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失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

全章通して事実、実例を元にした説明。
表面的な事件の裏にある、映画のような複雑な事実。
各事件、事故のドラマを読むだけでも物事は安易に決めつけてはいけないと思える。

失敗と向き合う文化のない医療業界。
失敗から学び続ける航空業界。

人が進化するためには「失敗とどう向き合うか」が重要。
回避可能な医療過誤による死亡=アメリカ国内だけで毎年40万人
人は「自分自身」から失敗を隠す。
失敗を恐れて曖昧なゴールを設定する。
達成できなくても避難されない。
人間には失敗を記憶から消し去る能力がある。

医療業界には「言い逃れ」の文化が根づいている。
クローズド・ループ現象
失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象や状態。
政府、企業、病院、日常生活など現代社会のいたるところで見られる。

航空業界は失敗と誠実に向き合い、そこから学ぶ文化。
失敗は特定の誰かを避難するためではなく、関係機関全ての学習のチャンスという姿勢。
失敗は「データの山」
事故の調査結果を民事訴訟で証拠として採用することは法的に禁じられている。
事故が起きたら第三者機関に調査依頼。
当事者はありのままを報告しやすい。
情報開示性を高めている。
報告書は一般公開。
世界中のパイロットは自由にアクセスできる。

※米第32代大統領夫人、エレノア・ルーズベルトの言葉
「人の失敗から学びましょう。自分で全部経験するには、人生は短すぎます」

「ミスの報告」を処罰しない
パイロットはミスを起こすと報告書を提出。
10日以内なら処罰されない。
機体システム的にもエラーレポートが送信される。
データシステム的に操縦士が特定されない仕組みになっている。
クルーたちは何も恐れずに失敗を認める事ができる。

失敗にある特定の「パターン」
最初の失敗に集中してしまうと、直近の危機に反応できなくなる。
集中は時間の感覚を失わせる。
事故が起こるときは「集中している」時。
コミュニケーション問題。
社会的な上下関係は、部下の主張を妨げる。
緊急時に強く注意喚起できなくなる。

現在のコックピット内コミュニケーション
CRM(クルー・リソース・マネジメント)訓練の導入。
クルー間の効果的なコミュニケーションが焦点の訓練。
補佐的立場のクルーは上司に自分の意見を主張する手順を学ぶ。
「PACE」の手順。
Probe(確認・探求)
Alert(注意喚起)
Challenge(挑戦)
Emergency(緊急事態)
機長は聞くこと、指示を出す技術を学ぶ。
時間間隔が失われる問題は責任の分担をシステムに組み込んで対処。

※「人的ミス」の多くは設計が不十分な仕組みによって引き起こされる。

失敗から学ぶことは最も「費用対効果」がよい
失敗を調査することに疑問を持つのは間違い。
調査時間を惜しだ結果、失うものは大きい。
失敗を見過ごせば、学習も更新もできない。
答えがわかっている失敗=システム改善の道標。
答えが変わらない失敗=新しい発明を促す。
見えないデータも考慮する。
例)生還した爆撃機の撃たれた場所=撃たれても大丈夫な場所。
物事の奥底にある真実を見抜いてやろうという意志が不可欠。

※事故から全員無事に生還させた機長の言葉
我々が身につけたすべての航空知識、すべてのルール、すべての操縦技術は、どこかで誰かが命を落としたために学ぶ事ができたものばかりです。(中略)大きな犠牲を払って、文字通り血の代償とした学んだ教訓を、我々は組織全体の知識として、絶やすことなく次の世代に伝えていかなければなりません。
これらの教訓を忘れて一から学び直すのは、人道的に許されることではないのです。

