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国内最大級のオフィス街「品川港南エリア」の未来に求められる、”ローカル性”とは 【岡本 篤佳 氏(寄稿)】

コロナ禍はいつか必ず収束します。そして多くの人が収束後の世界をより良いものとするために、既に動き出しています。

国内最大級のオフィス街「品川」もコロナの後を見据えて動き出す。品川エリアに関連する研究所の「まち」に関連する研究員の皆さんに、未来の品川の姿を伺いました。

岡本 篤佳(おかもとあつよし)
- NTT都市開発株式会社 商業事業本部 商業・ホテル開発部 担当課長

1983年生まれ。千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻を卒業後、NTT都市開発へ入社。商業施設およびホテルの開発とオフィス営業を担当。都市計画視点から具体的な開発コンセプト作成・建築計画・実行を得意とし、過去に品川エリアマネジメントの立上げと推進、福岡での商業施設開発、数十年先の不動産の将来予測、東京大学との都市空間生態学の共同研究、次世代オフィスサービス検討などを担当。

コロナ禍を経験した後に起こる、ワーク・ライフスタイルの3つの変化

世界中の人々がコロナ禍を経験し、社会が一定期間、分散型のワークスタイル、ライフスタイルについて試行錯誤し実践することは間違いないと思います。では、どのようにワーク・ライフスタイルが変化するか、どこまで分散的な社会が発展するかということについて、私(専門領域は、デベロッパーとして、オフィス、商業、ホテルを中心に開発を行うこと)が思うのは以下の通り。

岡本様1

このイメージで伝えたいのは3点。1点目は、ワクチンができた以降を示す”Withコロナ後期”には、2020年のIT先駆者がオフラインとオンラインを使いこなす時間配分よりも、オンラインに寄った時間配分になるし、それがIT先駆者だけでなく一般の生活者にも及んでいるということ。

2点目は、無駄を省くという点でデジタル化、オンライン化はワークと相性がよく、ワークのオンライン化は多種多様に広がるということ。

3点目は、ライフのシーンに置いては、会うことでしか味わえない体験、幸福への渇望があるため、戻っていくということ。

マクロの数字(2020年10月各都道府県データより)で見ると、東京都に住まう人口は約1,400万人。関東圏(1都6県)の人口は4,300万人。H27年国勢調査によると、その1都6県のうち、通学者を除き、23区に通勤している人は、約600万人。

さらに2020年6月に行われた東京商工リサーチの新型コロナウイルスに関するアンケートのうち、従業員のテレワーク率に関するアンケート結果から考慮すると、大企業は55%ぐらいは在宅勤務に取り組んでおり、中小企業はそれより劣って、約25%ぐらいが在宅勤務を実施しているように思われます。

以上のことから、ざっくりですが、一日に生まれてくるリモートワーク人口はだいたい70〜100万人ぐらいと予想できます。具体的にイメージすると…大企業であれば週に2〜3日住居に近い場所でリモートワークをして、中小企業の人は、週に1日は住居に近い場所でリモートワークをするというような感じ。リモートワークの場所は、自宅かもしれないし、サテライトオフィスかもしれないですが、こんな標準=ニューノーマルになると思います。
ここまで、ワーク・ライフスタイルがどのようになるか、分散がどこまで進むかを話しましたが、そもそも今まで、世界のどの都市も、人を集めることで発展してきました。床を縦に積み、人が集めることが、資本主義社会、文化を高度化することと相性が良かったんです。人が集まるところに情報が集まり、自分がどこかの専門性に特化し稼ぎ、その分で、自分ではできない部分を自分以外の人が提供するサービスに対価を支払って享受するというのが都市の一つの側面です。

人が集まるからお店が集積したし、お店には魅力的な物やサービスが集積し、そこでビジネスが成功すれば高所得者も生まれて、都市で稼いた富が地方に再配分されてきました。ただ、グローバルにビジネスができる時代に、人がリアルに集まる場所ではなく、サイバー上で、情報を集積させて、人の視線さえ集めれば(ECなど)ビジネスは発展するようになっていますよね。これはコロナ前からの流れだが、皆さんも体感でおわかりのように、サイバー上は世界とつながっているため、都市の物理空間より、サイバー上の空間の広がりのほうが大きく、人、物、情報が豊かになってきていて、それでも人々の欲求を充足させるレベルまでになってきている、そう言えます。

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まぁ、物理空間がなくなるわけではないし、その物理空間の豊かな体験が人生を豊かにすることには間違いがないわけです。なので、リモートワークが前提となると、物理的に、1st place(住宅)と2nd place(職場)を行き来していた人が、1st placeにいることが多くなるということです。1st placeで時間を多く過ごすことで、ライフ(家族、趣味、遊び、生活など)とワーク(仕事)の境界が曖昧になり、1st placeに週2〜3日過ごす時間が増えることで、2nd placeに集中的に面積を確保する必要性が薄まっていきます。集中的ではなく、分散的に2nd placeが発生するが、どこでもいいわけではなくて、ある程度の機能が集積していて利便性の高い場所がサテライトとして選ばれてくる。

それを、人、情報、物の集積している状態を山に例えると、今の主要なビジネス街は、かなり裾野の広がった大きな山のような形状だったと思います。コロナによって、人が集積せずに分散していくと、その山が低くなるというよりは、角度が急になり、その削られた分の容積が、他のある程度機能が集積していた場所に分散されるだろうと考える。その分散した場所をサイバー空間がつないでいく。

