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朗読フリーの作品

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こちらにある作品は基本朗読フリーとなっています。 ※朗読する際はこちらのアカウントにDMでご連絡ください。(https://twitter.com/jamasin6) 語尾の変更…
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#怪談

「青い数珠を持った老女」

これはとある住宅街での話。
私が長期間の水道工事の警備員( 正しくは交通誘導警備員というが、ややこしいので、警備員とする )としてを配置されたときのことである。
その住宅街は小さな山を切り開いて作られており、そのせいで緩急様々な坂で囲まれている。
こういう住宅街ではわりとよく、その一角に小さな墓地があったりする。
おそらく、昔からそこに住んでいた人の墓地。
夜深くともあれば、不気味に映るかもしれな

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霊園の地下駐車場(朗読:絢河岸 苺様)

これは知り合いの警備員Yさんから聞いた話。

K県のとある場所に小高い山と山に挟まれた霊園がある。
ふもとの部分に休憩場やメモリアルホール、事務局、駐車場などがあり、お墓は斜面に沿って段々になっている。
中規模だがそれなりに大きな霊園だ。

春彼岸のある日、Yさんは駐車場の案内整理をするためにその霊園に来ていた。
次々に訪れる利用者を駐車場の空いているところに案内したり、外で順番待ちをしてもらった

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陽光

その日の夕方、私は疲れ果てた体で帰宅しました。

都合よく体調を崩した同僚のせいで前日の夜勤から続けてそのまま日勤に。とうの彼女は課長の部屋のベットでさぞやスヤスヤと寝ていたことでしょう。

私が眠りについたのと自室のベットに倒れこんだのとでは、どちらが先でしたのか。辛うじて化粧だけは落としたはずでした。

ふと目を覚ますとカーテンの隙間から日の光が漏れていました。

疲れすぎて朝まで寝てしまった

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充分ではない(短編怪談)

祖母と私はともに霊感らしきものがあった。

あくまでそれは「らしき」ものだった。

例えば道を歩く血まみれの女性の幽霊が見えたりとか、首のない青年が駅のホームで頭を探していたりとか、そういう光景が見えるわけではない。

どことなく、あそこに行ってはいけない気がするとか、今日は大事な電話(だいたいの場合は悪い知らせ)がくるから外出しない方がいいとか、そういうことが分かるだけだ。

じゃあどうすればい

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短編怪談「彼が悲しそうな理由」

久しぶりに会った友人は学生の頃とは打って変わって寡黙で雰囲気も暗かった。
一体、クラスのムードメーカーになにがあったのか。私は彼の話を聞くことにした。
彼は悲しそうな顔で話し始めた。
「大学の時に事故に遭ってさ。頭を強く打ったらしくて、一命は取り留めたんだけど。」
そこで一度言葉は途切れた。
「後遺症があるのか?」
心配そうに聞く私に彼は答える。
「そう……なるかな。その事故以来、幽霊がね見えるよ

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メリーさんの〇〇 (朗読:絢河岸 苺様)

メリーさんの電話。
有名な話ですね。
でも、いまは固定電話がない家も増えてますし、あってもIP電話だとかで、昔と勝手が違ったり。
だから、メリーさんもいなくなるだろうって私は思っていました。
ところがこの間、小学校2年の娘が私に聞くんです。
「メリーさんって誰?」って。
私もいきなりなんだろうと思って、どういうこと?って聞いたらこんな話を聞かせてくれました。

これは娘がクラスメイトから聞かされた

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メリーさんはいま

※上記の企画にて空亡茶幻様にご朗読いただいています。ご興味のある方はよろしければ動画と併せてご覧ください。

メリーさんはいま、人間として暮らしているらしい。

俺はY。いま工事現場で警備員をしている。
「メリーさんね。あの子だったら、この前、会ったよ。元気にしてた」
隣にいたオッサンが突然そんなことを言いだした。
なんでそんな話になったのか、たしか飲み屋でどーでもいいことを話しながら店にあるテレ

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雪の降る土地には住まない

これは友人のBさんから聞いた話だ。
彼女が通った高校にある噂があった。

『雪の降る日に屋上に行ってはいけない。
明日に飛ばされてしまうから。
明日に飛ばされて、昨日に帰ることはもうできない。』

多くの生徒、少なくともクラスメイトはこの噂を知っていたはずだとBさんはいう。
ただ、そもそも屋上に行くための扉の鍵は締まっているし、大雪の日であれば休んでも大目に見てもらえるくらいには緩い学校だった。

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やまがえし

賞金付き怪談募集企画『集まれ!怪談作家』第5回目発表会※上記の企画にて、1位をいただいた作品となっております。
動画の32:54より当方の作品を朗読をしていただいています。
ご興味のある方は、よろしければ他の方の作品、ともども聞いていただけると幸いです。

その日も私は暑い中での仕事を終えて、へとへとになりながら簡単な晩御飯の用意をしていた。
夏はなかなか去ろうとせず。暦の上で秋が来ても暑い日が続

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ある村の記憶(朗読:絢河岸 苺 様)

私が成人するまで住んでいたのはいわゆる、都会の田舎だった。
生活の一通りは近所で十分に揃い、東京が近いのが便利。
ただそれだけのところだった。
そこを離れて二十余年経つが、遠くに引っ越しわけでもない。
今でもたまに通りがかるが相変わらずあまり開けてはいない。
子どもの頃はそれがさらに顕著で、近所に養鶏場や小さな果物畑がところどころあり、最寄りの駅からは水田が見えた。

小学校低学年のころ、私は今よ

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黒い男(リレー怪談:空亡茶幻様)

三年前、大崎さんは一種の睡眠障害に悩まされていました。
入眠するところまではいいのですが、途中で覚醒してしまいぼんやりとまどろんでいると足からだんだん身体が動かなくなり金縛りになるのがお決まりのパターンでした。
そして金縛りにあっている最中、彼の寝ているベッドの傍らには男が立っていたのだといいます。
ぼんやりとした真っ黒なシルエットで姿だけでは男性とは判断できないのですが、毎回そのシルエットは大崎

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墓地の警備(局長の話)

私が遠縁のあるおじさんがから聞いた話。
おじさんは数年前まで、とある霊園の事務局で局長として働いていた。
当時も今も夏になると肝試しをしに墓地に来る若者たちがいて、また、そういう人達に限ってゴミを散らかし放題で帰っていくのだそうだ。
肝試しそのものももちろん困った話ではあるのだけれど、ゴミが一番の悩みの種だった。
場所が場所だけに放っておくわけにもいかなかった。朝早くからお墓参りに来る人たちも少な

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墓地の警備

これは俺が年上の従兄弟から聞いた話。
従兄弟がある霊園で働いているんだけど、ある年警備員が夜、墓地を巡回することになった。

「肝試しに来て余計なことをする若者たちがいてね」
墓地で花火をしたり、勝手に飲食をしてごみを捨てて帰る人はもともといたけれど、その年は特に多かった。
従兄弟も正直今更だよなと思いつつ、巡回が始まることは歓迎していたらしい。
ところが、あるとき妙なことに気が付いた。
頻繁に警

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リクライニングベッド(朗読:絢河岸 苺様)

これは友人がとある職員として病院で働いていた時の話。
その病院には普段使われていない部屋がありました。
入院用の個室なんですけど、その部屋のリクライニングベッドにいわくがあり、どうしても部屋が足りないとき以外は使わないようにしていたそうです。
「スイッチを押してもいないのに頭の部分が勝手に持ち上がる」そんな誤作動がときどきあったそうです。
そして、この誤作動が起きた時、そのベッドを使っていた人は必

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