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Klab はなぜカジュアルゲームに参入するのか【エンタメ企業のシンプル決算分析コラム】

Klabの決算説明が行われましたが、その中でカジュアルゲームへの参入が語られています。カジュアルゲームの市場性に目を向けた面ももちろんありますが、手軽に数多くトライをするという事業の性質に着目した面もあると想像されます。裏を返すと、大きな投資で大きなリターンを狙う事業に寄りすぎている点を改善したいと考えているのではないかという仮説が考えられます。
そこで、この仮説に根拠がありそうかを検証する目線で決算説明資料を見てみたいと思います。

売上利益の推移

KlabFY19②売上利益推移

「スクスタ」と「キャプテン翼」の寄与で過去2番目の高水準に売上高がありながら、営業赤字となっています。
「スクスタ」の初期プロモーションを大々的に行った結果、一時的な赤字に陥ったのでしょうか。

費用の差異

KlabFY19③費用の差異

「スクスタ」の初期プロモーション費用の増加が主要因として記載されており、第3四半期に比べて232百万円広告宣伝費が増えています。この影響を除けば営業利益は200百万円ほどはあります。このため、赤字になったのは初期プロモーション費用による一時的なものと言えそうです。
一方で、200百万円という営業利益水準は前四半期と比べても半額の水準になっていますし、前年同期比と比べると1/5の水準です。

内訳は開示されていないのでわかりませんが、「キャプテン翼」の好調度は別ページで開示されている海外事業売上高の伸び率103%と同等と仮定すると、「スクスタ」の売上高は888百万円/四半期と推測されます。売上高の30%であるPF手数料の除くと限界利益は621百万円/四半期となります。
ここから広告宣伝費232百万円、減価償却費180百万円を除くと209百万円となります。また、リリース直後なので開発時と同等の体制を維持している、そのコストを減価償却費と同等と仮定すると、運営費用が180百万円となります。

様々な仮定を置いているので確からしさは高くないですが、四半期での「スクスタ」の売上高は888百万円、限界利益は621百万円、広告宣伝費232百万円、運営費180百万円、減価償却費180百万円、営業利益29百万円と試算されました。

大型タイトルはヒットの成功度をあげるために多額の開発費が必要となり、月商3億円とある程度成功しても営業利益面での貢献は思ったほどいかない可能性があると言えます。

2019年4月リリースタイトルの減損

KlabFY19④減損

別タイトルである「禍つヴァールハイト」は2019年4月にリリースされましたが、ソフトウェア資産の回収可能性を保守的検討して減損損失1,300百万円を計上しています。FY19中に償却もある程度進んでいたはずなので、少なくとも1,300百万円以上の開発費をかけたタイトルが回収不可能という状況になっています。

通期業績

KlabFY19⑤通期業績

通期の業績は営業利益1,673百万円、当期純利益383百万円で黒字は維持されています。しかし、営業利益は前年比▲3,321百万円、当期純利益は前年比▲2,186百万円で大きく利益額を落としています。
「禍つヴァールハイト」で1,300百万円以上、「スクスタ」で1,440百万円程度(2年償却していると仮定し、180百万円/四半期 ✖8で試算)の開発費をかけて勝負し、前者は投資回収ができない状態になり、後者は初期プロモーションの影響はあるものの利益貢献は30百万円程度に留まっています。

「スクスタ」はリリース当初の特殊要因があるので、広告宣伝費の通常状態を現状の半分程度、運営費を現状の8割体制と仮定すると広告宣伝費で120百万円、運営費で40百万円ほどの利益改善ができ、190百万円/四半期の利益は確保できそうです。減価償却費を除いたCFでは370百万円/四半期となります。
「スクスタ」単体ではCFをベースにすると11.7か月で投資回収、開発案件2つ併せて考えると2,740百万円の投資に対して370百万円/四半期で回収していくので22.2か月で回収となります。
ゲームの投資回収期間としてはかなり長く、投資と回収のバランスがよくありません。

カジュアルゲーム参入

KlabFY19⑥カジュアルゲーム参入

上述のように大型案件ばかりになると開発費が多大になり、投資と回収のバランスの点から、もう少し小粒のものも織り交ぜながら開発ポートフォリオを組んだ方がいいだろうと考えたのではないでしょうか。
その手段としてカジュアルゲーム参入を決めたのではないかという考察でした。

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