1st placeにも働く場が多少増えるとすると、人の集積に期待して、お店が増えていくことが想像されますが、今度は供給サイドからすると、全体的に分散してお店を出店することは非効率であり、なかなか出店しづらいのではないかと思います。ここを勝機ととらえるか、伸びしろはないと捉えるかは、その企業の強みや特徴次第なのでしょう。

1日約10万人の通勤者が利用していた「品川駅港南口エリア」の今後

品川港南は夜間人口が2万人ぐらいで、通勤者は約10万人ぐらいではと思っています。つまりこの数字は、通勤に利用されている場所ということを意味します。通勤快速などを使った利便性も高いため、神奈川、千葉、埼玉からの利用者も多いはず。港南に住んでいて、港南で働いている人ってどれぐらいいらっしゃるのか、興味深いからぜひ伺ってみたい(笑)。

余談ですが、いつもコロナ禍で利用される品川港南口の映像。約10万人の通勤者の6割が8〜9時に出社をするとすると、10秒で150人、1分で900人ぐらいの人が港南口のレインボーロードを出ていっていることになる。そりゃあ多いわけですよね。

さて、前の仮説で行けば、特に先進の大企業が多い品川という場所は、週に1、2日のリモートワークではなく、2、3日というリモートワークをこなす方が多いのではと思います。

先述の2nd placeの山の例を利用すると、品川港南は、東京都心部の中で見渡しても、大きな山になろうとして、裾野を広げ、高くなろうとする山の一つであると言えます。この品川の山はコロナによる影響で、一旦今の高さを変えずに、山肌を削られるように、角度が強くなる。つまり、人、情報、物がスリム化するかもしれません。

ただし、長期的に見ると東京都心部においてポテンシャルの高い場所であることには変わりはないし、働く、生活するにしても、物理的に風通しのいい場所が求められる中、品川港南という場所は、水辺やオープンスペースを有する場所であるため、この場の魅力は一層高まるのではないかと思っています。

品川をライフにワークに使いこなすことで生まれる未来の価値

最初に述べたように、10年後、20年後のスパンで考えれば、新型コロナウイルスに対応するワクチンができているということを前提としてできるので、コロナ禍の影響は今のインフルエンザ程と捉えられます。

ただ、その頃の我々が、今と決定的に違うのは、オンラインとオフラインの使いこなし方が、想像もつかないほど、多様であり、滑らであり、それが当然の状況になっているだろうということ。今では、ネットのアクセスポイントを探して、リモートワークしようと、カフェやオープンスペースなどを探したりしますが、そんな心配は皆無でしょうね。

そういう将来を前提にして、一旦スリム化した人、情報、物の品川の山ですが、改めてそのポテンシャル、魅力に引き寄せられた今よりも多様な人が集まってくるように思います。
そして、そのときに、品川港南に求められているのは、むしろ、ローカル性だと思います。ローカル性とは、地域固有性であり、地元感。それは、いつも会う馴染みのあの顔。もっと情感的に言えば、帰ってきた感じ、ここがあるから自分らしくいられるんだという感じ。コロナによって、品川という場所が通勤に利用されるだけの場所だったのでは? と気づかれた方が多いのではないでしょうか。あるいは、これは品川に限ったことではないのですが、人との交流が人生を充実させる一つの要素であることに気づかれた方も多いのではないでしょうか。

今、オンラインでどんな時間帯でも、どこからでも繋がれるということを、体感していますが、現代のオンラインという有り様は、目的性を持った繋がり方、あるいは予定調和的な繋がり方しかできないのではと考えます。品川に来れば、いろいろなセレンディピティ(幸運な偶然)に出会える、この街をライフにワークに使いこなすことに誇りを感じられる、この街には友人、好敵手となる人やコミュニティが存在する、など、ローカル性が溢れるまちになれば良いと思います。

品川らしさを作るキーワードは、人と街の関係性から生まれる「未来感」

以前から、他の街(丸の内や、日本橋、渋谷、虎ノ門……等)が持つイメージで比較したときの、品川らしさ作りとして「未来感」と発信してきました。その未来感というのは、空飛ぶ車がバンバン走っている(飛んでいるといったほうが正しいのか笑)というよりも、近未来に必要な考え方(環境意識、社会的意義、ダイバーシティ、人情味)を持つ人々が、テクノロジーを武器に、世界に価値を提供していること。その考え方、行動を応援するかのように、その未来を形にした街が仕上がっていることだと考えています。品川に未来感が相応しいと思っているのは、都心なのに水と緑があり、世界と対峙するテクノロジー企業が集積し、感度が高い住民の方々がお住まいだからです。

私個人の意見ですが、品川で人情味を感じるのは、大きな物と、小さい物とが共存しているからだと思うんです。駅前の大きな広場・建物・街路と、開かれた空。小さい路と、そこから見える切り取られた空。人と距離が近いお店。その関係性は維持してほしいなと思います。

こういう意見も含めて、ボトムアップからの多様な意見が5、6年かけてオンライン上で可視化、投票されていき、最後に実現!ってなると、それこそ未来感ありますよね。


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岡本さんをはじめとした登壇者の皆さま、そして本記事をお読みいただいている思いある”品川港南”地域の皆さま、このエリアにご興味を持っていただいた皆さまと一緒に、エリアの未来に思いを馳せるイベントを2月25日(木)夜に開催いたします。

ぜひ、ご参加ください。当日(オンラインではございますが)お会いできることを楽しみにしております。

ー 品川スタイル研究所

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