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《詩》僕が跳びはねる理由

この詩は映画「僕が跳びはねる理由」を見てインスピレーションを得て以前に書いたものです。詩でもあり感想文でもあります。自閉症の方々が見ている世界を再現して映像にしたもので、彼らの苦悩、葛藤、生き辛さがひしひしと伝わってきます。あっという間に見入ってしまい、思わず涙が出てきました。その世界の片鱗だけでも私の言葉で言語化したいと思い、詩の様なものを書きました。



何かが鳴っている

何かが騒いでいる

また 何かの声が響く

何かが見えている

何かが動いている

また何かが襲来する

ああ今も溺れてしまう サイケデリックな有象無象に

ああずっと飲み込まれている 嵐のような衝動に

助けてくれ どうにかしてくれ

怒らないでくれ 悲しまないでくれ いっそのこと放っておいてくれ

今、何でも良いから何かをしなければいけない

叫ばなければ

声を上げなければ

動かなければ

走らなければ

僕が飲み込まれてしまう

僕が私でなくなってしまう

世界が私を侵食していく

かろうじて浮かんだ言葉は空気に溶けてしまう

待ってよ僕はここにいるだろ

 

この世はずっとうるさいまんまだ

空に、空に逃げられたらいいのに

どこか誰も何も騒がない、理想の地に逃げ出して行きたい

悪魔でも何でも良い

自分以外の何かのせいにできたらいいのに

全部を受け止めるには、世界は大きすぎる

ずっと生き続けるには、世界は苦しすぎる

僕がバケモノなんじゃない、世界がバケモノみたいなんだ

 

でも、ああどうか、話を聞いてくれ

途切れ途切れの言葉だけでも、話させてくれ

こんなにたくさん感情があるのに

何一つまともな言葉になってはくれない

ああ、僕が不自由に見えるか

僕が哀れに見えるか

今日はまだ終わらないのか

 

また失敗してしまった

ずっと必死なのに、上手く生きられない

どうしたらいいんだ

どうか困った顔をしないでくれ

ごめんなさい

ただ何かから逃れたいだけなんだ

あなたに何かを伝えたいんだけど

その衝動に言葉はついて来られない

 

でも確かにある

憩いの瞬間が

これも言葉に出来ないけど

 

そう

僕は悲しむために生まれてきた訳じゃない

ましてや

あなたを悲しませるために生まれてきた訳じゃない

そして

誰かに傷つけられるために生まれてきた訳じゃない

 

すぐ跳びはねる僕が言うのも可笑しな話だけど

この世界の端っこの方で構わないから

僕はただ、ひっそりと幸せになりたい

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