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ひび

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日々のことについて文章を書きます。
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2019年7月の記事一覧

遠くへ行きたい

時折、遠方からはるばるライヴを見に来てくれる方がいる。関東、九州、北陸、などからやって来ました、などと言われると、驚きとともに嬉しさで舞い上がる。と同時に、吝嗇ボーイの自分は、だ、だいぶ交通費かかってんちゃいまっか?だ、大丈夫でっか?と思ってしまう。余計なお世話である。

大抵の人は純粋に、見に来れて良かったです、といった様子なのだが、自分は尚も、往復の交通費に加えて宿代や飯代は幾らかと、そろばん

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角刈りとおばはん

近所のコンビニには、外国人が何人か働いている。自分はほぼ毎日のようにそこへ行くのだが、もしかするとまだ十代かもしれない、東南アジア系の、浅黒い細身で角刈りの従業員が、夜から朝にかけて大抵いつもいる。

角刈りは、いらしゃえませー、と片言ながらも、接客は丁寧である。釣りを返す際に両手でこちらの手を包み込むように触れてくることだけは気持ち悪いが、不器用にも頑張っている様子で、自分は個人的に話し掛けるこ

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森茉莉

森茉莉という作家をご存知だろうか。かの文豪、森鴎外の娘であり、昭和時代に小説やエッセイで活躍した作家である。自分は、森茉莉の文章がとても好きで、よく読む。古本屋へ行けばまず森茉莉の本を探す、ブック・オフへ行けばまずマ行の棚を見る、といった具合である。

茉莉は小さい頃から親父に溺愛されまくった。そのため、世間知らずのお嬢様となり、労働などは以ての外で、若い頃はフランスで優雅に暮らし、結婚も二度して

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海老は食べもの

残る一匹の海老も死んでしまった。水槽にぷかぷかと寂しく浮かんでいた。畜生。しっかりと世話していたつもりなのに、一週間と少しで死ぬなんて、どういうつもりだ。どういう魂胆だ。お前のために公園で石を拾って、水草を買ってきて、水もきちんと換えて、餌も与えていた、おれの気持ちをどうしてくれる。ふざけやがって。だから海老は嫌なんだ。大体、海老なんぞ飼うことがおかしい。そもそも不可能な話で、なぜなら海老は食うた

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海老の死

海老3匹のうち、2匹が死んでしまった。チビ海老と、中海老である。タッパーの外に飛び出して、そのまま床で干からびているのを発見した。チビ海老の亡骸、髭が長く伸びていて、腰が曲がっているのを見ると、何とも言えぬ空虚な気持ちと、蓋をきちんと閉めなかった後悔が押し寄せた。

100均で大きめのラックを買って、夜中に公園で石を拾った。自分は、今、自分自身のことで、やらなければならないことが、山積みである。あ

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心配症

矢鱈と他人の心配をする人がいる。頼んでもいないのに、勝手に色々と心配をしてきた挙げ句にネガティブな言葉を掛けてきて、こちらは前向きに頑張ろうと思っているのに、ボクはそれはどうかと思うよ…、などと言ってこちらを不安な気持ちにさせてくる、疫病神のような人間がいるのだ。しかし本人にとっては、それは優しさであり、思いやりであるため、自身が疫病神であることには気付いていない。むしろ、キミのために言ってあげて

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単独ライヴをやります

夏に単独ライヴをやります。

大阪でやるのは一年半ぶりだろうか。前回の単独ライヴは「テンデイズショー」と題して、10日間続けて合計30本の漫才をした。阿呆なのか。今回の場所は、十三にあるシアターセブン。こちらの意思を汲み取ってくれる、何とも素晴らしい劇場である。この劇場で単独ライヴをやれることが嬉しい。

今までの単独ライヴのように、また、よくある漫才師の単独ライヴのように、何本か漫才を披露しつつ

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きっと何とか

我が店でやっているライヴで、集客力のあるライヴがある。我々以外の出演者が人気者なので、毎月、自ずと沢山の人が見に来てくれるのだ。定期的に開催しているそのライヴは、売上も多いので、店の利益はほとんど無いが、たっぷりと出演者にギャラが支払われる。皆、喜んでくれている。

自分はライヴの小屋を経営している立場として、出演者にはそれなりのギャラを支払うべきだ、という考えを強く持っている。金が全てではないが

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電波に恵まれない暮らし

自分はマンションの5階に住んでいるのだが、どういうわけか部屋の中にいると携帯の電波がうまく繋がらない。特に、部屋の端にあるベッドのあたりで携帯を見ると、電波の棒が一本しか立っていないことも多々あり、その度に苦労する。

メールの送受信程度ならば可能だが、電話をするときは電波のよく入るベランダまで出なければ途切れることも多々ある。また、画像や動画の検索もベッドの上ではスムーズに進まない。寝る前のひと

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コアラ人間は空を見る

確か去年であったが、占い師に診てもらったところ、2020年には今まで積み上げてきたものが花開く、と言われたことを覚えている。とんだペテン師ではないか。2020年を目前に、積み上げてきたものが取り壊しの憂き目に合うというのに、花もつぼみもあるものか。また、あなたは金に困ることは無い、とも言われたが、はっきり言って、わたしは金のことで困り果てている。畜生。

店が潰れることをTwitterに書いた。す

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亀の終焉

2015年2月に開店して、今までやってきた「ライヴ喫茶 亀」が、年内で閉店することになった。自分が経営する小さな店である。先月、建物の持ち主から、ビルを取り壊すことになりましたんで、すんまへんけど出て行ってくれまへんか?と連絡が来た。本当に、そのような喋り方のおっさんであった。

勿論自分は、そう言われましても困りまんねや、と粘った。が、向こうも、そう言われましても困りまんねやと言われましても困り

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