科学は常に「仮説」である
仮説は実験や観察によって反証される可能性がある。
科学は失敗から学ぶ学問。
科学=反証可能
疑似科学=反証不可能
何にでもあてはまるものは科学ではない。
疑似科学では失敗することが不可能な仕組みになっている。
あらゆるものが理論の裏付けになってしまう。
あらゆるものが当てはまるということは、何からも学べないことに等しい。
科学は通説に意義を唱える。
仮説と検証を繰り返して進歩を遂げてきた。
1万時間のルールは必ずしも当てはまらない
職種によっては訓練や経験が何の影響もない
心理療法士は免許を持つプロと研修生で治療成果に差がない。
患者の精神機能を改善するという結果はすぐには答えが出ない。
経過観察での判断になる。
治療終了後も良好かどうかはわからず、フィードバックが得られない。
タイミングを逃したフィードバックは、直感的判断を向上させる効果が乏しい。
フィードバックのない訓練や経験を何年積んでも何も向上しない。

人はウソを隠すのではなく信じ込む
不都合な真実と解釈の塗替え
自分の信念と相反する事実を突きつけられる。
→自分の過ちを認めるよりも事実の解釈を変えてしまう。
「認知的不協和」
信念と事実が矛盾していることで起こるストレス状態。
人は自分が頭が良いと信じている。
信念と違う事実=自尊心が脅かされる。
事実を否定して自分に都合の良い解釈をつける。
事実そのものを無視する。忘れる。
努力→失敗→傷つきたくない。忘れたい。逃げたい。
=自分は間違っていなかった。正しかったと思い込む。
「自尊心」が学びを妨げる
有名なら有名な人ほど、失敗から学べなくなる。
専門家、著名人ほど失敗を自己正当化する。
生活も自尊心も言動に大きくかかっている。
失敗から学ぶ機会が失われている。
企業の上層部に行けば行くほど失敗を認めなくなる。
自分の完璧主義を詭弁で補おうとする傾向が強い。
最も失うものが多いトップの人間が、最も失敗から学べない。
バイアス(思い込み)が問題になる
自分が「わかっている(確証バイアス)」と思いこんでいることしか反証しない。
まだ「わかっていない」ことが見いだせなくなる。
自分が見つけたいものしか見つけられなくなる。
間違っている者にさえ、自分に都合の良い証拠を見つけてしまう。

「単純化の罠」から脱出せよ
「単純化」が「正しいかどうかを試してみる」の妨げになっている。
→どうせ答えはわかっているのだから試す必要はない。
進化とは自然淘汰、「選択の繰り返し」によって起こる
適応の積み重ね=累積淘汰(累積的選択)
机上のアイデアがどれほど秀逸でも、成功のためには実際の試行錯誤が欠かせない。
自由市場は小さな失敗がシステムの潤滑油となっている。
企業の失敗は他の企業の学びになる。
失敗から生まれたアイデアが消費者の利益となる。
自由市場のシステムは失敗が多からこそうまくいく。
「信念を貫く勇気」と自分を試して「成長しようとする謙虚さ」が重要。
「講釈の誤り」
後付で因果関係やストーリーを組み立てる。
例)経済専門家の市場値動き解説。
   →納得できるが、いつも結果論ばかり。
  なぜ最初から予測できなかったのだろう?
完璧主義の2つの罠
①ひたすら考え抜けば、最適解を得られるという誤解。
仮説をテストしようとしなくなる。
②失敗への恐怖。
閉ざされた空間の中で行動を繰り返し、外に出ていこうとしない。
クローズド・ループ現象。

量>質
大量生産=常に試行錯誤を繰り返し続ける。→得られるものが多い。
最高品質=頭で考え過ぎた挙げ句に時間切れ。→時間の浪費と理論だけが残る。
フィードバックからはじめる
早い段階で試作品をだす。
→当たり→反応を見ながら改良。
→ハズレ→方向性の変更or計画破棄。

〇〇しなかったら、起こっていたかもしれないこと(反事実)
「反事実」は目に見えない
サイトデザインを変えたら売上が伸びた。
デザインを変えたから利益が出た?
ライバル会社が潰れた。
金利が下がった。
雨の日が続いてオンラインでの買い物が増えた。
→デザインを変えていなかったらもっと売上が伸びていたかも?
売上が伸びた原因はもっとほかに隠れていたかもしれない。
臨床試験などで行われる「ランダム化比較試験(RCT)」
対処を受けた「介入群」
対処を受けない「対照群」
余計な影響因子を排除し、対処を受けた、受けないでの結果を検証。
本当に対処が結果を左右したかどうか、原因と結果を明白にする試験。
RCTの結果は試験直後の結果だけでなく長期的に広い目で観察が必要。
効果があっても根本的な解決になっていない。
別の問題ができた。
時間が経ってから悪化した等。

