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【2024年新春コラム】『福沢諭吉紙幣』の40年と万博

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
2024年最初のコラムは、今年新札が登場する紙幣の話です。

今から40年前の1984年、福沢諭吉の一万円札が新たに誕生しました。
一万円札の顔としては、1958年に採用された聖徳太子に続いて2人目。
2004年の刷新時にも継続して採用され、渋沢栄一に刷新予定の今年、2024年現在まで使用されています。

さて、その福沢諭吉ですが、彼の自伝などを見るとかなりの権威嫌いで破天荒な性格が伺えます。その上とても現実主義で好奇心旺盛、神をも畏れぬ悪戯好きだったそうです。

ある日、神様の正体が気になった諭吉少年が稲荷神社の祠を覗いてみると、御神体は何の変哲もないただの石ころ。
代わりに拾ってきた石ころと入れ替えて人々の様子を隠れて観察。入れ替わったことに気付かず拝んでいる人たちを見て笑っていたとか。
なんとも破天荒な御仁です。

後に蘭学を通じて西洋文化を学び、1858年には江戸に蘭学塾を開設。
10年後の慶應4年(明治元年・1868年)には、皆さまご存知の慶應義塾へと改称。
慶應義塾大学の創始者として、また、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と綴った『学問のすゝめ』の著者としても知られる人物です。

そんな福沢先生の波乱万丈な人生を象徴するかのように、福沢紙幣の時代はジャパンマネーと景気の乱高下が激しい時代
その時代の円相場と日経平均について、少しおさらいしましょう。

福沢新紙幣が発行された翌年の1985年、G5(先進5ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議)で発表された「プラザ合意」により、それまで1ドル=240円程度だった円の価値は、その後2年ほどの間に150円を切るようになります。
プラザ合意の影響は「バブル景気」を生み、バブル崩壊後の1995年には遂に80円を切る円高に。以降100円~150円を推移するも、2011年10月に戦後最高値の75円32銭を記録します。

景気の方はというと、平成が始まった1989年の12月、日経平均株価の最高値3万8915円87銭を記録。
ところがバブル崩壊の影響で、その2年後には2万円以下にまで下落、2003年には8千円を下回りました。
その後1万円台に回復するものの、2008年には「リーマンショック」の影響で7千円を切る最安値を付けました。

1ドル=240円から75円、日経平均4万円弱から7千円という乱高下。
まさに波乱万丈。ジェットコースターのようです。

プラザ合意と同じ1985年、日本では一つの大きなイベントがありました。
それが「国際科学技術博覧会」、いわゆる「つくば万博」です。
筑波研究学園都市を舞台に、「人間・居住・環境と科学技術」をテーマに開催。日本を含む48ヵ国と37の国際機関が参加し、184日間にわたって2千万人を超える来場者を動員しました。

万博といえばその20年後の2005年にも、愛知県の長久手町で「2005年日本国際博覧会」、通称「愛・地球博」が開催されています。
そして来年2025年に大阪・関西万博が開催予定

ここで一つの法則に気付きませんか?

 1984年 新紙幣(福沢諭吉・新渡戸稲造・夏目漱石)に刷新
 1985年 つくば万博開催

 2004年 新紙幣(福沢諭吉・樋口一葉・野口英世)に刷新
 2005年 愛・地球博開催

 2024年 新紙幣(渋沢栄一・津田梅子・北里柴三郎)に刷新
 2025年 大阪・関西万博開催予定

新紙幣が発行された翌年には、必ず万博が開催されているのです。

万博ともなれば、世界中からたくさんの人が来日し、多くの訪日外国人が日本で刷新されたばかりの新紙幣を使うことになります。
つまり、世界にジャパンマネーを拡散するために、紙幣刷新と万博はセットになっているのです。

ヤバイでしょ。パンドラの箱、開いちゃったよね(笑)

なんていう陰謀論はまったくのデタラメで、新紙幣と万博のタイミングの一致は偶然の賜物です。
ですが単なる偶然ではありません。因果関係ではありませんが、相関関係ではあります。
つまり今後も、「紙幣刷新の翌年に万博が開催される可能性が極めて高い」と言えるのです。

その理由は、それぞれのルールにあります。

万博は、「国際博覧会条約」に開催期間や実施方法などの規定があり、一度開催すると次の開催まで5年間開催できないのです。
そのため、日本では末尾に「5」の付く年に開催されることが多く、上では触れませんでしたが、1990年に「国際花と緑の博覧会」、通称「花博」が大阪で開催されました。

一方の紙幣は、偽造防止を目的として、大体20年周期で刷新されます。

新紙幣は20年ごとの「4」の付く年、万博は「5」の付く年なので、かなりの頻度で翌年になるというわけです。

紙幣の偽造防止とひと口に言っても、その技術は多岐にわたります。
すかし、凹版印刷、パールインキ、マイクロ文字、ホログラムなどがあり、角度を変えることで絵柄が浮かび上がったり、ブラックライトを当てると光ったり、極小の文字で「NIPPONGINKO」と書かれていたり。

これらの視覚的なものの他に、触って確認できるものもあります。
視覚障害がある人のために触って分かる「識別マーク」が初めて導入されたのは1984年。
福沢諭吉の紙幣デビューと同じタイミングです。当時は「白黒すかし」で円形のマークが入れられていました。
2004年の刷新時には、インクを高く盛り上げて触って分かるようにした「凹版印刷」を採用。現在の紙幣の端には、逆L字や八角形のザラつきがありますよね。

今回の新紙幣でも同様に凹版印刷の識別マークですが、L時などの形状ではなく、11本線の配置によって識別するそうです。
ですが本当に視覚障害者のことを考えると、電子マネーの方が便利な気がしますよね。
2044年の刷新はあるのでしょうか?
もしかしたら今回が最後の「紙幣」刷新になってしまうかもしれないので、新札を記念に保存しておきたいと思います(笑)

ともあれ、日本の紙幣印刷技術は世界最高レベル。

先日のSLIMの月面着陸に始まり、新紙幣の偽造防止技術、ユネスコ無形文化遺産登録を目指す「伝統的酒造り」(日本酒ほか)など、今年は日本の技術を世界にアピールするチャンスに恵まれています。
来年の大阪・関西万博も併せて、大いに盛り上げていきましょう。

今年も一年、よろしくお願いいたします。



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