【連載小説】風は何処より(13/27)
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準備は機敏に行われていく。
運転手の男が、散弾銃を手にし、ショットシェルと呼ばれる散弾を込めていた。
城所は、先ほどのプラスチックケースに入っていたベレッタ拳銃を渡され、
あらかじめ腰に着装させられていたホルスターに挿入した。
城所は、上着を着て、銃を隠した。
鉄の重みで、ずっしりと感じる。
事務所を出て、エレベータに乗りこんだ。
3人とも服装は、先ほどと変わらない。
真壁は黒のパンツスーツ。
鈴木も同様にスーツ。
城所も、厚手の茶のジャケットに、ズボンという井手達だ。
真壁が、城所に声をかける。
「よろしいですか」
(どうとでも、取れる言葉だ)と城所は思ったが、「あァ」と短く答えた。
もう、後戻りはできない。
鈴木は、エレベータのボタンを操作し、地下4階までノンストップになるようにした。
エレベータを降りた階は、先ほどの駐車場フロアとは違う光景だった。
地下4階は「乗車」専用の階だったようであり、エレベータを降りると、目の前に車が止まっていた。
先ほど乗ってきた車とは違う、白のトヨタ・ハイエース・ライトバンである。
鈴木が先にエレベータを降りて、後部トランクを開け、装備であるガンケースを入れた。
真壁と城所は、スライドドアを開け、後部座席に乗り込んだ。後部座席とトランク部分はつながっていて、行き来もできる。
鈴木が右側の運転席に乗りこみ、エンジンをかけた。
ハイエースは、そのままゆっくりと地上出口に向かって、螺旋通路を上った。
地上に出ると、そこは西新宿の副都心の一角だった。
数年前にできた、新しい都庁舎の前を過ぎ、ここが新宿であることを認識した。
そのまま車は、新宿通りに出て、四谷方面に向かった。
城所老人は、ふと腰のホルスターに手をやった。銃の硬さが手に伝わってくる。
掌に汗をかいていることに気付いた。
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