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子供の習い事はいつまでにさせるべき?絶対音感が身につくのは何歳まで?

モーツァルトが8歳で最初の交響曲を書いたり、スティーヴィー・ワンダーが11歳で音楽事務所「モータウン」と契約したりするなど、有名な天才音楽かが若くして才能を開花させていた話はご存知でしょうか。

可愛い我が子が生まれると、英才教育という名目で高い教育費用を支払い
小さい頃から音楽レッスンや学習塾、スポーツなどに取り組ませる親は多いかと思います。

今回はタイトルの通り脳科学の観点で、絶対音感や空間把握能力といった重要スキルの習得やそのための習い事は、何才までにすべきか?ということについて書いていきたいと思います。

※本記事はなるべく情報の正確性を高める努力はしておりますが、あくまで現時点での脳神経学的観点でのガイドラインを述べているだけであり、情報の正確性を担保するものではありませんのでご了承ください。*2022.3.24

脳神経の繋がりは2歳をピークに減っていく

脳の中では神経同士の繋がりを元に情報伝達をしていくわけですが、人間は生まれた直後は脳神経のシナプス結合があまりなされていません。

しかし産まれた直後から現実世界の様々な刺激にさらされることで、脳内では爆発的なシナプス結合が始まり、2歳〜3歳までものすごい勢いで増えていきます。

当然ながらシナプス結合が増えるということは、それだけ情報の伝達量も多くなってしまうため、脳での情報処理のために使うエネルギー消費量も半端じゃありません。子供がよく食べてよく寝るのは、必要なエネルギーを確保しても、すぐに電池切れになってしまうからだと言えるでしょう。

ここで一度どれくらい脳神経の結合が減っていくか見ていきましょう。

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年齢に伴う脳のシナプス結合の変化

上記は36週目の懐胎から6歳に至るまでの脳シナプス画像ですが、2歳をピークにして必要ないと判断された結合回路はどんどん削り落とされていっているのがわかります。(2歳と6歳では密度がかなり違うのがわかる)

このシナプス結合の刈り込み現象を「プルーニング」と言います。

プルーニングは2歳ころから始まり、成人になる頃には脳のシナプス結合数はピーク時の約59%程度しか残らないということも分かっています。*2

そして残念ながら脳神経細胞の量も減っていき、だんだん歳をとるにつれて特に前頭葉や頭頂葉の方からどんどん「萎縮」していくことがわかっており、重さも5~7%軽くなってしまうという結果も出ております。*3 

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年齢差による脳の密度の違い
78歳になるとかなりシワが大きくなり萎縮してるのがわかる

絶対感覚を覚えるには遅くとも3歳まで

上記の通り、脳のシナプス結合は2歳〜3歳をピークに減少していきます。また感覚器官の中でも聴覚は視覚などと異なり、胎児が子宮の中にいる頃から聴覚刺激を受けるため発達の開始が他と比べて早く、生後5ヶ月頃には聴覚器官としてはほぼ完成していると言われております。*4

したがって生後5ヶ月頃〜3歳にかけて期間で絶対音感に関わる教育をするのが合理的であるということが言えるでしょう。

ただ、この記事を読んで「あぁ、我が子は3歳を過ぎているのでもう遅いのか・・・」と落ち込むのはまだ早いです。

安心してください絶対音感に対して「相対音感」と言うものがあり、それを鍛えることである程度の音感を習得することができます。

相対音感は例えば「ド」という音の高さに対して「ミ」が、音の距離としてどれくらい離れているかを認識する感覚能力になります。大人になってから楽器を練習してある程度弾けるようになるのは、この相対音感を鍛えることである程度の音楽の素養が身につけることができるからです。

他の習い事は何歳までがいい?

学習時期には「臨界期」というものがあります。これは”特定の能力”を身につけるための重要な時期のことであり、この時期を逃すと学習・成長の効率が非常に悪くなります。

脳科学の観点から言うと、絶対音感の臨界期は「3歳頃」と言えますが言語についてはどうでしょう?

1:英会話は10歳までに開始するべし

結論から言うと、第二言語含めた言語習得は10歳頃までに開始して18歳までに完了する必要があると言うことがマサチューセッツ大学の研究結果でわかっております。*5

言語習得の臨界期については少し古い説で「13歳」と言うものもありますが、いずれにせよ小学校の段階で英会話には触れておく必要があると言えるでしょう。

言語取得の臨界点がこの年齢であることを裏付ける理由として、一つの事件があります。それは1970年にアメリカ合衆国で起こった少女監禁事件です。

ジニーという少女が精神異常の父親によって、13歳になるまで自宅の地下室に軟禁状態で育つと言う特殊な家庭環境で育ったのですが、彼女が警察に保護された際、言語を理解することができませんでした。その後社会復帰に向けて言語発達のためのプロジェクトチームが組まれましたが。結局彼女が発する言葉は2、3歳以上のレベルまでしか成長できなかったと言います。
*ボキャブラリーの数でいうと200~300語

一方、1938年に別の事件で保護された6歳の少女イザベルは、それまで言語が話せない母親とずっといたため保護時には言語能力を持っていませんでしたが、劇やパントマイムを取り入れた言語訓練の結果、普通に話し言葉を話すレベルまで回復したと言われています。

つまりこの13歳という時点で学習するのは遅すぎるが、6歳くらいであれば全然問題なくゼロからでも言葉を覚えることができるというのが過去の実例からわかります。

2:空間認識能力トレーニングは8歳までに開始すべし

空間認識能力は(空間認識力・空間認知能力・空間把握能力)生きていく上で非常に重要なスキルになります。

これが欠けていると地図や図形の見方が分からなくなるだけではなく、スポーツや芸術においても苦戦し、ひいては車との距離感がつかめず交通事故に遭うようなリスクさえも増えてしまいます。

そしてその空間認識能力は小脳と密接に関係があり、小脳の発達は3〜8歳頃に活発になると言われております。

なのでこの時期にはゲームではなく、外で遊んだり、スポーツをしたり、キャンプをしたりというようなアクティビティを盛んに取り入れることで、子供の空間認識能力を養うのが良いかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回記事をまとめると、習い事としては以下の年齢を意識すると良いかと思います。ぜひ皆様の自慢のお子さんが才能溢れる子に育つように何か役に立つ情報になればと思っております。

音楽教室(絶対音感の取得):3歳までに完了
英会話レッスン(空間能力言語能力):10歳までに開始
スポーツレッスン(空間把握能力):8歳までに開始

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---------------------以下参考文献-------------------------

*1: https://embrace-autism.com/synaptic-growth-synesthesia-and-savant-abilities/

*2:  Excess of Neurons in the Human Newborn Mediodorsal Thalamus Compared with That of the Adult (Abitz et al., 2007)

*3: https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/nou-keitai.html

*4:https://kobe-shinwa.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=2588&file_id=22&file_no=1

*5: https://news.mit.edu/2018/cognitive-scientists-define-critical-period-learning-language-0501

*6: https://www.jstage.jst.go.jp/article/secondlanguage2002/3/0/3_3/_pdf


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