Shimizulab:清水勝彦研究室

慶應ビジネススクール教授 BCGの内定を辞退し創業2か月のCDIに新卒で参画。 1…

Shimizulab:清水勝彦研究室

慶應ビジネススクール教授 BCGの内定を辞退し創業2か月のCDIに新卒で参画。 10年間の戦略コンサル、テキサス大学准教授(テニュア取得)を経て、2010年より現職。 国際学術誌4誌の編集委員。 ドリコム取締役監査等。 ダートマス大学MBA、テキサスA&M大学Ph.D.。

最近の記事

地方百貨店の生き残り?(清水勝彦研究室ブログ)

7月末に岐阜県最後となる高島屋岐阜店が閉店をした。その記事にあった「地方百貨店が生き残るには自身の役割を再定義することだ」(日経MJ2024年8月23日)という言葉を読んで考えさせられた。 地方百貨店が生き残りとか、書店の生き残りとかはずいぶん前から話題になっているが、成功した例を知らない。というか成功するわけはないと思っているので、まだこんなこと言っているんだと感じてしまった。 一言でいえば「役割を終えた」からである。バイクメーカーが50ccの原付の生産を相次いでやめて

    • 村上隆@京都を見逃して(清水勝彦研究室ブログ)

      8月末に京都のKBSの経営幹部セミナーに出講した。台風の影響で1時間出発が遅ければ新幹線が止まっていたぎりぎりのタイミングだった。しかし、今回はそのことではない。 クラスが終わってから京都市美術館開館90周年記念展で村上隆展をやっていることに気づいた。しかも台風の影響で人は少ないらしい。ただ、へとへとになっていたことといつ帰れるかわからないこともあり、見ずに伊丹空港から帰京した。 自宅で記念展に関するYouTubeをいくつか見て、逃した魚の大きさに今さらながら気づく。彼の作品

      • 逆ダイバーシティ問題(清水勝彦研究室ブログ)

        シカゴで15年ぶりに旧友のJames Conley教授にあった。次男のボストン留学が決まってドタバタしていたせいか、連絡を取ったのは帰国2日前。会えるとは思っていなかったが時間を切り詰めてディナーに参加してくれた。 5人の子持ちで長女が2日前に結婚したところだという。次男の話をするとぜひシカゴに来いとかいつでも泊まれという話から、彼が担当する博士課程の実態を聞いて驚いた。 彼はエンジニアリングとビジネス(Kellogg)の両方に籍を持つ。前者の博士課程には毎年150人くら

        • Edmondson 教授と(清水勝彦研究室ブログ)

          “It’s Not Just You. Let’s Have an Honest Conversation about Failures”というセッションに出た。実際、この職業は目に見えたfailuresが多い。そもそも何を博士論文(dissertation)のテーマに選ぶかで迷走、あるいは書き始めてから行き詰まって1年どころか数年延びることはよくある。いったい自分はどうなるのかと暗澹となる。そして前職の業績とは全く関係ない就職活動。その後も論文を学会誌に出しては(散々レビュ

        地方百貨店の生き残り?(清水勝彦研究室ブログ)

          25年を超えて(清水勝彦研究室ブログ)

          実は1999年8月にもAOMはシカゴで開かれている(まだトランプタワーはなかった)。この時は博士課程4年に入る直前、ABD(All but Dissertation)と言われる状態で今でも覚えていることがいくつもある。 まず、就職活動の開始がこのAOMだった。今回もスーツを着てネクタイをしている若い出席者を見るが、初任給は高騰しており、今や当時の3倍、20万ドル超えも普通とのこと。 高校時代にちょっとだけ存じ上げていた香港中文大学(当時)の牧野先生に再会したのもこの年。優

          25年を超えて(清水勝彦研究室ブログ)

          AOMシカゴ報告1(清水勝彦研究室ブログ)

          8月半ばにシカゴで開かれた2024Academy of Management (AOM)総会には無事出席・発表できた。最高気温が30度を越さない日も多く、とても快適だった。ショッピングエリアの交差点に物乞いの親子がたくさんいるのもこの気候ゆえではないかと思ってしまうほど。 中国人の先生が目立つのは当然として、1年飛ばしてしまったせいかもしれないが、構成も結構変わっていた。その中で圧倒的にドミナントだったテーマはAIである。 AIと働き方、AIと起業、AIとクラスなどで、そ

          AOMシカゴ報告1(清水勝彦研究室ブログ)

          専門家の意見とフェイクニュース(清水勝彦研究室ブログ)

          ブームに人は群がる(というか人が群がるものがブーム?)。私の体験したもので言えば、1987年NTTの株式公開(当時は時価総額世界1位)、その後の土地・株式バブル。目新しいところで言えばタピオカ。終わるからブームというのだろう。 ブームの時、ほとんどの専門家は「一過性ではない」と理屈をつける。「バスに乗り遅れるな」「This time is different」と。そしてブームが終わると全く反対のことを言い出す。プロと素人の差は予測・予想の内容や精度ではなく「自信を持っている

          専門家の意見とフェイクニュース(清水勝彦研究室ブログ)

          海外でのパーティのもう1つの意味(清水勝彦研究室ブログ)

          AIBは7万円弱の参加費で毎日のランチと2回の夜のパーティが含まれているので、他の学会に比べ少しお得感がある。海外のパーティなどで日本人ばかりが固まってよろしくない、ということを言う人がいる。半分は正しいと思うが、半分は間違っていると思う。 これは学会特有かもしれないが、日本では会えない人に会えたりするからである。海外にいるということが、日本人同士が知り合うハードルを下げてくれるし、このきっかけが長く続くことも少なくない。 例えば長年香港中文大学にいらして日本に戻られたM

