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ドラマや映画の中に出てくる本の装丁が気になってしかたない 2

「わたし、気になります!」

前にこんなのを書いたけど、引き続き気になってます、映画とかドラマに出てくる本の装丁が。
この世に存在しない、物語の中にだけ存在する本。
物語の本筋とは関係ないことが多いので、ほんとに一瞬しか画面には出ないのだけど、それがすごく作り込まれていたり、よく見ると「あれ?」っていうのもあったり、注目して見るとけっこう面白い。
そんな物語の中の装丁、最近見て気になったものをいくつか。

最近いちばん気になったのは、映画「騙し絵の牙」(2021年)だ。

映画は、崖っぷちの大手出版社の内部で起こる権力闘争と雑誌の生き残りをかけた仁義なき闘い的な話で、企業ものとしても、出版界ドラマとしてもよくできていて、どえらく面白かった。
出版業界を舞台にした映画だけあって、それはそれは本が大量に出てくる。
國村隼演じる大作家・二階堂大作の著作もきちんと装丁が作ってある。

「ステュクスの狼」シリーズのこの堂々たるシリーズ感!
後ろにある「忍びの本懐」は物語にしっかり絡んでくるし、これだけ取ってもすごくよくできてる。
でも映画の中にでは、ほぼ一瞬しか映らない。
いやほとんど映っていない。

映画では登場する本が登場人物くらい重要な存在感を持っていて、例えば主人公達が作る雑誌「TRINTY」の編集長が大泉洋演じる速見に変わってどうリニューアルするのか、表紙のデザインだけでダイレクトに伝わってくる。

リニューアル前、↑こんな表紙だったのが、こうなる。

もう誌面の雰囲気が違いすぎる。
リニューアルしてしっかりメッセージ性を感じさせるデザインになってる。
ちなみにボツ表紙案もしっかり作ってあったり、

とにかく作り込んでいる。
そして決定案がやっぱり良くできている。

映画には出てこない誌面の中身も作られていて、こだわりがハンパない。

物語のクライマックスで出てくるある大きな仕掛けも書籍によるもので、その装丁は一瞬しか映らないのだけど、オブジェとして美しく機能するように本がディスプレイされていて、物体として圧倒的に美しく登場することで、クライマックスの説得力を上げていたり、本の使い方が実によくできた映画だった。
パンフレットを見ると出版社に貼られたポスターなんかもすごく細かく作ってあるし、書店に置かれている本も気になるし、これはソフト化されたあかつきには、じっくりなめつくしたい一作だ。

ちょっと前に見た映画「ミセス・ノイズィ」(2020年)にも気になる装丁が出てきた。

引っ越し先で、隣に暮らしていたのは騒音おばさんだった!?っていう泥沼ご近所バトル映画かと思ったら、まさかまさかの展開の物語で、他者への勝手な決めつけとネットによる暴力と、いろいろ考えさせられる映画だった。
この映画、主人公が作家ということもあってちょっとだけ本が出てくる。
検索してみたら、装丁をデザインした人のtwitterを見つけた。川合空さん。

ピンク地に線画で絵が描いてあって、そうそう、こういう装丁だった。
もしかしたら、もう一冊、作中に出てくる本「種と果実」もデザインしているのかな?
味のある絵だなと思って記憶に残っていたんだけど、東京藝大卒で、イラストの仕事をしていて、役者もやっていて、主演映画「Eggs 選ばれたい私たち」も公開中だとか。多才だな〜。


最近4K版がリバイバル上映された「ガメラ2 レギオン襲来」(1996年)を見て、ああ、こんな本でてきた!って懐かしかったのがこれ!

1作目「ガメラ大怪獣空中決戦」の主人公・長峰真弓(中山忍)が書いた本で、「怪鳥と遭遇した日」。
プロフィール写真で一瞬だけ中山忍が出てくるっていうサービス。彼女はパート2ではここしか出番なしでしたからね。で、パート3で再降臨するっていう。
いやー、やっぱ平成ガメラは偉大な映画だな〜。
改めて劇場で見て大興奮だった。

いったいどんな本なんだ!って気になったのは、映画「小説の神様 君としか描けない物語」(2020年)に出てきた本。

主人公・千谷一也が中学生の時に出版した「灰となって春を過ごす」。
こんな装丁。

気になるのは、帯コピーだ。

文体は研ぎ澄まされた日本刀のように読み手の心へ深く切り込んでくる
それでいて刃は酷く繊細で叩けば折れてしまうそうなほどの危うくも流麗な美しさなのだ──作家・奥村啓司氏
「中学生作家 鮮烈のデビュー作 熱烈推薦続々!」

