「維新八策2022」を読む
2022年参院選へ向けた日本維新の会のマニフェスト「維新八策2022」が公開されました。2021年衆院選で、11→41と大きく議席を伸ばした政党だけに、注目しています。
経済に興味がある一有権者としての僕が気になったポイントをシェアしたいと思います。
ポイント
1.意欲的・網羅的な政策集
2.マクロ経済政策が大幅改善
3.抵抗勢力強い分野にも改革
1.意欲的・網羅的な政策集
維新八策2022は、51ページ(!)、402項目(!)の政策からなる政策提案集です。全部に目を通す人が何人いるのか謎な分量です。ただ、それだけ力が入っている、ということだと思いました。
ちなみに、僕は、政策提案集の全部は読んでいません💦
スマホのPDF読み上げで、何とか、すべての政策を「拝聴」しました。
足立康史議員の解説によると
"最大のポイントは、日本維新の会の政権担当能力を示すということ"
だそうです。
野党第一党をうかがい、政権を担う国政政党を目指すことを示した、と受け止めました。
2.マクロ経済政策が大幅改善
経済政策については、P.18~20が「4.景気対策(短期)」、P.21~34が「5.成長戦略(長期)」となっているのも特徴と言えるかと思います。それぞれの章には、政策の背景説明などがあり、政策立案者の狙いをうかがい知ることができます。
景気対策(短期)
日本維新の会の政策については、P.18~20の該当箇所をご覧ください。消費税を含む減税や、社会保険料の減免、高騰する価格の下押し政策など、国民負担の軽減を提案されていて、好印象です。
ここでは、僕が思う「景気対策」について、まとめておこうと思います。
口シアによるウクライナ侵攻による資源価格・穀物価格などの高騰により、家計負担増や企業収益悪化が日本経済を下押ししています。
2021年10-12月期のGDPギャップは▲3.1%(約17兆円)と内閣府で推計され、2022年1-3月期の実質GDPは▲0.2%とマイナス成長となりました。
有効求人倍率や賃金の伸びは緩慢で、政策対応をしなければ、更に雇用環境を悪化させかねない状況と思われますので、経済安定化政策(金融・財政)の出番だと思われます。
家計負担増を和らげるには、消費減税などが考えられます。
また、2022年4月の消費者物価指数(総合)の主な上昇要因は、電気代などエネルギー価格が、1.38%押し上げている(下図参照)ため、原発再稼働など、エネルギーの供給面への対策も考えられます。
「悪い円安」で大騒ぎしたメディアや、残念な政治家の方々が「物価高」を話題にしているようです。しかし、若田部昌澄日銀副総裁が述べているように「個別価格」と「一般物価」の区別が決定的に重要です。また、金融政策と財政政策の協調で、日本経済を安定化させる必要があると思います。
日本銀行の経済・物価情勢の展望では、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数の見通しについても公表するようになりました。
この見通しを見ると、しばらくは、エネルギー価格が物価を1%程度押し上げる可能性がうかがえます。
成長戦略(長期)
維新八策2022のP.21~34に成長戦略(長期)が書かれています。
個別領域の成長戦略のみならず、セーフティーネット、社会保障、財政政策、金融政策、エネルギー政策などについて、述べられています。
僕は、成長戦略を語れるほど、知識がないため、政府が行う経済政策に対する要望を、述べてみたいと思います。
経済安定化政策(金融・財政)で、完全雇用を成し遂げること
再分配政策に力を入れること(逆進性ある消費税・社会保険料で社会保障を支えることは、残念過ぎる)
国防やインフラ、知識などの公共財を充実させる投資を行うこと
余計な規制は改め、改革すること
「雇用の最大化」に言及をいただいている維新八策2022ですので、ある意味満足です。
敢えて、財政政策、金融政策の個所へ改善提案をしてみたいと思います。
見出しの財政政策・金融政策の前に、「マクロ経済政策の基本方針」を設けて、金融財政・財政政策の協調により、完全雇用を目指す、ことを掲げてはいかがでしょうか。
政府・日銀の共同声明では、
と書かれていますが、“持続可能な財政構造を確立するための取組”と言い訳出来る、消費税率の引上げを行いました。
日本銀行の総括的な検証(2016年)では、「なぜ2%が実現していないのか?」という問いに対して、
消費税率の引き上げによる需要下押しを要因の1つに挙げています。日銀は金融緩和していたのに、「親会社」の財務省・政府が消費増税を行なってしまい、物価目標を邪魔してしまった、と「子会社」が訴えています。親会社の「財務省・政府」は消費増税の影響の「総括的な検証」を行なっていません。
金融政策と財政政策が協調していないと、物価目標達成を通じ、完全雇用を達成することは難しいと思います。
財政・金融の協調による、完全雇用の達成を方針とし、政府・日銀の共同声明を発展的に見直すべきだと思います。
P.22, 165:プライマリーバランス(PB)
僕はPB黒字化の期限を設定することには反対です。なぜなら、PB赤字であっても、名目GDP成長率が金利を上回る場合は、大した問題ではないため、経済成長を重視すべき、という考えです。
