見出し画像

【とにかく長い!でも面白い!長時間映画6選】

コロナで外出自粛が続く今日この頃、映画好きの皆様はいかがお過ごしであろうか。

映画館に行けない代わりにNetflixやAmazonプライムなどの配信コンテンツを観て過ごしてる方も多いことだろう。かく言う筆者もDVDなどを観て日々を過ごしている。

こんな日々が続くと、どうしても鬱々とした気持ちになりがちだ。しかし、こんな時期だからこそ、敢えて普段出来ないことを提案したい。

画像1

それが、上映時間の長い映画を観るということ

上映時間の長い映画というと観るのに構えてしまう&時間が足りないことが多い。

しかし家で過ごす時間が多い今だからこそ、普段観ないような映画にチャレンジすることができるのではないだろうか。

そういう訳で、ここでは筆者のお勧めの長時間映画を挙げていきたい。今回は下記の3つの条件に従って挙げていく。

画像17

【アイリッシュマン】上映時間:3時間30分、製作国:アメリカ

アイリッシュマンポスター画像

まずは『タクシードライバー』(1976年)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)などの傑作で知られる巨匠、マーティン・スコセッシ監督の最新作。

アメリカで実在した殺し屋の半生を描いた作品で、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演アカデミー賞作品賞をはじめ複数の賞にノミネートされた。

製作会社がNetflixという事でも話題になった作品だ。この作品の詳しい感想を書いたので、興味ある人は下記の記事を読んで欲しい。

そもそもマーティン・スコセッシ監督は、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年)の2時間59分をはじめ『沈黙』(2016年)の2時間42分、『シャッターアイランド』(2010年)の2時間18分など、これまでも多くの長時間作品を撮っている。今作は満を持して3時間30分という長尺だ。

二大俳優の共演はもちろん、ジョーペシなどの名演の演技だけでも観る価値は十分、どの場面を観てもすべてが画になるのは、巨匠&名優の組み合わせだからこそ成せる業だろう。

画像3

登場人物の多さを含め、情報量もとても多いので一回の鑑賞では内容を理解しきるのは不可能だろう。

長さを感じなかったというと嘘になるが、その分見応えは充分。ちなみにマーティン・スコセッシ監督、最近のニュースで、次回作も再びストリーミング配信作品となる可能性が高いとの情報が入ってきている。

次回作は何とレオナルド・ディカプリオとロバート・デ・ニーロの共演。(追記:ディカプリオ主演で『キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン』という新作の情報が公開された。

デ・ニーロに関しては不明)製作はNetflixとAppleで検討を打診してるらしい。こちらも楽しみだ。
本作はNetflixで鑑賞可能だ。

【象は静かに座っている】上映時間:3時間54分、製作国:中国

画像4

中国のフー・ボー監督のデビュー作にして遺作。

中国の地方都市を舞台に四人の男女の一日を追った人間群像劇で、感想は以前書いているので興味ある人は、下記の記事に目を通してほしい。

監督デビュー作で3時間54分という長尺だと、どうしても観るのを構えてしまいがちだが、本作は一度観始めたらその世界に引き込まれ目が離せなくなっていく。

実はフー・ボー監督はタル・ベーラ監督に師事した経歴をもっており、作中で何度も出てくる長回しや構図などはタル・ベーラ監督の作風を連想させる。作品全編にわたる不穏な雰囲気と緊迫感が素晴らしく、観ていてダレることもない。

画像5

中国の下層社会のどうしようもない現状を描いている辺りは社会派映画の要素もあり、それでいて観ている側の胸に突き刺すような痛みは青春映画でもある。

本当に素晴らしい作品だけにつくづく亡くなってしまったのが悔やまれる監督だ。

Rakuten TVほか、dTV、U-NEXTにて配信中(2020年10月12日時点)

