Shimizulab:清水勝彦研究室

慶應ビジネススクール教授 BCGの内定を辞退し創業2か月のCDIに新卒で参画。 1…

Shimizulab:清水勝彦研究室

慶應ビジネススクール教授 BCGの内定を辞退し創業2か月のCDIに新卒で参画。 10年間の戦略コンサル、テキサス大学准教授(テニュア取得)を経て、2010年より現職。 国際学術誌4誌の編集委員。 ドリコム取締役監査等。 ダートマス大学MBA、テキサスA&M大学Ph.D.。

最近の記事

「日本の文化を伝える」という難関(清水勝彦研究室ブログ)

最近岸田総理が新たな「クールジャパン戦略」を発表した。うまくいかなかったから修正をかけるということなのだろうが、そもそもの発想が間違っているという発想はないらしい。 「日本の文化を伝えたい」という欲求は国家だけでなく個人にもある。オーバーツーリズムの時代にはさらに叫ばれているように思われる。ただ「文化を伝える」とはどういうことかあまりわからずに繰り返していないだろうか? 文化とは無意識レベルの考えに依存している。だから「○○です」と説明してわかった(わかってもらった)気に

    • あなたは幸せですか?(清水勝彦研究室ブログ)

      自分が幸せかどうか?これは大きな問題である。ただ、ディズニーなどの映画で見るようにほぼ答えは出ていて「他人と比べるのではなく、自分で感じるかどうか」。同じようによく言われるのは「自分を信じる」という言葉だ。 翻って、なぜ他人と比べてしまうのかといえば、目に見えた比較対象が欲しいからである。多くの場合「自分を信じなさい」というのは、業績の悪い営業マンに向かって「なぜ売れないんだ?」と問い詰めるのに似ている。それがわからないから業績が上がらないのである。自分をどう信じていいかわ

      • コスパ、タイパの落とし穴(清水勝彦研究室ブログ)

        3月に行動経済学の中興の祖カーネマン教授が亡くなった。彼は2002年にノーベル経済学賞をもらっているが、そのはるか前1978年に同じくノーベル賞を取ってこの道の先鞭をつけたのはサイモン教授である。 彼の功績はいろいろあるが、その1つに「satisficing」というコンセプトがある。伝統的経済学では人間はすべての情報を使って利益の最大化(maximizing)を目指すが、実際には何がmaxかわからない。だから「まあこれくらいでいいだろう」という満足点を基準にして意思決定をす

        • 「理念浸透」ブームが気持ち悪い(清水勝彦研究室ブログ)

          今時こんなことを言うと非国民と炎上しそうなタイトルを付けた。ただ、みんなもどこかでそう感じてるでしょ?という思いはどうしてもぬぐえない。 今いる社員に「理念浸透」を説くということは、これまで「理念浸透」していなかったということである。じゃあ、そうした社員はなぜ入社したのだろう?単に給料が高いから?仕事が楽だから? (最近あまり聞かなくなった)「人的資本経営」を持ち出すまでもなく、リクルーティングに力を入れている会社は多い。選ばれた先輩社員が夢を説く。一緒に挑戦しようと呼びか

        「日本の文化を伝える」という難関(清水勝彦研究室ブログ)

          IBMショック(清水勝彦研究室ブログ)

          念のためこれはIBMの株価が急落したとか、すごい発明を発表したという話ではない。 先週KBS1年生のクラスでThomas Watson Sr.の「成長するには人の2倍失敗しろ」と言いう言葉を紹介した。彼が創業者であることを知らないのは仕方がないとしても、そもそもIBMを知らない学生が殆どだった。これは大ショック。(もともと日本IBMが開発した)ThinkPadを使っている学生もいたが、Lenovoの商品だと思い込んでいるようだ。 考えてみればIBMのスーパーコンピューター

          IBMショック(清水勝彦研究室ブログ)

          横断歩道と自分への投資(清水勝彦研究室ブログ)

          ここだけの話だが、私は時々横断歩道のないところを渡る。この前もそうして、お巡りさんに「横断歩道を渡ってください」と注意された。ふと「横断歩道以外を渡ってはいけないのか?」と思い、ググると同じように暇であまのじゃくの人がいて「禁止標識がなければ、法律上問題ない」ことを示していた。 日本代表のトルシエ元監督が「日本人は明らかに安全でも赤信号で止まる」と発言して物議をかもしたことがある。何度も繰り返すが、日本人の多くはルール(を守る)ことが大好きである。安全であるという評判を世界

          横断歩道と自分への投資(清水勝彦研究室ブログ)

          専門家とは何だろう?わかりやすさの罠(下)(清水勝彦研究室ブログ)

          「専門家」「プロ」と紹介されるような人達がいる。「専門家のコメント」というとなんとなくわかった気がする。他の人と何が違うのだろうか? 知識や経験の「量」と思っている人は多いが、よく考えたほうがいい。多くの本が「日本企業はイノベーションがない」「日本企業の国際化が遅れている」と判でついたように同じことを言っているのは、自ら世界で戦って手に入れた「知識」ではなく他の人が言っていることを繰り返しているだけのことが多いからだ。また「10年の経験というけれど、実は1年の経験を10回繰り

          専門家とは何だろう?わかりやすさの罠(下)(清水勝彦研究室ブログ)

          わかりやすさの罠:片腕のエコノミスト(清水勝彦研究室ブログ)

          (先々週の続き)家内は「大学教授は保険をかける」「こういう考え方もあれば、別の考えもあると言って煙に巻く」と言ってはばからない。 実はアメリカ第33第大統領のトルーマンも全く同じことを言っている。「片腕のエコノミストが欲しい」と。それは、エコノミストが「On the one hand…But, on the other hand…」と説明するからである。じゃあどっちが正解なんだとキレたらしい。 しかし、よく考えてみれば経済にしても経営にしても「トレードオフ」がない施策はな

