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【しまね女子ブログ】 小坂まりえvol.4

しまね移住project【ふるさと島根定住財団】

…「綱引き」。
それは海士町においては魅惑の、そして戦慄のマジックワード。

綱引きと聞いて頭に浮かぶのは、4月初旬の恒例行事「綱引大会」です。
新型コロナ蔓延の影響で一昨年から中止されていますが(おそらく今年も)、このイベントこそ海士町らしさ満点、かつ、私のような移住者にはとても重要な存在であることは間違いないので、今回ご紹介しますね。

隠岐神社の春の例大祭に合わせて開催される、「隠岐島綱引大会」。
これに対して島民が抱く熱と圧の高さは異様です。
一度でも選手として綱を握ったことがある者ならば、春の綱引きと聞いただけで、練習のつらさやスタメン争いのホロ苦さ、綱を握る腕のしびれ、綱を挟む脇の激痛、均衡を破って引き切った時の快感、引きずられて負けた時の悔しさ、或いは歓喜MAXの優勝の瞬間(女子でも雄叫び、当たり前!!)を想起して脳内トリップできることでしょう。まさに“たのくるしい”の塊です。

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この綱引大会は、海士町民だけでなく他の島からも参加でき、一般男子部門で約20チーム、一般女子は約10チーム、小学生は約5チームが出場。チームは住んでいる地区や職場ごと、同級生の集まりなどで、試合は8人ずつで引きます。
大会当日、会場の隠岐神社外苑に集まるのは、選手と観客合わせて400人以上。(ちなみに海士町の人口は約2,300人)

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(↑)(↓)開会式の様子

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で、何が凄いって、その本気度です。
私は住んでいる地区のチームに入っていますが、4月の大会に向けた練習は真冬(なんなら前年の12月)にスタート。
しかも、いきなり綱を引く練習なんてとんでもない。そんなのすぐにはやらせてもらえません。「まずはタイヤ引きから!」が、私たちの“常識”。練習のお供は、小学校のグラウンドの隅に置いてある、大型トラック用のでっかいタイヤ。これに鉤爪付きの2m弱のロープを引っ掛けて、ずりずり…と引っ張る。体幹で引きます。これコツがあって、初心者は大抵タイヤが動きません。体幹を使わず腕だけで引いても、力がうまくロープに乗らないんですね。

うちのチームは、最初にこのタイヤ引きをみっちりやり、併行して公民館での筋トレ、自主的なジョギングや鉄棒ぶら下がりとかして、2月中旬頃にようやく本番同様の綱を握るって感じ。

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(↑)トレーニング用の古タイヤ(手前のやつ)。見た目以上に重い!

ハードな練習の甲斐あって、素人なのにかなりの角度(身体の倒し方)で綱を引けるようになるわけです。
が、最初にチームに入った時は面食らいました。え、なにこの練習。部活?!と。
いや遊びなんです。でも本気なんです!!

もっと厳しいメニューで練習しているチームもあるし、逆に緩い雰囲気のチームもあるけど、決勝リーグを目指そうというチームは大概厳しくやっている。男子なんかはもっとストイックに追い込んでます。

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(↑)女子の試合。ユニフォームにはチームの個性がでます

とにかくこの島、綱引きが好きな人が多い。
今の町長世代が青年団活動をしていた頃に綱引大会を創設したということもあり、現・大江町長も綱引きが大好き。町長に就任されてから掲げた町政スローガンは、『心一つに、みんなでしゃばる島づくり』です。

『しゃばる』とは隠岐弁で、引っ張るという意味。
そう、この町政スローガンのイメージは綱引きそのもの。いくら個人の力が強くても、心を一つにして同じ方向に向かって引かないと絶対に勝てない、綱引き。
綱引きはまちづくりにも通じているのです!というか、そのままやん!!という。

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(↑)(↓)海士町役場。看板には「みんなでしゃばる」の文字が!

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島民を虜にする綱引きの魅力とは何か。
私の場合ですが、まず、肉体的な快感があります。
力を振り絞る。歯を食いしばる。大声を出す。とにかく全力で身体を使うというシンプルな気持ちよさ。
…あ、全力でやりすぎた失敗談も。私、綱引きの練習を頑張りすぎて右の肋骨にヒビを入れたことがあります。笑
あの年は診療所の先生に「あのね、ヒビも骨折だからね?」と苦笑いされ、胸にサラシを巻いて肋骨を固定して試合に出たっけなぁ…。

身体だけでなくアタマも存分に使うのが綱引きの奥深さです。
がむしゃらに引いてもダメだし、腕力や体重だけでも勝てません。強い人が1人だけいても勝てません。練習中にもいろんな論争(?)があって、「頭を後ろへ倒して、空を見ろ!」の一方で「前向いてアゴを引け!二重アゴを気にするなっ!」とか。

各人の体重をいちばん乗せられる角度(身体をどのくらい倒すか)を探りつつ、みんなの引く力のベクトルを一つに合わせる。フォームを真横から撮影して、あーだこーだと議論を重ねる。「こらっ、綱に載るな!後ろ(の人)がつぶれる!」って何度怒られたか。。乗ると載るの違いは、感得するしかない。
マイベスト角度が分かっても、その傾きに耐えうる筋力が無いと姿勢を保てない。
身体を鍛えながら、仮説と実践と検証の積み重ね。かなり面倒臭い!けど、面白い!!

