あなたには入らないよ、と言われた服
あなたはブティックに入った時に、
“あなたのサイズの洋服はないですよ” と言われたことがありますか?
私はあります!笑←今だから笑える
中国に住んでいた時の話ですが(もう20年近く前です)、その当時一般的に現地の女性はとても細くて薄っぺらく(すみません)、若い子は特に華奢な体型の方がほとんどで、日本では普通体型の私も彼女たちに比べるとぽっちゃり(というかデブ)とみなされていました。
若い子が買う洋服の店は日本のXSとかSが”普通”で、Mくらいのものの表示は現地ではXLでした。形によっては私が入るのはXXLとかXXXLだったと思います笑。
ちなみにその頃私はアメリカのサイズは2か4、Sサイズを着ていました。
そんなデブの私が繁華街にあるちょっと高級でおしゃれなブティックに入った途端、欢迎光临(ホワンイングァンリン:いらっしゃいませ)の挨拶もなく、中の店員に叫ばれたのです。
あなたに入る服はないよ!
今は違うとは思いますが、当時の中国のサービス業には“親切丁寧”という概念はなく、お釣りは投げられ、弁当を食べながらセールスされ、質問には“知らん”と答えられるのが常でした。*もちろん優しい店員さんやウエイトレスさんもいましたよ。
客に親切にせずとも商売ができていたのでしょうし、そんなやりとりにも慣れていた私でしたが、それでもびっくりしました。
あまりにぶっきらぼうに ”ないよ!” と言われるので、怒りがふつふつと湧いてきて
そんなのわからないじゃない!と返すと、彼女もムキになって
わかるわよ、うちには普通サイズの服しかないのよ、ともっとぶっきらぼうに言います。
うぬぬぬぬぬぬ、と内心腹わた煮え繰り返る様な気持ちで、自分で見てみるからほっといて、と吐き捨てて店内を物色し始めた私でしたがシャツのラックを一つ見たところで彼女が正しいのがなんとなくわかりました。
小さい・・・というか細い・・・というか私のサイズはない
先ほどの店員はレジからこっちを見ていて、気のせいか薄ら笑いさえ浮かべているような気がしてきました。
うぬぬ
わたしはパンツのラックから黒いカプリパンツを取り、試着室へと向かいます。
もちろんその店で一番大きいサイズです。
シャッとカーテンを閉め、まじまじとそのパンツを見ているとひょっとしたらギリギリ入るかもしれないという錯覚をおこし、とりあえず履いてみることにしました。
・・・・ジッパーがあがらない。どんなにお腹を凹ませても、収縮性のある生地ではないそのパンツのジッパーは一ミリもあがりませんでした。多分座ったらお尻が破れてしまうほどのパツパツでした。
うぬぬぬ(汗)
後に引けない私は、試着室からまっすぐレジに向かい、あの店員に
”これはぴったりだったから、買うわ” と言わなくてもいい嘘をつき、割といい値段のするパンツを手に店を出ました。
彼女は私の後ろ姿に “欢迎下次光临(またおいでください)”とは言いませんでした。
それから私は20年近く、中国からヨーロッパ、アジアに日本に、アメリカ・・・大陸を股にかけての引越しでもこのパンツを捨てることはありませんでした。そのパンツを季節ごとに出しては “今年は入るかも” と履いてみましたが、太ったり痩せたりを繰り返したものの、ただの一度もそれを履き外に出ることはありませんでした。
ようやく去年、長年持ち続けたそのパンツと女の意地はもうこれが入ることはないのだ、という諦めとこんなに長くトライした自分はアホや、というバカらしさとともに “寄付するもの” と書かれた箱にぽいっと入れてきました。
最初から私に入る服ではなかった・・・・。悲しみや怒りは時間が解決するって本当ですね笑。
新品だから誰か履いてくれますように。
シマフィー
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