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醤油の最古店を調べる。1500年代が最も古い?(随時更新)

数年前から、大正以前(1926年以前)に創業された老舗飲食店や食品企業・調味料メーカーを訪問し続けています。日本って世界一老舗企業が多い国なのですが、あまり身近と感じられていない方も多いと思います。私としては、「日本が誇る老舗企業や飲食店に行くと楽しいよ!」とお伝えしたく、できる限り訪問をして記事を書き、老舗食堂というサイトにまとめております(22年7月現在、1600軒強掲載)。

そんな老舗企業のこと、実はあまりまとまった情報がないのです。そのため、時間を見つけ色々調べたいなとこのnoteを立ち上げました。今年頭には「日本最古の鰻店」をまとめてみました。まだ、このリストが最古店なのか見えていないところはありますが、ある程度網羅は出来ているのではないかと思います。

今回は日本人にとって身近なお醤油屋さんを調べてみました。歴史あるお醤油屋さんは味噌も作られているケースも多く、「醤油屋として最古はどこか」の判断が難しい可能性はありますが、一旦はリストとしてまとめてみました。前回のうなぎ店の時と同様にTwitterで情報を募集しますので、ご存知の情報があればお知らせ頂けるとありがたいです。

醤油の歴史と、産地を振り返る

今回はリストの発表の前に、醤油誕生までを簡単に振り返っておきたいと思います。醤油の歴史や誕生は諸説ありなため、詳しくはwikipediaを読んでください、なのですが、今我々が醤油と呼んでいるものの直接な子孫を辿ると、この歴史に登場する場所やその近辺に醤油の最古店があるのでは、と予想しています。

  • 鎌倉時代に和歌山県湯浅で、金山寺味噌からの派生で、現在のたまり醤油に近いものが生まれる。その後関西近郊でたまり醤油がメインで作られるようになる。

  • 江戸幕府開府と共に、上方(大阪・堺・龍野・讃岐)・尾張(武豊)から「下り醤油」として江戸に醤油が流入。江戸近郊(野田・銚子・佐原・結城)でも醤油製造が始まる。

  • 野田・銚子(共に千葉県)では関東醤油、今でいう濃口醤油に近いものが開発され、江戸では上方からの「下り醤油」よりも「地廻り醤油」が人気となる。
    ※野田にはキッコーマン、銚子にはヤマサ・ヒゲタ醤油があり、千葉県全体で醤油の3割以上を製造する醤油の街になっています。

が、ざっくりとした流れと理解しています。ここからすると、生誕地である和歌山県の湯浅やその周辺の関西メーカー、もしくはその後覇権を握る千葉の醤油メーカーの可能性もありますね。

もう1つ、醤油の分類から可能性を探ります。醤油はJAS規格で5つに分類されます。それぞれの産地に古いメーカーがある可能性があります。以下が5分類と発祥地・主要産地となります。

  • 濃口醤油 - 全国的に作られるが、千葉・銚子、千葉・野田、香川・小豆島が有名

  • たまり醤油 - 東海三県でメインに作られている

  • 淡口(薄口)醤油 - 兵庫県龍野で発祥

  • 白醤油 - 愛知県の碧南市で発祥

  • 再仕込み醤油 - 山口県柳井市で発祥

上記の分類には入ってきませんが、九州の甘口醤油文化圏にも大分県臼杵市を中心に沢山の歴史あるメーカーがひしめいており、色々な可能性を感じられますね。

日本の古い醤油屋さんランキング暫定版(随時更新)

前置きが長くなりましたが、ここからがランキングです。今回はわかる限り「醤油を作り始めた年」でランキングを見ようとしています。一部「いつ醤油を作り始めたのか」が判明していない企業もあるため、そちらについては追って確認を入れたいと思っています。
今回ランキングを作るにあたって、しょうゆ情報センターさんの「しょうゆメーカー検索」にかなり助けられました。ここに掲載されていた情報にプラスαの情報を加味したしたのが暫定版ランキングとなります。醤油造りスタートがわからない企業が多く、読み取りが難しいことご理解の上ご覧ください。

※現存の醤油メーカーで、醤油以外での発祥年も含めると、1534年に穀物問屋として創業された長野県松岡屋醸造場さんが最古となります。醤油作りは1818年からと記載があるためランク外となっています。

1. 1573年創業・室次醤油 (福井県福井市)

公式サイト内の1573年の箇所に「また、この頃の醤油は味噌の下にわずかに溜まる「溜まり醤油」で、量が少なく、非常に高価な物であった」とあります。

2.1580年頃創業・ヒガシマル醤油 (兵庫県たつの市)

公式サイト内には、「1580年頃 創業」、「1660年頃 龍野でこの頃、現在の淡口醤油が誕生」とあります。ヒガシマルさんがどのタイミングから醤油造りを行われていたかは読み取れず。