あと、これはIターンである私の事情ですが、島民と移住者が渾然一体となってやるというのが良い。
まずチームに入れてもらって一緒に練習することで友達が増えます。
地元民のベテラン選手(おっつぁん、おばちゃん)がコーチとなって色々教えてくれるので、そのプロセスで仲良くなれます。
綱引きがみんなに浸透しているだけに、練習を見に来たり手伝いに来てくれる人もいて、地域の皆さんをより広く深く知れます。感謝の気持ちもわきます。
試合で勝っても負けても(そりゃあ勝ったら嬉しいですが!)、最後まで一緒に戦うことで、仲間として認めてもらえます。

試合の後の直会(なおらい)で飲んで語って、あ~なんか、地域のメンバーになれたなって思う。そういう感覚は、私は綱引きで初めて知りました。

出なきゃいけないわけではないし(腰痛その他の理由で綱引きできない人もいますし)、応援に徹する!という関わり方ももちろんアリだけど、もし可能なら、Iターンの人は一度くらいは“島の綱引き”を体験してみてもいいんじゃないかなと思います。

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(↑)何年前か…試合後に仲間と勝利の感動を分かち合うワタクシ

島民が綱引きに真剣にハマる理由として、30年くらい続く伝統行事(しかも隠岐神社の奉納行事)というのもあるけど、この時期は他に娯楽が少ないからというのも大きいのではないでしょうか。
あと、隠岐の陰鬱な冬(毎日どんより~)でたまったストレスを発散するために練習に打ち込む、というのもあるかもしれない。長い冬で鬱屈した気持ちを晴らしてテンション上げたい!春よ、早く来い!!ってな気持ちを綱引きにぶつけているのかも。

綱引きが生きがいみたいになってる人もいます。
私がとてもお世話になっている地元出身の男性。優勝候補の筆頭に挙がる強豪チームに所属しており、もう70歳近いのに、スタメン入りを目指して早い時期から一人黙々と自主トレしている。(実際にスタメンになって活躍してるから凄い!凄すぎる)

島を出て本土で暮らしているけど、綱引大会に出場するためにこの時期だけ帰ってくる人もいます。それだけ好きなんですよね、海士でやる綱引きが。綱引愛やチーム愛が、ふるさと愛と分かちがたくなっている。

ちなみに…
春にスパークする島民の綱引愛が夏にも飛び火して、「海上綱引大会」なるものもあります。文字通り海の上で綱引きする競技で、海開きに合わせて菱浦港近くのレインボービーチで開催。春の綱引きほどストイックな感じじゃないので誰でも参加しやすく人気のイベントですが、これも新型コロナのせいで近年中止…。今年こそはと期待してます!

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(↑)綱引きの手練れ達とチームを組んで優勝したこともあるよ

私は、綱引大会を見るのも大好きです。
島のみんなが一つのことに熱中しているのって見ていてワクワクするし、私もこの空気に「乗っかりたくなる」。仲間に入れてほしくなる。

…と書いてて思い出したのですが、これって、13年前に私が移住した時と同じ気持ち。
つまりあれだ、綱引きって結局、海士町の魅力そのもの。引力そのものなんじゃないか。
そう考えれば、今の町長が提唱している町政の合言葉『みんなでしゃばる!』は、もうこれしかないって感じですね。

早くまた綱を引きたい。
この島の一員であることを、身体を通して実感したいなって思ってます。
次に開催される時に選手として参加できるよう、加齢に負けず(笑)筋トレしよっと♪


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小坂さん

【名前】小坂まりえ
【移住市町村】隠岐郡海士町
【UターンorIターン】Iターン
【移住前の居住地】東京都(三重県出身)
【年代】40代
【お仕事】仕事はフリーランスでライター業をメインに編集やイラストなど諸々
【趣味】本とランニングとフラワーアレンジ。
    島の植物を使ったリースやスワッグを作るのは至福の時間。
【Love shimaneとしてひと言】
島根の好きなところは、海が美しいこと、地酒が美味しいこと、人が適度に少ないこと、暮らしの中で神さまの存在を意識する機会が多いこと等々。


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しまね移住project【ふるさと島根定住財団】
田舎で暮らしたい…、地元に帰りたい…、なんとなく今の暮らしを変えたい…。『移住』への想いは十人十色。私たちはそんな皆さんのサポートをしています。心に“島根”が浮かんだあなた。私たちが島根とのご縁をお繋ぎます。 くらしまねっとhttps://www.kurashimanet.jp/