【クーリンチェ少年殺人事件】上映時間:3時間57分、製作国:台湾

画像7

台湾が生んだ天才、故・エドワード・ヤン監督の大傑作。

50~60年代の台湾の社会背景を舞台に、実際に1961年に起きた中学生同士の殺傷事件をモチーフにして描かれた青春映画。
映画好きを自称するなら一度は観ておかなければならないとまで言われる伝説的作品だ。

当時の国民党独裁下の台湾の社会状況を描きながら、不良少年同士の抗争劇、少年の淡く残酷な恋の顛末など、様々な要素が複雑に絡み合っており、今作も一度観ただけでは全てを理解しきれない奥深い作品となっている。

少年同士の抗争などは、マーティン・スコセッシ監督の作品に通じるものがあり、権利関係が複雑だった本作をスコセッシ監督が、4Kレストア・デジタルリマスター版で製作している。

画像8

エドワード・ヤンという監督の作風は冷たさを覚えるほど、構図やカメラワークが完璧で、映画を観ていると時々その完璧さに見惚れてしまう。
鏡や影の使い方、また今作では闇の使い方などがとても印象的。

特に筆者個人が好きなのはブラスバンド部の演奏がバックで流れる中での告白の場面。この映画の事を考えると、必ずこの場面を思い浮かべるほど、印象深い場面となっている。

筆者が、初めて3時間超えの作品を劇場で体験したのも本作だと記憶しており、そういう意味で本作は非常に思い出深い作品である。

DVD、Amazonプライムほか配信サービスで本作は視聴可能だぞ。

【愛のむきだし】上映時間:3時間57分、製作国:日本

画像9

日本が世界に誇る鬼才、園子温監督の代表作。第59回ベルリン映画祭カリガリ賞・国際批評家連盟賞受賞作。『映画芸術』2009年日本映画ベストテン第1位。

園子温といえば、まさしく「情熱」と呼ぶに相応しい、ほとばしるエネルギーと疾走感溢れる作風が魅力。3時間57分という長尺もあっという間。この作品を観れば体感時間という存在を身に染みて感じる事ができるだろう。

歪んだ親子関係に、新興宗教に盗撮…並んだキーワードだけ見れば、カオスとしか言いようがないのだが、作品を観るとその全てが魅力的要素として輝いているから不思議。まさにこの当時の園子温監督でしか撮れなかった傑作だ。

また日本映画界で活躍する名女優、満島ひかりと安藤さくらの若かりし日の姿を観れるのも貴重。特に満島ひかりは、この作品をきっかけにスターダムにのし上がっただけあって、この映画での演技、存在感は特に抜きんでている。

画像10

DVD、Amazonプライムほか、配信サービスで本作は視聴可能だ。

DVDだとこの映画のメイキング映像が特典で観れるのだが、園子温監督が、撮影現場で満島ひかりを追い込み姿が今も記憶に残っているくらい印象的。

『気球クラブ、その後』(2006年)で、園子温作品に出演した永作博美は、「自殺を考えた」という程、園子温監督の追い込みは強烈らしいのだが、このメイキング映像からもその片鱗が伺える。

去年、心筋梗塞で緊急搬送された園子温監督だが、現在は公の場に姿を現し、対談もするなどすっかり回復した様子。

Netflix映画として製作・配信された『愛なき森で叫べ』が、『愛なき森で叫べ : Deep Cut』としてシリーズ化するなど、ご本人の活躍もいたって順調。
個人的には、何年も前から話題にあがるニコラス・ケイジ主演の作品を早く見たいものだ。

【ファニーとアレクサンデル】上映時間:5時間11分、製作国:スウェーデン・フランス・西ドイツ合作

画像11

スウェーデンが生んだ巨匠イングマール・ベルイマン監督が、自身の故郷である地方都市ウプサラを舞台に撮りあげた自伝的作品。

これまで挙げた作品から上映時間も一気に上がり5時間11分超えの長尺となる。

物語は劇場を営む一族の2年間を2人の孫の目を通じて描かれる群像ドラマ劇だが、冒頭から、その豪華絢爛さ構図の素晴らしさに圧倒されてしまう。『第七の封印』(1957年)や『沈黙』(1963年)など難解な作品もある監督だが、監督の自伝的作品ということもあり、比較的分かりやすい内容となっている。