難問はまず切り刻め
「一発逆転」より「百発逆転」
いきなりホームランを狙ってはいけない
「マージナル・ゲイン」
小さな改善の積み重ね。
大きなゴールを小さく分割。
一つひとつ改善して積み重ねていく。
大きく前進できる。
大きな目立つ要素より、何百、何千という小さな要素を限界まで最適化。
成功はどれだけ効率のいい最適化ループを作れるかにかかっている。

「犯人探し」バイアスとの戦い
脳に組み込まれた「非難」のプログラム
「非難の心理」
間違いが起こると「誰の責任か」を追求する傾向。
非難は物事を過度に単純化してしまう。
学習の力を妨げ、問題を深刻化させる。
「失敗は学習のチャンス」ととらえる組織文化が重要。
起こったことに対して調査しようという意志が働く。
「懲罰」と「放任」
懲罰文化=責任を問われればミスを隠す。
放任文化=責任を問わなければ怠慢になる。
適切なバランスを保つことが課題と考えられている。
適切な形での責任追及は報告を妨げない。
非難ではなく、丁寧に調べる姿勢。
責任追及を恐れず報告。プロとして堂々と事情説明。
処遇を判断する立場の人間を、スタッフは信頼しているか?が重要。
オープン、勤勉になる。
脳には一番単純で一番直感的な結論を出す傾向がある。
プロジェクトにおける「非難の6段階」
1.期待
2.幻滅
3.パニック
4.犯人探し
5.無実の人を処罰
6.無関係な人を報奨
公正な文化では失敗から学ぶ
開放的な組織文化の構築。
早慶な非難をやめる。

※哲学者カール・ポパーの言葉
 「真の無知とは、知識の欠如ではない。学習の拒絶である」

究極の成果をもたらすマインドセット
成長型マインドセット
知性も才能も努力によって伸びる。
固定型マインドセット
知性や才能は生まれ持ったもの。変わらない。
失敗は「してもいい」ではなく「欠かせない」
自分の間違いに意識的に着目する反応が強い。
失敗への着目度と学習効果は相関関係。
学べる人と学べない人の違いは失敗の受け止め方。
失敗に対する考え方
成長型マインドセット=自分の力を伸ばすために欠かせないもの。
固定型マインドセット=自分に才能がない証拠。
成長型マインドセットは「合理的」にあきらめる
自分の「欠陥」を晒すことを恐れも恥もしない。
自由に諦めることができる。
無駄な努力で人生を無駄にしない。
足りないなら別のことに挑戦すればいい。
辞めるのも変えるのもどちらも成長と捉える。

※アメリカ自動車王ヘンリー・フォードの言葉
 「失敗は、より賢くやり直すためのチャンスにすぎない」

日本には起業家が少ない
年間起業率はOECD(経済協力開発機構)諸国38カ国の中で最下位。
日本では失敗は不名誉なものという考え。
自分だけでなく家族にとっても恥になる。
アメリカは8人に1人が企業活動に従事している。
先進諸国20カ国で起業失敗に対する恐怖心
アメリカ=最も低い
日本=最も高い

すべてを【失敗ありき」で設計せよ
・あなたは判断を間違えることがありますか?
・自分が間違った方向に進んでいることを知る手段はありますか?
・客観的なデータを参照して、自分の判断の是非を問う機会はありますか?
すべて「いいえ」と答えた人は間違いなく学習していない
問題は「やり方」
フィードバックの質と量を高める環境づくり。
失敗型アプローチ(事前検死)
プロジェクトはが失敗した状態を想定した検証方法。
失敗した理由を書き出し、理由がなくなるまで発表し続ける。
埋もれてしまう理由も浮かび上がってくる。
プロジェクトの中止ではなく強化のため。
事前に有益だと感じる微調整がされる。


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