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なぜマインドフルネスはストレスを軽減できるのか?【心理面】後編

前編で説明したように、私たちは、ストレスを感じると闘争・逃避反応を起こし、無意識に不健康な対処を行いがちです。それを表した図がこちらでした。

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さらっとおさらいしますと、

ストレッサー

(身体的、精神的危険を認知)

感情の生起

(怒り、恐怖、悲しみ、不安などが生まれる)

体の生理的変化

(闘争・逃避反応で交感神経の興奮、ホルモンの分泌)

不適応な対処

(否定、仕事中毒、忙しさ、食べ物、化学物質、薬、抑うつ的思考など)

心身の問題

(精神的、身体的疲労、肥満、中毒、不眠症、燃え尽き症候群など)

ストレッサー


マインドフルネスによって気づきを養うと、このサイクルに次のような劇的な変化が起こります。

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いやいや、マインドフルネスちょこっと足しただけじゃねえか!って?

ええ、そうです。本当は色んなことがあるんですよ。あるんですが、いっぱい書くとややこしいことになってしまうので、超シンプルに表しました。

これから詳しく説明します。

マインドフルネス瞑想などのトレーニングを一定期間以上行うと、自己認知力が向上します。これは一般的にメタ認知力とも呼ばれます。

まずはこのメタ認知とは何か簡単に説明します。

メタとは“高次の”という意味です。つまり、自分が認知していること(思考や感情、記憶など)を「より高次の視点から認知する」というのがメタ認知です。

何かをしている自分を冷静に見ている「もう一人の自分」というイメージですね。

たとえばコンビニでスイーツを手に取った瞬間に、「いや、4日連続はマズイんじゃないか?」と行動や言動をもう一人の自分が客観的な視点から調整する能力がメタ認知力と言えます。

つまり、無意識に起こる思考や行動、言動を意識的に気づくことができるということです。それが具体的にどう働くのか見ていきましょう。

たとえばあなたのプライベートで何かイラつくことがあったとします。そして仕事場にいてもそのことが頭から離れず、イライラしていたとします。そんなとき、若い部下が仕事の効率化を図るアイデアを持ってきます。しかしそれがとんでもなく的外れなものだったので、「はぁ?こんなくだらないことに時間費やして、何を考えてるんだこいつは!」とあなたはカチンときます。その瞬間、体が熱くなり、苛立ちが湧き上がります。あなたは次の瞬間、どうするでしょうか?

自己認知力が高ければ、あなたはまず自分の体が熱いこと、そして怒りの感情が自分の中にあることに気づきます。そして今まさに部下を怒鳴ろうとしている自分がいることにも気づきます。またプライベートでの苛立ちを同時に発散しようとしている自己中心的な思惑にも気づくでしょう。

すると、「ちょっと待てよ、このまま怒鳴って意味あるのか?」「これは自分のためにやろうとしてるだけじゃないのか?」とより高い視点から自分を見ることができます。そこから、「いや、こいつも一応必死に考えてきたんだろう」「プライベートを持ち込むのは間違ってる」とその状況への認識を変えることができます。

するとさっきまでの怒りが弱まり、感情的ではなく、より理性的な行動をとることができるようになります。こうして無意識に起こる自動的なルートに向かうのではなく、意識的に自分の行動をコントロールできるようになります。

ここでカバットジン博士の著書「Full Catastrophe Living」に出てくる実話を2つ紹介します。

ある日のMBSRのクラスのあと、ある大学院生が、自分のタバコが吸いたいという衝動は3秒くらいしか続かないということに気がつきました。それは2、3回呼吸するのとほとんど同じ時間だと彼女は思いました。そこで、タバコが吸いたいという衝動を感じたとき、タバコを手に取るかわりに、呼吸に意識を向け、衝動が浮かんだり、消えたりするのを観察してみることにしました。博士が最後に彼女とあったとき、彼女は2年半タバコを吸っていなかったそうです。

MBSRを受けたトムの話です。トムはある日、自動車事故に巻き込まれました。しかし幸運なことに誰も怪我をしませんでした。事故はトムではなく他の人の不注意から起きたものでした。トムは、以前の自分だったら、こんな忙しい日に自分の車を壊されたら、そのドライバーに激怒していただろうと言いました。しかしそのかわりに彼は、「誰にも怪我がなかったんだ。それにこれはもう起こってしまったことだ。グチグチ言わずに前を見よう」と自分に言い聞かせました。そして、呼吸に意識を向け、落ち着きをもってこの状況を対処したそうです。

ストレスを感じる状況で、自分に起こっていることに意識的に注意を向けるだけで、状況を劇的に変え、より適切な、創造的な選択の可能性を生み出すことができるようになります。

今起こっていることに正しく気づく、という自分の内部の変化は、次の瞬間に行う自分の行動にとても大きな影響を与えます。このような状況に意識を向けるほんのわずかな一瞬が、ストレスに直面したときの結果を大きく変えます

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日常生活でどのようにマインドフルネスを養うか?

今紹介した話を知ると、マインドフルネスとはなにか魔法のような特殊能力のイメージを持つかもしれません。しかし、それはまったく違います。むしろマインドフルネスはとても地味で日常に生きる実践的な能力です。

これを日常で養うには、そのとき、そのときに自分の体や呼吸に意識を向けることです。

自分の勘に触ることが起こったとき、何かで一杯一杯になったとき、闘争・逃避反応が起こりそうだと感じたときに、歯を食いしばっているあごや緊張している肩、握りこぶしを作っている手、鼓動が早くなっている心臓、違和感を感じるお腹(胃腸)に意識を向けてみましょう。

また内側で生まれる怒りや恐怖、痛みに気づきましょう。感情が体のどの部分にあるのか、探してみましょう。

こうして何度も何度も心と体に起こることに気づくことで、次第にあなたは気づくことが上手くなってきます。そうして気づきを養うことで、無意識の反応の流れを止め、意識的な行動を選択する余地を作ることができるようになります。


とはいえ、意識的な行動を選ぶことができるようになるからといって、危険や恐怖などを感じたときに決して自動的な反応をしない、というわけではありません。それは衝動の強さや状況にもよります。

ポイントは、感情や衝動が起こったときに、その変化に気づける機会がより増えるということです。さきほども言ったように、“気づき”こそが次の瞬間の自分の行動を変える分岐点になります。

自分のマインドレス(無意識)な反応に気づくことで、「こうしたほうが自分にも周りの人にとっても良い結果につながる」と思う行動を自分で選ぶ瞬間を増やすことができるということです。

気づきは、私たちが不快に感じることや難しいと思うことに対して、まったく新しい付き合い方を教えてくれます。

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まとめ

ということで今回はここでまとめます。タイトルの「なぜマインドフルネスはストレスを軽減できるのか?心理面」の答えは以下のようになります。

今この瞬間、自分に起きていることに気づくことで、ストレスに対して起こる無意識の反応パターンを止め、冷静な目を持って意識的に対応を選択することができるようになるからです。

無意識の反応パターンを止めることで、過剰な反応や不必要な反応を減らすことができるようになります。

また意識的に対応できることで、ストレスを増やす不適応な対処をやめ、より健康的で創造的な対処をすることができるようになります。



ということで、マインドフルネスが心理的、精神的にどのように私たちのストレス反応に変化を与えるのか、についての説明でした。説明がうまく伝わっていないかもしれないので、もしなにか疑問等ありましたら、ぜひコメントしてください。


最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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