          海外でのパーティのもう1つの意味(清水勝彦研究室ブログ)

          パーパスAgain(清水勝彦研究室ブログ)

          これまでも、色々パーパスばやりに対する違和感は書いてきたが(そういえば最近聞かないなあ)、今回はちょっと違う。「ああ、こう考えればいいのか」と腑に落ちた感があったので共有したい。 7月の半ばにかけて恒例の慶応ビジネススクール主催の「高等経営学講座」(通称トップセミナー)が帝国ホテル大阪で開かれた(これはゼミ生も見学)。最後の3日は毎年ハーバード・ビジネス・スクールの先生にも登壇いただいており、今年来てくださったKerr先生のユニリーバのケースで「なるほど」と思ったのである。

          パーパスAgain(清水勝彦研究室ブログ)

          異文化コミュニケーション(清水勝彦研究室ブログ)

          やっと学会らしい話をする。AIBで必ず取り上げられるのが、国の文化の違いである。戦略からマーケティング、あるいは人事制度までその影響は多岐にわたる。 ある異文化コミュニケーションのセッションで面白い考え方を聞いた。国の文化とステレオタイプの問題。「日本人はこうする」「アメリカ人はこうだ」と十把一絡にした議論に「ちょっと待ってくれ」と言いたくなった経験は誰しもがあるのではないだろうか。 それに対してアメリカ人のプレゼンターは服の例えを出して3つの質問をしろと指摘した。 1

          異文化コミュニケーション(清水勝彦研究室ブログ)

          平均の罠(清水勝彦研究室ブログ)

          ソウルは1回お休みして、7月11日日経一面の記事から平均の罠について考えたい。この記事には「年収を上げた企業の成長は著しい」というタイトルで、プライム上場企業平均と年収上昇10%以上の企業の2019年から2022年の増収率(平均と思われる)を比べている。 これは相関関係であってタイトルで示唆するような因果関係ではないのでは(むしろ逆に増収企業が年収を上げたのでは?)とか、わざわざコロナの時期を取るのはなぜだろうとか、業界による違いを考慮しなくていいのか(14面にあるランキン

          平均の罠(清水勝彦研究室ブログ)

          「安い日本」実感(清水勝彦研究室ブログ)

          Academy of International Businessの総会が開かれたソウルに先週行ってきた。調べてみるとこの前ソウルに行ったのはなんと10年前だった。友人も多いのに、と自分で驚いた。 もっと驚いたのは物価の高さ。いや、日本の物価の猛烈な安さといったほうがいいかもしれない。ローカルな人達が行くレストランのランチ平均(少なくとも私が見た限り)は12,000ウォン、だいたい1500円。コーヒー5,000ウォン。交通費は安かったが、それ以外は軒並み日本の1.5倍感覚だ

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          「日本の文化を伝える」という難関(清水勝彦研究室ブログ)

          最近岸田総理が新たな「クールジャパン戦略」を発表した。うまくいかなかったから修正をかけるということなのだろうが、そもそもの発想が間違っているという発想はないらしい。 「日本の文化を伝えたい」という欲求は国家だけでなく個人にもある。オーバーツーリズムの時代にはさらに叫ばれているように思われる。ただ「文化を伝える」とはどういうことかあまりわからずに繰り返していないだろうか? 文化とは無意識レベルの考えに依存している。だから「○○です」と説明してわかった(わかってもらった)気に

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          あなたは幸せですか?(清水勝彦研究室ブログ)

          自分が幸せかどうか?これは大きな問題である。ただ、ディズニーなどの映画で見るようにほぼ答えは出ていて「他人と比べるのではなく、自分で感じるかどうか」。同じようによく言われるのは「自分を信じる」という言葉だ。 翻って、なぜ他人と比べてしまうのかといえば、目に見えた比較対象が欲しいからである。多くの場合「自分を信じなさい」というのは、業績の悪い営業マンに向かって「なぜ売れないんだ?」と問い詰めるのに似ている。それがわからないから業績が上がらないのである。自分をどう信じていいかわ

          あなたは幸せですか?(清水勝彦研究室ブログ)

          コスパ、タイパの落とし穴(清水勝彦研究室ブログ)

          3月に行動経済学の中興の祖カーネマン教授が亡くなった。彼は2002年にノーベル経済学賞をもらっているが、そのはるか前1978年に同じくノーベル賞を取ってこの道の先鞭をつけたのはサイモン教授である。 彼の功績はいろいろあるが、その1つに「satisficing」というコンセプトがある。伝統的経済学では人間はすべての情報を使って利益の最大化(maximizing)を目指すが、実際には何がmaxかわからない。だから「まあこれくらいでいいだろう」という満足点を基準にして意思決定をす

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          「理念浸透」ブームが気持ち悪い(清水勝彦研究室ブログ)

          今時こんなことを言うと非国民と炎上しそうなタイトルを付けた。ただ、みんなもどこかでそう感じてるでしょ?という思いはどうしてもぬぐえない。 今いる社員に「理念浸透」を説くということは、これまで「理念浸透」していなかったということである。じゃあ、そうした社員はなぜ入社したのだろう?単に給料が高いから?仕事が楽だから? (最近あまり聞かなくなった)「人的資本経営」を持ち出すまでもなく、リクルーティングに力を入れている会社は多い。選ばれた先輩社員が夢を説く。一緒に挑戦しようと呼びか

          「理念浸透」ブームが気持ち悪い(清水勝彦研究室ブログ)