見出し画像

短編小説 #6 青の星 I 夢の回廊

僕は青い星に向かっていた
この星は他の3つの星に比べて輝きは少ない
近くから見ても薄暗い星だ
僕はこの星に向かって高度を下げ始めた

氷の星だ
この星は氷で満ちている
大きな雪山がいくつもあり、雪で覆われた森が深くあった

幾つか灯りの灯す場所があり、町の様だ
僕は町の外れに降り立った
僕がここに降り立つの知っていたのか
そこには青いローブを纏った魔女が待っていた
「こんなところまで何しに来たんだ」
とても不機嫌そうだ
「僕はあの星からやってきた。玉座の間の封印を解く鍵を探しにきた」
僕は空を向き橙色に瞬く間星を指した
「そうだろうとも、ここに来る用事はただ一つしかない」
魔女は町へと案内してくれた

町は氷でできていた
ここは寒くは無く、暑くも無かった
ただ氷で出来ているため、地面は滑りやすい

人々の生活が垣間見れる
しかし人を見る事は出来なかった
民家があり、それも氷で出来ている
人の気配があり、家族団欒を過ごしている様だ。しかし人を見る事は出来なかった
道で子供が遊んでいる。しかし人物は特定できなかった
「あんたには見えるのかい?」
僕は黙っていた
「この町の人達はね、魂だけで生きてるのさ」
町で話し込む人、噴水の傍で本を読む男性
僕はそれらを確認する事は出来たが、肉体が見えてなかったのだ
「あなたは違うのか?」魔女に聞いた
「私も町のみんなと同じ様なものさ」
町の人たちも、魔女と歩く僕に気づく人もいたが、あまり気に留めていない様だ
各々の生活を淡々と送っていた

しばらく歩いて、魔女は祠の様な場所に案内してくれた
祠の奥は氷の階段があり、上ると開けた空間があった
四隅に大きな燭台があり、灯った炎が氷の壁に反射して幻想的な場所だ

中央には鏡のついた杖が祀られていた
僕は魔女に目を向けると
「それだよ」と短く返事をくれ、「どうぞ」と言う様に鏡の杖に向かって手を差し出してくれた
僕は鏡の杖の前まで向かう
杖の先端は太陽の様な装飾がされていて、中央は鏡になっている。

僕は鏡を覗き込んだ。すると、僕のシルエットが真っ黒な人形となって映し出された!
僕はびっくりして思わず顔を逸らした。改めて鏡を見ると、そこにはトラの姿になった僕の顔が映し出されていた

「どうした?」魔女が何か勘づいた
僕は首を振り「何でもない」と答えた。しかしその表情は硬いままだった
僕はそっと杖に触れ、手に持ってみた
杖は軽かった
魔女に礼を言い祠の階段を降りようとすると
魔女が僕の肩を叩いた
「今、鏡を覗いたね。黒い影が見えたかい?」
僕はひとつ頷いた
「私も連れていきなさい」
魔女も橙色の星へ一緒に行くという
少し躊躇ったが、僕はそれに同意した

魔女に手を貸し、魔女と共に空を上がっていく
魔女は自分では飛べないが、飛ぶことには慣れているようだ
「あの黒い人は何なんだ?」
氷の土地の小さくなった町を見下ろしながら僕が聞いた
「見たまんまだよ。黒幕さ」
魔女は短くそう答えた
僕は更に高度を上げていく

宇宙空間に差し掛かるとき
「ちょっと待って」
魔女は動きを止め、青色の星に振り返った
「その杖はね。使い方を間違えると大変なんだよ」
魔女が言った
「黒い影が見えたって事は、その兆しがあるっていう事だ」
「今から杖の封印を解く」
魔女と僕は青い星を正面にして、宇宙を浮いていた

魔女が青い星に向かって手をかざす
すると星に変化が生じた
星はみるみると小さくなり、平たく青く輝く宝石となった
青い宝石は魔女がかざしている手に吸い寄せられた
魔女は宝石をそっと手に持つ
「この石で封印を解くんだ。杖を貸してごらん」
魔女はそう言うと、杖の鏡の部分に青色の宝石をはめ込んだ
すると宝石は淡く輝き始め、まるで杖が生きている様だった
淡い光は直線になり、橙色の星を指していた。帰るべきところを知っているかのようだった
「さあてこれでよし。あそこへ向かおうか」
魔女の手を取り僕は橙色の星へ帰っていく

この記事が参加している募集

宇宙SF

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?