画像12

インターバルを挟むほどの長さではあるが、その分観終わった後の満足感と達成感は格別。

この作品、恵比寿ガーデンシネマ、阿佐ヶ谷ユジクで年末に上映されているのだがそれもわかる。まさに年末観るのに相応しい映画。

もし今年の年末、観れたら筆者も本作を年納の作品にしようかと思っている。本作は、DVDで鑑賞可能となっている。

【サタンタンゴ】上映時間:7時間18分、製作国:ハンガリー、ドイツ、スイス合作

画像13

最後に紹介するのは、ハンガリーの巨匠、タル・ベーラ監督が15年もの歳月を費やした長編大作『サタンタンゴ』だ。上映時間も『ファニーとアレクサンドル』の5時間26分を更に凌駕する驚異の7時間18分である。

筆者はこの作品を昨年の年末にアップリンク吉祥寺で鑑賞したが、途中で2回のインターバルを挟んで観た作品もこれが初(ちなみにこれは去年の最後を締め括る作品となったのも良い思い出)

ここまでの長時間だと、もはや観るというよりは体験する事に一つの価値があるように思える。演出も独特で7時間超えという長尺に対し、約150カットという驚異のカット数の少なさ。ゆえに長回しがとにかく長い。

「人が歩きだしたら長くなると思え」という感想を事前に目にしていたが、本当その通りで、人が歩きだしたら、地平線に消えるまで延々と映しつづける。

前半はこのテンポになれなくて、何度も瞼が落ちそうになった。特に3章の爺さんの命懸けのおつかいパートは「自分は一体何を見てるんだろう?」とさえ思った。

画像14

しかし、この独特なテンポに慣れてくると、この映画はこの長回しじゃなきゃ成立しないんだなという気分になってくるから不思議。

タンゴのステップに呼応した12章の時系列を弄った構成の妙が面白い。
パンプレットを読んで、ハンガリーの社会状況などの情報は補完できたが、物語自体からは、人間の生の無常さを感じた。

やたら歩き続ける長回しが多いのもそういう意味だと思うのだけどどうだろう。

7時間の映画を観る。確実に言えることは、これで大抵の長時間映画には耐性がつくという事。もし機会があれば是非チャレンジしてみてほしい。

壁を上る学生

DVD、Amazonプライムほか、配信サービスで本作は視聴可能だ。

【まとめ:世界で一番長い映画について】

いかがだっただろうか。
世界にある様々な長編映画を挙げてみたが、ここに挙げたのはあくまでも筆者が鑑賞した限られるためほんの僅かである。

挙げてない所で、有名な作品だとベルナルド・ベルトルッチ監督の『1900』(1982年)の5時間16分や、濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(2015年)の5時間17分など、実にたくさんの映画がある。

もし気になってるけど、上映時間の長さなどで観るのを控えている作品があるなら、是非こういう機会を逆手に取って観てみるのはどうだろうか?

筆者もこの機会だからこそ見れない作品に敢えてチャレンジしようと思うぞ。

最後に、この機会に世界で一番長い映画というものを調べてみた。
スウェーデンのアーティスト、アンダース・ウェバーグが監督した映画『アンビアンス』という作品が、何と上映時間が720時間という長長長尺という凄まじさ‼

予告編が公開されているが、予告編だけで7時間20分もあるというのだから驚きだ。

画像16

この映画、まだ完成はしておらず、何でも2020年12月31日から30日間かけて世界同時上映を計画しているそう。

しかも上映終了後には、全ての映像データが消去されるそうなので、観れる機会はまさしく1回のみ。

日本で観れる機会があるかは謎だが、まさしく伝説の映画となりそうだ。



この記事が参加している募集

読んでいただきありがとうございます。 参考になりましたら、「良いね」して頂けると励みになります。