          わかりやすさの罠:片腕のエコノミスト(清水勝彦研究室ブログ)

          スキーと大相撲(清水勝彦研究室ブログ)

          GWなので、ちょっと号外的に。ダートマス大学の女性新学長が来日するパーティが4/25に開かれた。イスラエルがらみのデモのせいで来日は直前で中止になったが、パーティは決行。大学、大学院(私はここ)の卒業生、9月からの新入生、そして在校生の両親など50人くらい集まった。 弱いつながりの重要性( Granovettor教授のネットワーク理論)はどこかで聞いたことがあるかもしれない。一言でいえば、親しい友人よりもあまりコンタクトがない、親しくない人のほうが「新しい」情報やチャンスを

          スキーと大相撲(清水勝彦研究室ブログ)

          定義をバカにするな(清水勝彦研究室ブログ)

          「わかりやすく伝える」秘訣伝授という触れ込みのYoutube番組で、元TVアナウンサーが「大学の先生とかは長いんですよ。まず定義から始まったりして」というのを聞いて驚いた。まどろっこしいのや偉そうなのはNGだが、それと定義とは別の話だ。 かと思うと、先日の奈良教育大学附属小学校のいじめ問題に対して、学長は「定義が違った」と述べている。 定義というと堅苦しいが、要は前提であり、さらに言えば無意識の「思い込み」の事である。定義がはっきりしない話は「わかったつもり」にはなるかも

          定義をバカにするな(清水勝彦研究室ブログ)

          不正問題議論の不毛(清水勝彦研究室ブログ)

          前回で終わりにしようと思ったのだが、新聞(4/5日経朝刊)の記事が気にかかりもう1回。問題自体は「品質不正が相次いでいる」という深刻なものだ。 「声を上げたら左遷、恐怖人事に委縮」、だから「風土改善を」という指摘に卒倒しそうになった。これが真実ならば単なる犯罪組織で、風土どころの話ではない。「よくある話」ですませられるのだろうか? また「挑戦よりも社内評価を意識する」というのも舌足らずだ。社員がそんなに保守的でリスクを取らないのであれば、なぜ「不正」という大きなリスクを冒

          不正問題議論の不毛(清水勝彦研究室ブログ)

          「夢を持て」という勘違い:(清水勝彦研究室ブログ)

          4月1日の日経新聞の1面は「夢」という言葉であふれていた。5面には「夢は成長の原動力」と在り、2面の社説は「新入社員の意欲と挑戦引き出す企業に」とある。なんか変な気がして考えた。 自分の行状を棚に上げて言うのだが、こうした「夢」の議論の背景には、どこかで「しなくてはならない」という上から目線が感じられるからではないか? 大きなお世話である。しなくてはならないから夢を持つのではなく、他人から何と言われようが持ってしまうのが夢ではないのか?でなければ原動力になるわけはない。

          「夢を持て」という勘違い:(清水勝彦研究室ブログ)

          2024年4月始まる(清水勝彦研究室ブログ)

          都心では桜とともに4月が始まった。人によって何も変わらないかもしれないが、区切りはきっかけとして大切なので新年と同じように振り返って自分をリセットすることは悪くない。 1年前のブログでは「DXという言葉を使うのをやめよう」と言ったが、知らないうちにあまり聞かなくなった。5年前には「仕事をしないすすめ」をした。これは今でもそう思う。 私はというと、気持ちは日本に帰ってきた40代のままだがこれも知らないうちに還暦を迎えてしまった。恐ろしいことである。自分で気づくのは時々人の名

          2024年4月始まる(清水勝彦研究室ブログ)

          南京大学EMBA生を迎えて(清水勝彦研究室ブログ)

          3/14,15と南京大学のEMBA生、平均年齢約39歳の約40人がやってきた。1月に急に依頼があってドタバタしたが、企業訪問とケースディスカッションでとても喜んでいただけたようだ。慶應の写真もいっぱい撮っていた(それで2人バスに乗り遅れそうになった)。当初は英語でということだったが実際は通訳(英語↔中国語)の2人が大活躍していた。 へー、と思ったことを3つばかり。 1.こちらからは名刺を渡したが、中国ではすべてスマホ完結なのでみんな名刺は持っていない。現金やクレジットカー

          南京大学EMBA生を迎えて(清水勝彦研究室ブログ)

          後づけの蔓延(清水勝彦研究室ブログ)

          今から50年以上も前、行動経済学のメッカであるカーネギーメロン大学で組織の意思決定に関してgarbage can model (ゴミ箱モデル)が提唱された。超単純に言うと、問題があって解決策を考えるのが普通(合理的)だが、現実的には先に解決策があって問題を見つけることも多いというのである。 え、と思うかもしれないが、そうした経験をしている人は多いと思う。先に答えが決まっている会議、社長がしたいからそのための理由を探す、などなど。 新聞などを見ていても未だに同じようなことが

          後づけの蔓延(清水勝彦研究室ブログ)

          スキー場から見える世界2024(清水勝彦研究室ブログ)

          ちょっと暗い話が続いたので、一休み。スキー場(正確にはリフトの上)で聞いた「世界」の話である。暇だからということに尽きるが、一生懸命話しかけて得た今シーズンの収穫(?)をいくつか。 イギリス人のインストラクター「先週はアメリカ人が結構来ていた。彼らが話しかけてくるので答えると、スルー。しばらくするとまた別の話題で話しかけてくる。deafなんじゃないか」(やっぱイギリス人はアメリカ人のがさつさが嫌いなのね) 香港からというお金持ちそうな化粧バッチリの長身の女性「I am d

          スキー場から見える世界2024(清水勝彦研究室ブログ)