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吾輩はcatである・・・ "Funky Cat"

”吾輩は猫である” は夏目漱石が書いた猫の視点で自分と人間界を見た小説。

この小説の主人公は”名前はまだない”とあるように捨て猫で、その猫生を生き抜くために人間の家に住み着き、そこで繰り広げられる人間の生活を主観を交えて語ります。暮らし始めたばかりの頃は”人間って馬鹿じゃん”と思っている猫が段々と”人間っていいなぁ”と思い始めてきますが、最後はちょっと衝撃的に終わります。まだ読んでない方は名作なので読んでみてください!

さて、現代の夏目漱石、高見沢さん作詞作曲の"Funky Cat"は先月発売されたアルバム天地創造の2曲目!16ビートのダンサブルなポップスを坂崎さんが歌っています。↓サブスクにもあるので聴いて!

今回の考察はこの”Funky Cat"を文学として読もう!という試みです。

Funky Cat 歌詞はこちらから!

文学をより楽しく読むための予備知識

私が文学の授業でまず教えるのは(*アメリカの高校で教師をしています。今は歴史担当ですが文学、科学、言語も専門です)Literary Devices 修辞法という文章に深みを持たせたり表現を豊かにしたり、と考察や分析をするときに注目する”手法”です。もちろん日本語の文学にもあるので、国語の時間や読書で常に目にするものです。比喩、誇張、擬人化、象徴、擬物表現、押韻、風刺、などがよく使われますよね。

文章は直接的な意味だけではなく物語の背景や人物像や読み手の経験などで受け取り方が変わりますが、作者がなぜ比喩を使うのかどんな風刺を込めたのか、などを考えながら読むとまた違う世界が見えてきます。

Literary Devicesはたくさんあり高見沢さんも歌詞や小説に色々と使っているので、どんな種類がありどのような効果をもたらすのかを学んでみてくださいね。高見沢さん(作者)の見る世界が見えてくるかもしれません!

”吾輩はCatである”を前提に歌詞を文学的に読む

この曲を何度か聴いている内に”これはネコ視点の歌だ”と思えてきました。人間が主人公の直接的な意味だとどうかな?と思う表現もあるからです。

ネコちゃん視点だとすると擬人化、誇張、婉曲、風刺、隠喩、直喩、などを多用して読み手の想像を無限に広げる文章が目白押しです!そして先日の配信でも高見沢さんが”イントロの♪ジャジャジャジャーはネコチャンが出てくるイメージ!”って言ってましたしね!

以下の考察で、太字の部分はどんな手法なのかな、シマリスの受け取り方以外にどんなのがあるかな、と一緒に考えてみてくださいね!

では1番の歌詞から!

突然彼女にふられた あんたに愛想つきたと 辛辣なLINE届いた
足もと小石蹴り上げた 何が悪いのか全然分からない

この彼女がCatにとって、飼い主の女性だったら・・・・もちろん猫なのでLINEは出来ませんが、英語の line はセリフという意味もあります。足元の小石を蹴り上げたことからCatは家の外にいるのがわかりますので、彼は飼い主の女性に”お前はもういらん”と捨てられたのかもしれません。

計画通りに進まない 思惑通りに行かない いつも裏目に出てばかり
ラッキーカラーも外れた どうしてこんなにツイてないんだろう

Catの独り言ですが苦しい気持ちがひしひしと伝わります。彼は一生を彼女のおうちで過ごすと思っていたのに捨てられてしまった・・・。

ラッキーカラーも外れた、も2通りの解釈が出来ます。人間のようにTVの”今日のラッキカラー”を見て自分の毛色や首輪がそのカラーだったのにと納得できない気持ち・・・もしくはカラーは color (色)ではなく collar  (首輪)かもしれません。首輪はラッキーな猫生の象徴だったのに、それを外され捨てられた。

2番では・・・・

ストレス溜まって暴走 上司に逆切れ撃沈 矛盾だらけの世の中
理不尽に仕事干された 自業自得と鴉があざ笑う

猫は群れにならず、個々に縄張りがあり喧嘩をして怪我をしている子も多いですよね。上司にかかっていったCatがコテンパンにやられてとぼとぼと歩く様をカラスが笑う。Catにとっての仕事とはなんだったでしょう。捨てられる前は”癒すこと”が仕事でしたがボス猫に奪われた仕事は何だったのかな。

アクセス不能な未来図 何処にも居場所見つからない 遮断機が下りたままの まるで開かずの踏み切りさ 

Catが捨てられ居場所が見つからない、と考えるならみなさんは遮断機が下りたまま の開かずの踏切りは何の比喩だと思いますか?色々思い浮かびますね!

保護施設の檻の中、子猫たちは里親が見つかりその檻が開けられ素敵な未来に出ていくのに、自分の檻が開くことはなくもうここで死ぬのではないかという不安と恐怖。遮断機・踏切りというキーワードが”幸せな向こう側(飼い猫)”に戻れないのかという絶望を連想させます。

そんな悲しい1〜2番を経て、3番の歌詞は唐突に過去を振り返るCatから始まります。

拝啓 過去の自分様 お前に手紙を書いたよ
自虐の文面読み返したけど なんだか涙が溢れてきたんだ

これを読むと、1番・2番の捨てられて絶望的な”今”にいるCatは過去だったのかも、1番2番の歌詞はCatが過去の自分に書いた手紙だったのかな、と思わせます。涙が溢れるのは過去と現在が対照的なところにあり今が幸せだからかな・・・

とすると以下の文章が俄然生きてきます。

未来は今から始まる 逃げ出さないで立ち向かえ 捨て去ることから始めよう すべてを変えて越えてみろ! 生きてるなら 熱くなれ

”過去の自分様”に伝えるメッセージは力強く、生きることに懸命に前向きになれよ、との叱咤激励です。

その激励は自分だけでなく、世に溢れる人間に捨てられ居場所を失った Funky Cats たち全てに向けられているのかもしれません。

Let's Dance 未来に向かって Everybody Say Hey! 叫ぼう!・・・腰を振って熱くなれ! Funky Cat

猫がお尻を上げて左右に振るのは攻撃・突進の合図です。腰を振って熱くなれ、の叫びは人間の身勝手で命を左右される猫たちによる強い訴えなのかもしれません。

メインボーカルの坂崎さんはもう何十年も野良猫の保護活動をし、ご自宅でも猫をひきとっておられる猫好きです。Catの叫びを代弁するのにぴったりな方です!高見沢さんが意図していたかしていなかったかはわかりませんが、坂崎さんにCatを投影しているならすごい!

私の読み方以外にもいろんな解釈ができると思います!下のリンクに修辞法が簡潔に説明されていますので皆さんも高見沢さんの歌詞という文学から楽しく学んでくださいね。

あぁ、高見沢さん、やっぱり天才やったわ・・・・好きすぎる。

シマフィー 

**人間と生きるよう長い歴史を経て改良されたイエネコが外に出され、野生化することにより多大な環境破壊と虫や小動物や鳥の絶滅が世界中で問題になっています。大航海時代に鼠取りとして船に乗せられ、世界中に散らばったイエネコはこの500年の間(現在も)生態系破壊を続けていますが、その責任は100%人間にあります。

外猫や野良猫は病気や事故も多く、迷子や引き取り手がない殺処分も増えています。飼い猫はお家の中だけで最後まで幸せに可愛がられることを環境生物学者・動物好きとして切望しています。(日本語の科学的視点の野良猫問題が見つかりませんでしたので英語のリンクを貼っておきます)



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