【連載小説】風は何処より(26/27)
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2015年、夏。
早いもので、あれから20年が過ぎてしまった。
城所正治郎さんは、3年前に他界した。88歳と長寿だったようだ。
年賀状のやりとりは続いていたため、「兄」である、城所信彦からの喪中ハガキで知った。
久しぶりに六本木の旧跡を訪ねた。
戦いの場であった、六本木の変容にも驚かされる。
防衛庁は、市ヶ谷駐屯地に移転し、旧来の面影はない。六本木ミッドタウンとして、高層ビルがそびえる。
それよりも驚くのは、ミッドタウンの「地下」の広さだ。
さらにその下を走る、大江