マガジンのカバー画像

詩の場所

92
小山伸二の詩の置き場所です。
運営しているクリエイター

2017年12月の記事一覧

聖夜

聖夜

歌はどこにあるのだろう
ぼくらのことを見ているんなら
そこから降りておいで
そう呟いた彼も
いまは町から失われてしまった
美しい電飾から逃げるようにして
バスがギアをあげていく
十二月の夜に降り立ったぬけ殻たちを残して

あしたの天気を気にしない
北の海から流れて来る者たち
枯葉のような小舟に命をあずけて
汚れた手が機械をいじる
海峡を流れて漂着した者たちに
区別をしない神さま
パンとテレビをあげ

もっとみる
金曜日の朝に

金曜日の朝に

古い銀杏の樹がたくさんの黄葉を散らすキャンパス
ぼくたちは敗北のゲームをふりかえるみたいに
とぼとぼと教授の部屋に向かう
やることなすことすべてが溜め息になる
冬の空にとけてしまう金曜日の朝

忠犬八と老教授の銅像を左手に
古ぼけた建物
暗い階段と迷路のような廊下を通ってノックする
途方もない数の本と資料に囲まれて
しずかな部屋で初老の秘書にうながされて
ぼくは仲間たちと椅子に座り
教授と話を

もっとみる