す、すごい。内容が一切わからない…。
文体が鋭いらしいことはわかるけど、それ以上のことが何もわからない。
いったいどんな本なんだ…!?
主人公は文体はすごい、けど売れない作家という設定。
たぶんこのわかりにくい帯コピーにも売れない原因があるような気もするのだけど、この本の編集者のである野中を演じているのが、ひょっこりはんに似てる?でおなじみの坂口涼太郎さん。

絶妙に頼りなさそうな感じと、やっぱり仕事できないじゃんっていう展開もあって、見事な配役!
やっぱり本を売るのに編集者は大事ってことを再認識する映画だったりする。
実際、ほんとこの映画を見て大きく感じたのは、編集者、大事!ってことだ。
主人公が書いた小説の中身は1ミリもわからなかったけど、きっと原作に答えがあるはず。いつか読もう。

帯コピーは、アニメでも気になったのがあって、それがこれ。
アニメ「裏世界ピクニック」(2021年)

第2話で主人公たちが待ち合わせしていた書店に並んでいた本の装丁。

書店は「書泉グランデ」。
本筋には何の関係もない、原作にも(マンガ版には)出てこないシーンなんだけど、気になったのが一瞬大映しになる「世界の文学」(著ジェニファー・ルーザー)という本の帯コピーだ。

今、息をしているのは私だ。
明日を夢見て何が悪い!皆生きているんだ!
声が聞こえる・・・
新しい息吹はもうすぐそこまで来ているんだよ。
朝日が眩しいな
今日って1部屋空いてたりしますか?
昔から変わらない作り方をしてるんですよ。
さまざまな文学

「ん!?」なんじゃこりゃ。
最初、これが一つの文章だと思ったので、何か意味があるのかと思ってじっくり読んでしまった。
よく考えると、これ、恐らく短編のタイトルなんだろうな。
それぞれ独立したタイトルで…たぶんそうなんだろうけど、短編のタイトルを並べて「さまざまな文学」って…。
なんというか、帯としてはかなり乱暴なような…。
「さまざまな文学」。
なんだろう、この味のある響き。
さまざまな文学。…いつか使いたいフレーズだ。

この書店でのシーン。
すごくなんでもないシーンなんだけど、「アンダーグラウンドの古き森」と「マリオネットの電車は往く」って本の装丁が目をモチーフにしていて、主人公の空魚の見る能力をなんとなく臭わせているのかな?とか、手に取る本が空をモチーフにした装丁になっていて、これから向かう屋上を予感させているのかな?とか、その本のタイトル「君がいるから、世界は輝く」は空魚の心情の表れか?とか、意味ありそうな感じがなかなかいい。
「アンダーグラウンドの古き森」の装丁がなんとなくカラマーゾフの兄弟っぽくて、なんか妙に印象に残るシーンだった。

こんなふうにアニメに書店のシーンが出てくるとちょっとアガる。

「弱キャラ友崎くん」(2021年)の12話で出てきた書店。
主人公友崎くんと本好き同級生がデートで書店を訪れる。

背景の本がよくできていて、すごい作り込みだなって思ったのだけど、これは実際にある本を描いたものだった。

棚に並んでいるのはこんな本。

そんな中で、オリジナルの装丁が2冊出てくる。
本好き菊池風香、オススメの本。

「はじめて出会ったのが君だったなら。」は恐らく恋愛小説。
「カインド・ドックは一人で立つ」は、作中で2人が出会うきっかけになった作家マイケル・アンディの最新刊。
どちらの本も帯はなく、「はじめて出会ったのが〜」は著者名もないのだけど、注目したいのは「カインド・ドックは一人で立つ」の表4側(本の裏表紙)だ。

バーコードの位置と描写が正確だ!
「だからなんじゃい!」ってことではあるんだけど、これ、意外にちゃんとしてないのが多い。
バーコードを入れる位置って、一応決まりがあって背から12mm、天から10mmの位置に入れるって事になってる。

絶対こうしないとダメではないのだけど、これが適当なところに入っているものが多いので、小道具の本できちんとした位置にあるってだけで、なんとなく「よし!」って思ってしまう。