3.1600年以前に創業・現在の新潟県醤油協業組合の1つである小坂伝之助商店 (新潟県長岡市)

公式サイト内に、「慶長時代 1600年以前 小坂伝之助商店 長岡市」とあります。その頃から醤油を造られていたかは読み取れず。

4?.1600年創業・カニ醤油合資会社 (大分県臼杵市)

公式サイトの1600年の項に「味噌の製造を始める」とあります。創業時には醤油を作っていなかったようです。1883年に「二王座に醤油工場拡張」とありますので、1600-1883の間には醤油造りを始められていることがわかりますが、詳細は不明

5.1616年創業・ヒゲタ醤油(千葉県銚子市発祥。現本社は東京)

公式サイトの1616年の箇所に「銚子でたまりしょうゆの製造販売」とあります。ちなみに1697年には「現在のヒゲタ濃口しょうゆの原形となる醸造法に改良」とあり、濃口醤油への変遷が見て取れます。

6.1645年創業・ヤマサ醤油 (千葉県銚子市)

公式サイトの歴史箇所に「以来、ヤマサ醤油は創業から3世紀半以上、途中若干の起伏盛衰はありましたが、12代に渡り品質の高い醤油を作り続けてます。」とあるため、創業時から醤油造りをしていたようです。

7.1661年創業・キッコーマン (千葉県野田市)

公式サイトには、「設立 1917年(大正6年)」とあり、野田醤油株式会社の記載のみとなっています。ここからはwikipediaの情報となりますが、1917年に設立された野田醤油は高梨家と茂木一族七家が合併して出来た企業であり、その高梨家が醤油造りを始めたのは1661年となります。

8.1676年創業・永田醸造 (宮城県亘理郡)

公式サイトには、「延宝3年(1676年)創業。三百年以上にわたり、地元に愛されるみそ・しょうゆ造りに携わって参りました。」とあります。創業時から両方作っていたかは不明です。

9.1681年創業・大彦味噌醤油醸造元 (秋田県秋田市)

公式サイトには、「初代・大門彦右衛門(享保四年 1719年死去)は族親の大門助右衛門と共に、遠く加賀国より黄金谷(現地・新屋表町)へやってきた。油屋を営み後に醤油醸造部を創業した。」とあります。初代の大門彦右衛門氏の時代から醤油は作られていたようですが、当初は油屋のため醤油屋としては、創業後しばらくして、となる形でしょうか。

10.1684年創業・ミエマン / 合資会社西村商店 (三重県度会郡)


公式サイトに、「現在地に於いて、屋号「古里屋」として味噌・醤油製造の創業を開始する。」とあります。

ランキング雑感と、その他古い醤油店について

調べ始める前は、「発祥の地である湯浅に沢山あるのかな」と考えていたのですが、調べた限り湯浅の最古店は1841年創業の角長(かくちょう)さんのようです。もう1つの重要拠点である小豆島近辺も1844年創業のヤマトイチさんが最古となるようです。江戸時代の下り醤油から地廻り醤油へと切り替わる過程で廃業された醤油屋さんが多かった、ということなのでしょうか。また想定通りであったのは、「創業年はわかっても、醤油造りを始めたタイミング」がわからない醤油店さんも多かったです(そのため、まだまだアップデートが必要なランキングです)。

ランキング上位を見てみると、1位福井、2位兵庫と、地理的にはある程度湯浅から近い場所にある一方で、3位は新潟とかなり遠方です。当初から醤油作りが行われていたとすると凄く面白いお話なので、機会があればお話を伺ってみたいです。九州は醤油の街・臼杵が4位、5−7位までは現在の醤油文化の多くを生み出した千葉県の野田・銚子からとなっています。8位、9位と東北、10位三重県となりました。北陸・東北はあまり頭になかったので個人的には驚きの結果です。各社にお話お伺いしてみたいですね。

その他調べた限りでは1700年より前に創業された醤油店はいくつかありました。300年越えの老舗店が多数存在しているって、本当に凄いことですよね。以下、お名前だけですが掲載しておきます。

・1665年創業/1708年醤油製造開始・盛田株式会社 (愛知県名古屋市)
・1688年創業・柴沼醤油醸造株式会社 (茨城県土浦市)
・1688年創業・キッコーナ株式会社 (愛知県丹羽郡)
・元禄時代(1680〜1709年)に蔵業として創業・上澤梅太郎商店 (栃木県日光市)

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このランキングはあくまで暫定版です。こちらのnoteのコメントか、Twitterへコメント情報頂ければ、随時更新していきたいと思います。まだ出会えていない醤油蔵と出会えることを願っております。是非コメントください!


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