9月4日 櫛の日

僕が子供のころ僕の親父はレンゴーというパルプ会社に勤めていて、勤めにはいつもマンダムのヘアトニックを櫛でなでつけて行っていた。
親父の櫛は金属でできた銀色で平べったい櫛で、いつも親父がそれを内ポケットか何かに入れて持ち歩いていて、たまに髪が崩れた時にポケットから出して使っているのが大人びて見えたことと、マンダムのヘアトニックのにおいが混じって、「大人の男」とはそういうものだと自然に信じるようになっていた。

でも、僕の行くことになった足羽中学校は、いまはもう変わっていると思うけれども僕が中学生のころは1年~3年で卒業するまでずっと丸坊主にすることが校則で決まっていて、中学に入るときに僕は近所の床屋でそれまで長かった髪を切ってもらいしばらく整髪剤とも櫛とも縁のない人生を過ごすことになる。
ただし、そこは田舎の少年だけあって僕たちの中学では丸坊主でも脱色して茶色い坊主頭にするのがビーバップっぽかったので流行っていて僕も金髪に近い茶色の坊主頭にソリコミを入れて中学校に通っていた。

いま思えば気絶するほどダサい。。。

そんな風だったから、僕が整髪剤や櫛を使うようになったのは中学校を卒業して高校に行くようになってからだった。
高校では茶髪派と黒髪派に分かれていて、僕はすでにビーバップハイスクールからろくでなしブルースに興味が移行していたので、黒髪のリーゼントをオヤジをまねて買ったプラスチック製の櫛とハードジェル、スプレーを使って作って高校に通ったり通わなかったりした。

これもいま思えばすこぶるダサい。。。

大学生になってからはいまくらいの短い髪形にしてしまったので(ちなみに大学では、東京に出てきて気張っていたのか、また髪を金髪にしていたけど今度は自分で脱色するのでなく美容室でカラーリングしてもらって金髪にしていた。この時の髪型は今思ってもわりとオサレにしていた気がする。)それ以降あまり櫛を髪に入れることはよほど寝ぐせがついて収集がつかないときくらいになっているし、使うのもああいう平べったいポケットに入るような櫛ではなく、いわゆるブラシを家に置いてあるくらいだ。

櫛の語源は「不思議なこと=奇し、霊妙なこと=霊(くし)が語源だとグーグル先生が言っている。
たしかに、あの親父の金属でできた銀色の櫛は、子供心に不思議なくらいすこぶるカッコよく感じた。

親父は3年ほど前に死んでしまったけど、あの櫛をオヤジはどうしたんだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?