砂漠 伊坂幸太郎
「伊坂幸太郎作品にハズレなし」
一言で感想を言うならこれです。
リアルを生きる私たちは幼少の頃から例年通りの行事を指示され、大人達に決められてきました。
引かれたレールの上を走る日々。
しかし社会あるいは新しいステージに行けば、これまでとは違ってきます。
そこはまるで「砂漠にポンッと放り出されて、あとはご自由にどうぞ」という具合のよう。
主な登場人物5人は新大学生。
新たなステージを手探りで進んでいきます。
これから未知の領域に進んで行こうという道のない道が「砂漠」を彷彿とさせる。
そう、この小説の題名は「砂漠」。
「道無き道の地図をくれ。」「人生の攻略本を下さい。」
と思うのは心情でしょう。
リアルな人々が頼りにするのは占い、宗教、情報商材… と、指標は様々。
伊坂先生の出す答えはなんでしょうか⁉︎と読み進めていけば
『結局のところ砂漠のような広大な土地を悶え進んでいくことこそが人生ということなのだよ。』
…ほぅ。
再び砂漠に放り込まれた感覚に陥らせてくれる大先生を私は嫌いではない。
次に本作品によく出てくる
「砂漠に雪を降らせる」
のフレーズに注目してみた。
ここでももちろん「砂漠」だ。
このフレーズを勝手に解釈するとこうなる。
「陳腐な人生、生活を劇的に変えたい」
「起こり得ないことも信じていれば叶う」
と願いを込めた場面で使われることからこのような解釈をしてみた。(そのままである)
この物語の中には「砂漠に雪を降らせる」ような「嘘でしょ?」と思う場面も多々ある。
そして、ありふれた人生に悩んでいるリアルな人たちに向けたメッセージにも聞こえなくはない。
時は立ち2018年、実際にサハラ砂漠に雪が降ることになるなんてこの当時の先生、読者は思いもしなかっただろう。
「過去にとらわれてはいけない」と本書でもあるが当時の読了後であればどれだけ盛り上がったことだろうと後悔の念にかられる。
さらにもう1つ、2005年の単行本発行ということでリアルな世界ではイラク戦争真っ只中。
当時のアメリカ大統領に疑念を持つ人は多い。
伊坂師匠もその1人なのかも知れない。
そんな大統領に物申したい「プレジデントマン」のキャラを縦軸で登場させている。
ここでも中東の「砂漠」が絡んでくるわけだ。
そういった隠し絵のような要素が伊坂幸太郎大先生の作品には多く、発見していくのがとても面白い。
(別に隠してはいない)
さて、イラク戦争も終わり2020年4月現在。
世界はとても平和だ。
外では小鳥が鳴き、子供の楽しそうな声。
「よーし。5月の連休は好きなところへ連れて行ってやるぞー」
「わーい。パパ大好き!」
全ての人の衣、食、住、が満たされ行動の制限もない。
とてものどかな毎日…
なんてことは、まるでない。 ←出ます
近い未来に「砂漠に雪を降らせる」ことができるのかどうか。
それは私たち1人1人の行動にかかっている。
“「目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ」”
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