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なぜ"体に意識を向けるだけ"で健康になれるのか?【マインドフルネス×医学】

今回は、【ホメオスタシス-身体の声を聞く】で紹介した身体の統制機能についてもう少し深く探っていきたいと思います。

具体的には、マインドフルネスの根幹である”意識的に注意を払うこと”と身体の健康がどのように関連するのか、医学的な視点で説明します。

内的なつながりと全体性

僕が初めてストレス反応の仕組みを知ったとき、人間の体はなんて上手いこと機能しているんだ、とびっくりしました。と同時に、生まれてからずっと一緒にいる自分の体について何も知らなかったことに少し落胆しました。

実際、体の健康は、私たちが意識しなくても、感覚器官、筋肉や神経、細胞、内臓システムなどの働きが統合されることによってうまく保たれています。

マインドフルネスストレス低減プログラム(MBSR)の創設者、ジョン・カバットジン博士は、著書でこのように述べています。

私たちの体は、まさに一つの“宇宙”だといえるでしょう。体は、何百億もの細胞から成り立っていますが、それぞれの細胞の内部には、全体としての体内バランスと秩序を維持するための統制機能が組みこまれているのです。つまり、人間の体には、本質的に、自己組織力と自己治癒力が備わっていると考えることができるのです。(J・カバットジン マインドフルネスストレス低減法, 2007)

前回お話ししたように、私たちの身体には状態を一定に保とうとする性質=ホメオスタシスがあります。この性質は体の“フィードバック・ループ”によって維持されています。フィードバック・ループとは、状況にあわせて体のあらゆる部分を調整する機能のことです。

ホメオスタシスは性質で、フィードバック・ループはそれを可能にする具体的な体のシステムといえます。

たとえば、走ったりして体を使うと、心臓は自動的に血液を通常より早く押し出し、筋肉が運動できるように大量の酸素を供給します。そして運動が終わると、心臓は通常の状態に戻り、筋肉も回復します。

ここには、心臓と筋肉の間に「今こういう状態だ」「これが今必要だ」「こうしたらこの結果になった」というやり取り(フィードバック・ループ)があります。この機能を通して、体の各器官が内部で結びつき、体は自らを統制しています

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こうした内的な結びつきは細胞レベルでも見ることができます。

皮膚に切り傷ができると、生化学的な信号が送られ、細胞の凝血機能が働いて、血を止め、傷を治します。

体の細胞のどれかが癌化すると、免疫システムはナチュラルキラー細胞と呼ばれる特殊なリンパ球を動員します。ナチュラルキラー細胞は、細胞の表面構造の変化から癌化細胞を見つけ出し、被害を出す前に破壊してしまいます。

このように、体のあらゆる組織は、それぞれほかの組織とつながっており、それはその間を流れる情報(フィードバック・ループ)によって統制されています。そして、この自己統制能力によって、体の内的なバランスや秩序が保たれています


体がそれぞれの部分が独立した機能をもちながらも、内的に密接につながり、1つの大きなコミュニティとして機能していることを、カバットジン博士は“全体性”という言葉で表しました。

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注意の怠りがもたらすもの

アリゾナ大学の心理学者、ガリー・シュワルツ博士は、この全体性という視点に基づいた健康に関するモデルを提唱しました。


Disattention(注意の怠り)

Disconnection(内的な結びつきの切断)

Dysregulation(非制御状態)

Disorder(機能の混乱)

Disease(病気)


シュワルツ博士は、“注意を怠ること”、つまりバランスをとるために心や体が送っているフィードバック・メッセージに注意を払わないことが、体内の結びつきを壊す一番の原因だと考えました。

体内の各部の結びつきが壊れると、正常な自己統制機能のフィードバック・ループに支障をきたします。つまり、正しくメッセージを送り合えなくなります。これを“非制御状態”と呼びました。

この状態になると、体内のリズムと秩序が失われ、フィードバック・ループがうまく機能しなくなります。この混乱は体全体の機能や各部に現れてきます。

医学では、このように生物システムの機能が混乱した状態のことを“病気”と呼んでいます。制御機能が最も混乱した部分が、私たちが呼ぶ“病気”となって現れてくるわけです。

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癒しのプロセス

逆に、健康や癒しという視点から見たとき、反対のプロセスが考えられます。

Attention(注意を払う)

Connection(内的な結びつき)

Regulation(制御状態)

Order(機能の秩序)

Ease (Health)(健康)


心や体の送るメッセージに注意を払うことができれば、体の要求に応えることができ、体内の各部分の結びつきがうまく機能します。すると、体内のシステムの正しい制御状態は維持され、機能の秩序や内的なバランスが保たれ、健康になる、ということです。


フィードバックに気づく

私たちのほとんどすべての自己制御機能は脳と神経系統がコントロールしています。脳は、外からの刺激や体の器官から送られてくるフィードバックに応じて、絶えずすべての器官の働きを調整しています。

ところが、私たちがある程度支配権をもっている体の器官の機能もあります。たとえば、消化器官です。私たちは意識的に“食べる”という行為ができるからです。

私たちは内臓器官からの「腹が減ってますぜ」というフィードバックを受けて、食べものを食べ、「もう十分だ」というフィードバックが届くと、食べるのをやめます。これが自己制御機能です。

しかし、ストレスを抱えたり、心配事があったり、何か充足感が足りないと感じていると、満腹でも無意識に食べすぎてしまうことがあります。「もうお腹いっぱいですよ!」という体のフィードバックに気づかず、これが慢性的に続くと、やがて制御機能が失われていきます。すると、過食症と呼ばれる病気につながります。

また、たとえば油っぽいものを食べたり、お酒を飲んだり、ストレスを感じて胃が痛むと、私たちは薬を飲んで痛みを和らげようとします。薬は飲んでも、生活習慣のほうなかなか変えようとしません。

これでは、バランスを取り戻そうとしている体のメッセージを無視していることになります。つまり、自分の体の状態に正しく気づくことができなくなります。これがシュワルツ博士のいう“注意の怠り”です。

しかし、体のメッセージを受け取ることができれば、自分の行動パターンを改善し、体の制御機能を回復させることができるようになります。

私たちが自分の心や体にどれくらい意識を向けているか、そして、体内の各部の結びつきの質を高め、体からの情報を受け入れる力をどのくらい高めることができるかによって、病気に向かうか、健康に向かうか、という方向が決まるといえます。

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私たちは、「自分の体のことはよく分かってる」と思いがちです。しかし、ヨガやボディスキャンのような体に意識を向けるトレーニングをすると、思った以上に体がさまざまなメッセージを発していることに気づき、そして驚きます。

一度、体に対する自分の考えを横に置いて、ゆっくり、じっくり体に意識を向けてみて下さい。食事のあとや、運動したあと、体がどんなメッセージを発しているのか、観察してみて下さい。

日々体に意識を向けるトレーニングを行うことで、次第にメッセージを上手く読み取ることができるようになります。

では今回はこのへんでまとめます。

まとめ

⬛︎体は、各部の器官がメッセージを送り合って、互いに調整しあって健康を保っている。

⬛︎体のメッセージへの不注意が体の統制機能を壊し、病気を招く

⬛︎体のメッセージへの気づきが体の統制機能の改善につながり、健康になる


興味があればこちらもぜひ読んでみてください。

#1ストレスとは?

#2ストレスの3つの原因

#3ラザルスのストレス理論

#4ホルモンと神経

#5ホルモンと神経②

#6身体の声を聞く


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