8月12日 航空安全の日

1985年の日航機墜落事故は当時小学6年生だったころの僕にはあまり印象に残っていない。
当時まだ飛行機に乗ったことのなかった僕は大きな飛行機が墜落して沢山の人が亡くなったということがどういうことなのか具体的にイメージできなかったし、その後テレビ番組のゴールデンの時間帯がほとんどといってよいほどこの事件を取り扱ったドキュメンタリーやニュース番組になったことに辟易としていたというのが正直な気持ちだった気がする。

改めて御巣鷹山のこの事故に興味を持ったのは山崎豊子の沈まぬ太陽を読んだ20代のころだったと思う。
沈まぬ太陽では、主人公の恩地は労働組合長として労働者の就業環境の改善を訴え、それと引き換えに日本航空の経営陣と対立しアフリカの僻地に追いやられることになる。
10年くらい僻地を転々として日本に帰ってきた恩地と日本航空に襲い掛かるのがこの日航機墜落事故だ。
恩地は大学時代に山岳部だったことからこの事故の捜索メンバーとして駆り出され、その後遺族対応などを行いその活躍が目に留まった新会長に拾われ今度は日本航空の経営の建て直しに奔走する。

そんな沈まぬ太陽は20代の僕に巨大組織の論理や政界と財界の関係性、そして日航機墜落事故の被害の大きさや被害者の無念、その後の遺族の置かれた心境など、さまざまなことを知ったり、想像したりするようなとても良い機会になったと思う。

日航機の墜落の原因はBOING社のメンテナンスの不備だとほぼ結論づけられているけれども、同社からの補償はなくいまだBOING社はこの世の翼を担う一大企業として経営を継続している。
日本航空はその後リーマンショックの際に一度債務超過となり今に至るが思えば山崎豊子が小説に描いていたころから組織としての大きな病を患っていたのだと思う。

白い巨塔、華麗なる一族、不毛地帯、大地の子などと比べると、沈まぬ太陽は山崎豊子の晩年の作品ではあるけれども、緻密な取材によりフィクションであるにもかかわらずノンフィクションを思わせるストーリー性と、登場人物のキャラクターに引き込まれる好きな小説のひとつだ。

テレビドラマ化もされていたと思うけど、小説と比べて大分話が端折られていたことを覚えているので、もし日航機墜落事故を知りたいと思ったり、日本航空の昔の組織体質などに興味があったりする人は是非小説の沈まぬ太陽を一度読んでみてほしい。

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