【セルフライナーノーツ】初音ミク「π」 円周率の歌詞を解説してみた
お盆休みということで、今回もセルフライナーノーツを書きたいと思います。
実は10年くらい前に一度だけ、ボカロPをやったことがあります。
といっても、私は楽器も打ち込みも出来ないので、正確には「ボカロPから依頼されて曲をつくったことがある」というのが正しいです。
つまり作詞・作曲だけを担当する「下請けP」。
今回は、そのときのセルフライナーノーツです。
まずは、お聴きください。初音ミクで「π」。
「π」の曲と歌詞
ボカロPの友人から作詞の依頼
私に依頼してくれたのは、デザイナーをしている友人のkenZさんです。
彼はもともとギターをやっていて、以前から曲づくりをしていたのですが、時流に乗ってボカロPも手掛けていました。
一方私は、ユーザーとして初音ミクを聴く程度。
機械も楽器もまったくダメなのでボカロPなど出来るはずもなく、遠くから憧れるのみです(笑)
そんな折、彼のボカロP活動を知った私は「コピーライターは作詞もします」と彼に接近。作詞をさせてもらうことになったわけです。
私の場合、先に曲があって、その曲に歌詞を付けるという「曲先」というパターンが多いのですが、今回のご依頼は「詞先」とのこと。
つまり、曲無しで歌詞を書く作業です。
ポップスなどではリズムとコード進行が大切なので、自由な文字数で書くと曲を載せにくくなってしまいます。かといって七五調と決めてかかると単調な曲になってしまう。
先に曲が無いと作詞しにくかったので、彼には内緒で、仮の曲をつくっちゃいました。歌詞だけ納品すれば問題ないですしね。
まぁ結果的には、曲も気に入ってもらえたので納品しちゃいましたが(笑)
テーマは「人の気持ちの不可解さ」
歌詞のテーマをどうしようか。
初音ミクなどのボーカロイドは細かい設定が無いので、アーティストの世界観から自由につくれるというのが魅力です。
逆に言うと、「世界観も含めて、すべて自分でつくらなくてはならない」ということです。
初音ミクに、どんなメッセージを歌ってもらうべきか。
ボーカロイドは擬人化されたプログラムなので、コンピュータの演算がテーマのヒントになりそう。
当時の記録媒体は、CD-ROMも内蔵ハードディスクも円盤の形をしていたので、「円環」とか「廻る」というものアリかも。
ボーカロイドというプログラムは、どのくらい人間の気持ちを理解できるのだろうか。
人の気持ちには正解も終わりも無くて、永遠に考え続けないといけない。
ぐるぐる、ぐるぐる。永遠に答えの出ない問題を考え続ける。
そう、円周率の演算のように。
ということで、プログラムには不可解な人の気持ちを、円周率のように割り切れない、答えの出ない演算として描いてみよう、となったわけです。
円周率だから、タイトルは「π」に決めました。
歌詞とギミックの解説
私の書く歌詞には必ず何かしらのギミックが入っているのですが、今回はそんなに多くないです。
①英語の歌詞に挑戦
当時の初音ミクの音声は、日本語の50音で録音していたので、「英語が苦手」と言われていました。
ならば英語に挑戦してみよう。
ということで、円周率の「3.14」は、あえて「スリー・ポイント・ワン・フォー」にしています。
ラスサビの前で「スリー・トゥー・ワン・ゼロ」に変わりますが。
間奏部分に入るときには、円周率を延々と唱え始めます。
②数学関連の用語
全体的に円周率と数学をモチーフにしているので、円周率を求めたギリシャ時代の数学者アルキメデスや、「メビウスの輪」で知られるフェルディナント・メビウスなど、数学者が登場します。
また、理論、記号、無理数、アルゴリズムといった数学用語も多く取り入れました。
③曲の長さも3.14
気付いた人はほとんどいなかったのですが、曲の長さが3分14秒です。
おわりに
ボカロの曲は初めてだったので、あまりギミックは凝らしてないですが、ボーカロイド初体験できた思い出深い曲です。
私は作詞をするとき、「YOUR MOON」の古語のように、普段聞き慣れない言葉を使うのが好きなのですが、この曲は数学用語を使ったり、円周率を延々と唱えたり、結構楽しい演出ができたかなと思っています。
また機会があればボカロPをやってみたいですね。
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