ブランシャールによれば
「財政再建」を行う旨の記述がありましたが、それが具体的に何を指すのかをお聞きしたいものです。
IMFの2018年のレポートによれば、
政府債務残高 対 GDP比は、日米独を比較すると、日本が米・独よりも比率が小さい(財政が健全?)ことが分かります。
日 5.8%
米 16.7%
独 19.6%
P.22 166 「財政の見える化」
"発生主義会計と複式簿記を導入"を提唱されており、良いと思います。
加えて、政府の連結財務諸表に日本銀行を加え、統合政府(政府・中央銀行)のバランスシートを公表して欲しいと思います。
1995年に政府のバランスシートを作成した方によると、政府の連結対象に日銀を含めた統合政府のバランスシートを作成したが、財務省の上司に公表を止めるように言われたそうです。そして、2005年まで、公表されず、公表された際には、「なぜか」日本銀行が連結から外されていたそうです。
日本銀行は、日銀法に定められた日本政府の組織の1つであり、
1.株式の過半数を政府が保有
2.正副総裁・日銀審議委員の人事案を提示・国会承認
3.予算に対する財務大臣の認可を得る必要有
4.剰余金のうち、準備金等を除いた額を国庫納付金として政府に納める(令和二年度 1兆1,581億円を国庫に納付)
5.日本政府の国債等発行額 1,220兆円のうち、530兆円(約43%)を保有
と、日本政府の1機関として、財政状況を知るうえで、大きな影響があると思われます。
スティグリッツ教授は
’Cancelling government debt owned by government (BOJ)‘
と述べています。
P.23 167 「異次元の金融緩和」における出口戦略
出口戦略を策定、と記載がありますが、これは、日銀の手段の独立性の観点から好ましいことではない、と考えます。
中央銀行の独立性については、元FRB議長のバーナンキの講演が参考になります。
Central Bank Independence, Transparency, and Accountability https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm
中央銀行の独立性
世界中の政策立案者、学者、その他の情報に通じたオブザーバーの間では、金融政策の目標は政治当局によって確立されるべきであるが、それらの目標を追求する金融政策の運営は政治的支配から自由であるべきであるという幅広いコンセンサスが生まれています。(拙訳)
前者は目標の独立性、後者は手段の独立性と言われます。出口戦略は金融政策手段への影響があるため、そこは日銀に任せるべき、というのが僕の考えです。
P.23 168 日銀法改正
日銀法改正について言及され「雇用の最大化」と「役員の解任規定の新設」を盛り込まれているのは、とても良いと思います。
3.抵抗勢力強い分野にも改革
日本が抱える主な脅威
僕が考える「日本が抱える主な脅威」を挙げると、次の通りです。
新型コロナ禍
不安定な経済
他国を侵略する国家
緊縮策を推進する人々
残念な"情報"を流すメディアや"識者"
3番は国外ですが、それ以外は、国内にある脅威と言え、「内憂外患」状態です。
安全保障、エネルギー政策、教育改革など、既得権者が騒ぎそうな政策課題にも改革を提案しています。
野党第一党、政権与党となり、政策提案が現実味を帯びてくると、維新叩きを始める人が増えてくるのではないか?と予想しています。
たとえば、
既得権者
既得権者の仲間(メディアや"有識者")
プライベートが上手くいっていない一般人
などです。
令和の「検討使」であれば、避けるような話題にも切り込んでいて、日本国民の生命・安全・財産を守ろう、との心意気を感じました。
感想
政策を並べるだけでなく、消費税率引き下げや、日銀法改正などの法律案を具体的に提出するなど、とても期待しています。
また、政治にイノベーションをおこす「オープン政調」や党内勉強会の動画配信などは、政治に興味を持つ方や政治家を目指す方への情報発信・育成につながると考えています。
僕のような築49年の物件では、フルタイムで政治家にコミットすることは難しいです。海外では時間勤務の議員という働き方もあったと思います。日本は様々な課題を抱えており、それを解決するには、情熱と知恵だと思います。多様性ある知恵を集め、政治にイノベーションを起こしてほしいと思います。
某大手コンサル会社の役員をつとめた方が、とある政党の国会議員になったそうです。おそらく、大手のコンサルで役員ともなれば、うん億円プレーヤーだったはず。それがたかだか、うん千万円の年収になる、というのは相当の自己犠牲や思い入れがないとできないことだと思います。
「政治家の身を切る改革」というものも、時代に合わせて、イノベーションをおこす必要があると思います。
日本のために良い方向へ変わろうとする政治家の方々に尊敬と感謝をこめて、「ありがとう」とお伝えします。
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