映画『花束みたいな恋をした』を観た


恋愛の始まりから終わりをていねいに描いた映画。
知り合い程度の他人の感情が綴られた日記を読んだ気がする映画。
日記のように冗長に、日記のように散漫に、だから心に残るシーンの数々。
観終わって映画館を出たあとも五感が浮遊していた。


5年間を2時間の映画に。
シーンがはしょられないところで、生活は続く。秘密も後悔も時間に流れる。
別れてもすぐに離れ離れになるわけでもない。
いい物件が見つからなければ二人暮らしは続く。
朽ちていく恋愛を抱いたまま命は続き、男女は暮らしていく。
妥協して、妥協しないで、夢を保留して、ハードルを下げて、いつしか妥協「できるようになって」いく。

強かになった二人がかつて座ったテーブル席に、新しく「終わりの始まり」を始めようとする男女が現れる。二人の結論が目の奥で揺らいで頬をつたいこぼれる。
坂本裕二さんの物語は冗長で、散漫なまま、どうして心をこれほど掬うのだろう。






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