たとえばドラマ「さくらの親子丼」シーズン3(2020年)の第3話目に出てきた本。
父親から虐待を受けている子供の母親で、経済学の研究をしている登場人物・峰尾靖子が書いた著書「キッチンから見える経済学」という書籍。
装丁の表1側はほとんど画面にうつらないので、よくわからないのだけど、どうもシンプルに文字だけが入っているだけみたいで、そんなにデザインされてないのかもしれない。
気になったのは表4側だ。

バーコードがなぜか、背の側じゃなくて、反対にある。
あら探ししてるわけじゃないけど、えーっ、なぜ、そこに…って、ついそこに目がいってしまう…。

ドラマではこういう、ちょっとした登場人物の人物紹介のための小道具として本が使われることがある。
何かの専門家だったり、特徴を説明するのに、本はすごく便利なアイテムだ。

例えば、ドラマ「俺の家の話」(2021年)第7話に出てきた離婚弁護士・玉川マリ子。
登場するや「折れない心 譲れない親権」っていう本を自己紹介代わりに差し出すってシーンがある。
ここにしか出てこないキャラクターなんだけど、この本一発で「親権は絶対渡さない弁護士」で、本を出している「超専門家」という説得力が出る。

装丁写真と本人とのギャップあるあるとか、微妙にふざけた帯コピーとか、さすが「俺の家の話」だ。ちなみに表紙の裏側は何も印刷されてなかった。

この7話には、ほかにも長瀬智也演じる主人公がプロレスラー全盛時代に表紙を飾った週刊プロレスの表紙が出てくる。

プロレスに全然詳しくないので、この雑誌の再現度がどれほどなのかわからないので、今の週刊プロレスを見てみた。

これが今の週刊プロレス。
よく見ると、ドラマに出てきた誌面の「週刊プロレス」のロゴと、今の週刊プロレスとロゴのデザインが違っている。
ドラマオリジナルなのか?と思ってちょっと調べてみた。

これが5年前、これも違う。

もっと前はどうだったんだろうって見てみたら80年代は、ドラマのと同じロゴだった。
調べてみたら、2005年頃のリニューアルまで、このロゴが使われていたみたい。つまりドラマに登場した雑誌は2005年以前のものということだろう。
ブリザード寿の新鋭時代。現在42歳という設定だから、20代の頃か!?
(それにしては写真が老けて見えるけど…)
そうするとちょうど2005年以前ということでぴったり時代が合う。
なるほど、よくできている。
このロゴを見て、おお!ってなる人もいるはずで、そういう細かいこだわりがしっかりされているのは、なんだか嬉しい。

キャラクターの設定の肉付けとしての本の使い方では、「天国と地獄 サイコなふたり」の第1話目にも登場人物が書いた本が出てきた。

連続殺人の容疑者であるベンチャー企業の社長、日高陽斗(高橋一生)が書いた本
「ノー・ウォーク ノーライフ」という本。

いくら「歩くことが趣味」でも、よくこの企画が通ったな、という本だ。
帯コピーからしても、ビジネス書でもかなり自伝的な内容のようだ。
本を出すくらい「歩くのが好き」ということなんだろうけど、そんな内容でよく本がだせたな。つまり、そのくらい注目の人っていうことだろう。
この「歩くのが趣味」っていうのが1話目で捜査が進展する鍵になる。

事件に本が関わる話だと、「相棒19」の第18話「選ばれし者」もそうだった。
「魔銃録」という人気小説をめぐる話。
ありえないはずの同一の拳銃による殺人が起きて、小説に出てくる魔銃が実在して増殖しながら人を殺しているのでは?という疑惑が浮上する話。

シンプルながらもジャンル感は伝わる装丁。そして、さすがは相棒、表紙の裏までしっかり作ってある。バーコードの位置がバッチリだ!
こんなふうにがっつり本が絡んでくる話だと、装丁にも力が入って作られる感じがして、ちょっと嬉しい。

前期のドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」については前回、別途書いたけど─

これ以外にも、最近は主人公や登場人物の1人に作家がいるドラマがけっこうあって、例えば「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」とか、最近始まった「レンアイ漫画家」とか、あと「仮面ライダーセイバー」もそうだったり、つい先日見てきた映画だと「まともじゃないのは君も一緒」にも本が出てきたな〜とか、いろいろ気になっているものがあったりして、そのへんはまた別の機会に。

それでは、また。


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