渡すと
多くのひとが
明らかに疲れすぎている。
向き合わないといけない
問題が、痛みが
多すぎることが原因だと思う。
僕自身も同じ状況だからこそ
ぼーっとする時間を取り戻す必要があるし
痛みから遠ざかることを目的にしたアートを
求めるひともどうやら多いようだ。
美大時代、「人と違う部分」を探してもがいていた僕が
今は「人とおなじ部分」を探して作っている
アートが自分にもたらすものは
とても奇妙で、はかり知れない。
【国内でタレルの作品を見るなら】
【僕の作家活動はこちら..】
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